第1章10 護衛依頼1日目と魔物と盗賊
[1日目 12:30時]
〈アメックス王国 マレーン平原 街道ストライカーCV『バジャー・アクチュアル』〉
フェンリル軍ギルド派遣部隊第1独立大隊 七海優香
私は陸軍第2旅団第1機甲大隊『バジャー』のストライカーCVのキューポラから身を乗り出して外を見ながら指揮をしていた。
「各員、こちらフェアリー、警戒を厳に維持。いつ魔物や盗賊が襲ってくるか分からないわよ。気を抜かないで。」
《《《《《了解。》》》》》
すぐに無線から返事が聞こえてきた。
「七海さん!」
私が通信を終えると、近くの馬車に乗っているセシルさんが声をかけてきた。
「どうかしましたか?!」
少し距離があるので互いに大声で会話を始めた。
「そろそろ昼食にしませんか?!」
そう言われてHUDの時計を確認すると昼過ぎを示していた。
「そうですね!この辺で休憩にしましょう!」
車列が停止し、商隊や冒険者の面々は各々ドライフルーツや黒パン、干し肉などの日持ちの良いものを食べ始めた。
私達は街の外で合流した10式戦車6両、ストライカーMEV2両と一緒にきた武器弾薬などを満載したトラック8両から人数分の戦闘糧食Ⅱ型を取り出し、加熱材に水を注ぎ始めた。
「えっ?!」「何?あれ?」
そこら中から上がる水蒸気に冒険者達と商隊のエルフ達が驚きの声出した。
「七海さんそれは一体何ですか?」
セシルさんが好奇心いっぱいの顔をして質問してきた。
「これは私達の軍の軍用食ですよ。」
私はナイフでパックを開けながら答えた。
パックを開けるとハンバーグの良い香りが広がった。
「うわ~凄いですね。」
「良かったら食べますか?多めに持ってきてますし。」
「是非お願いします!」
セシルさん以外にも冒険者と商隊のエルフ達が自分達にもと言ってきたので、全員分をトラックから引っ張り出し、加熱した。
「おお~」「凄いなこれは。」「初めて見る料理ばかりだ!」
全員が温かい料理に感嘆の声をあげていた。
「いただきます!」
セシルさんは我先にと料理を食べ始めた。
「美味しい!なにこれ!?これが軍用食だなんて羨ましすぎる!」
セシルさんが感動の声をあげると他の人達も食べ始めた。
「!!」「う、美味い!」
彼等は瞬く間に料理を平らげてしまった。
「七海さん。これを売って貰えませんか?」
カレンさんを含む多くのエルフ達が商人のカンが働いたのか一斉に詰め寄ってきた。
「お、落ち着いて下さい。ここでなくてもフェンリル軍の基地のPX(売店)で売ってますから、商売の話でしたらそちらでお願いします。」
「クッ!これなら噂なんて気にせずに早いうちから接触しておくんだったわ!」
「こうなることも考えて大量にありますから夕飯でも分けますよ。」
「「「「「よっしゃー!」」」」」
私達は冒険者達と商隊の胃袋を支配することに成功した。
[14:45時]
食事を終え移動を再開して少しすると、先頭で動きがあった。
《フェアリー、こちらバジャー2-3(ストライカーRV)。赤外線カメラと動体センサーに反応がありました。11時の方向、400m先の森の中にオーガ22匹を確認しました。》
「来たわね。全隊、それと冒険者の皆さん。聞きましたね。」
冒険者達と商隊のエルフ達には昼食の後連携を取る為にヘッドセットを渡してあった。
《ああ、聞こえたぞ。》
《こっちも聞こえました。》
《《《《《同じく。》》》》》
《こちらアイアンホーネット・アクチュアル感度良好です。》
《こちらワスプ2-1、しっかり聞こえています。》
「よし。総員戦闘準備。バジャーとワスプは隊員を降車させろ。
アイアンホーネットはオーガが仕掛けてきた場合にはキャニスター弾で先制攻撃を行え。
フェアリー・ウインド各員と冒険者の皆さんは車両部隊の弾幕を抜ける奴が出たらそいつの始末を。」
《《《《《了解。》》》》》
車列が停車し、HMMWVやストライカーから完全武装のSBU、KSK、DeltaForceの隊員が降車し、冒険者達もそれぞれの得物を持ち周辺の警戒を始めた。
HMMWV、ストライカー、10式戦車はそれぞれ搭載されている重火器を11時の方向に向け、ゆっくりと前進を始めた。
「フェアリーより各員。もうじき奴等との距離が100mを切る。気をつけろ。」
私はストライカーCVの銃座に据え付けられたMk.19を森に向けていた。
すると、
『グォーー!』
と森から雄叫びをあげながら棍棒を持ったオーガ達が飛び出してきた。
「きたぞ!全車!攻撃を開始しろ!」
《アイアンホーネット了解!》
《バジャー全車攻撃開始!》
《こちらワスプ2、攻撃を開始する!》
まず10式戦車4両が、飛び出してきたオーガ達に向けてキャニスター弾を発射した。
[ドン!][ドン!][ドン!][ドン!]
発射されたキャニスター弾は空中で開き、大量の鉄の矢をばらまいた。
オーガ達は真正面からフレシェット弾を浴び6匹程が死に、勢いも落ちたがそれでも進んできた。
続いてバジャーとワスプ2が搭載されているMk.19、M2、M134、GAU-19Bで攻撃を始めた。
[ポンポンポン!][ドドドドド!][グヴォーーー!]
とてつもない密度で7.62mm弾、12.7mm弾、40mm擲弾が発射され更に9匹のオーガが肉片へと変わった。
しかし、
《クソ!!奴等仲間の死体を盾にしてやがる!》
「各員、7匹車両の弾幕を越えてくるぞ!体に銃弾は効果が薄い!頭を集中して狙え!」
《こちらアイアンホーネット!再装填完了!APSFDS弾だ!喰らいやがれ!》
[ドドドドン!]
APSFDS弾を装填した10式戦車が発砲し、死体を盾に接近してきたオーガを死体ごと貫いた。
「よし!後3匹!」
《七海さん!私達も出ます!》
《残った3匹は俺達に任せてもらう。》
セシルさんとジョナサンさんから連絡が入り冒険者達が前に出た。
「………大丈夫ですか?」
《任せろ。それにこのままでは試験にならんのでな。》
「……わかりました。ただ目の前で死なれるのは寝覚めが悪いのでサポートはさせてもらいます。
フェアリーより全車、射撃中止!冒険者達が前に出るわ。各隊のスナイパーは冒険者達の援護を、他の人員は商隊の護衛に残って!」
《《《《《了解!》》》》》
私は怪我人が出ないよう祈りながら車列を離れて行く冒険者達と兵士を見つめた。
フェンリル海軍特別警備隊第4小隊 新島八重 コールサイン:ヒデキヨ
私達SBUとDeltaForce、KSKのスナイパーとスポッター、あわせて24人は車両の間に匍匐して冒険者達を見ていた。
「やっぱり皆身体能力は高いね。」
重そうな剣を持っているにもかかわらず凄い勢いでオーガに肉薄していく冒険者達を見て私はそうつぶやいた。
「冒険者はこれが仕事ですからね。」
「そうだろうね。さぁジル。始めようか。」
私は愛用のXM109にHE弾を装填し、スコープを覗いた。
「先ずはあの武器を奪いましょう。あのままにしておくのは危険です。」
「了解。でもその前に、こちらヒデキヨ。これより左側のオーガをアルファ、中央のオーガをブラヴォー、右側のオーガをチャーリーとします。私達SBUはアルファに対し狙撃を開始します。」
《こちらドーラそれではKSKはブラヴォーを殺らせてもらおう。》
《こちらポーラ。Deltaはチャーリーを。》
「これでよし。それじゃあ今度こそ始めましょう。ヨイチ[M98]はアルファの右目を、スギタ[L96]は左目を、ナスダ[M82A3]は奴の股間を狙撃して。」
《《了解。》》《………》
「ナスダ、どうしたの?」
《いえ。なんか罪悪感が……。》
「ふ~ん。まあ頑張って。」
《うへぇ。》
私は何かうめいているナスダを無視し進めた。
「ジル。冒険者達とオーガは後何秒で接触する?」
「このペースだと20秒です。」
「ヨイチ、スギタ、ナスダ、5秒後に撃つよ。」
《《《了解。》》》
私はオーガの右手を十字の中心に捉え息を止めた。
「5 …4…3…2…1…ファイア。」
ジルがカウントし0になった瞬間に私は引き金を引いた。
[ドゴン!][ドドドン!]
私の発砲と同時に3人も発砲した。
ヨイチとスギタの放った.338ラプア弾は狙い通りにオーガの両目を潰した。
ナスダの放った12.7mm弾もしっかりと狙い通りに当たり、オーガの生殖器をグシャグシャにした。
私の放った25×59mmHE弾はオーガの右手に命中してから炸裂し、右手首から先を弾き飛ばした。
『グギャーーー!』
一瞬にして両目、右手、生殖器を失ったオーガは怒りと苦しみの叫びをあげた。
《《《《《うわぁ。》》》》》
無線から冒険者や仲間の男性兵士の同情の声が聞こえてきた。
「まあこれで奴の戦闘力も落ちるでしょ。後はしっかり監視しましょうねジル。」
「はい!相変わらず凄い腕ですね!」
「あなたもいつかできるから一緒に頑張りましょう。」
「はい!」
私達はオーガと冒険者達の戦いを見始めた。
バスターズ セシル・マーラン
私達がオーガに向けて駆け出して少しすると、車列の方からとてつもない轟音が連続して聞こえたのと同時に前にいたオーガ達の両目と体の一部が弾け飛んだ。
『グギャーーー!』
特に右端の奴は生殖器を弾け飛ばされていた。
「「「「「うわぁ。」」」」」
一緒にいた男性冒険者は皆股間を抑えて、オーガに同情の視線を向けていた。
「今がチャンスだ!怪我が回復する前に片付けるぞ!」
兄さんがそう叫び中央と右端のオーガにバスターズ所属の冒険者達が切りかかった。
本当なら私達も行きたい所だけど、私達には冒険者達の評価という仕事があるので、後ろで、しかしいざという時に飛び出せる位置で、待機していた。
バスターズ所属の冒険者達は、最後尾にいる魔術師の一時的に筋力を上げる魔術を受けた盾持ちの重戦士がオーガの攻撃を防ぎ、その隙に槍や剣を持った軽戦士が攻撃を仕掛け、確実にオーガの体力を奪っていった。
『グ…ギャ…………』ドサッ
『ガ………グ……………』ドサッ
体の至る所を切りつけられ大量の血を失ったオーガは、遂に力尽きた。
「よし!」
私がそう呟いた直後、
「ウワーッ!」
私が叫び声の聞こえた方を見るとマッドデビルスのサポートをしていたジャックがオーガに潰されようとしていた。
フェンリル海軍特別警備隊第4小隊 新島八重 コールサイン:ヒデキヨ
「流石バスターズは軍団として有名なだけはあるね。」
「そうですね。よく連携して動けてます。」
「それに比べてあっちは酷いね。リーダーのクックは怒鳴ってばっかりだし、連携もボロボロ。」
「そうですね。あっ!」
その時、1人の冒険者が目が回復したオーガに吹き飛ばされ、トドメに腕が振り下ろされようとしていた。
「八重さん!」
「やらせん!!」
私は素早く狙いをつけ引き金を引いた。
バスターズ セシル・マーラン
ジャックに腕が振り下ろされようとしていると、
[ドゴン!]
という轟音が再び響き、今度は腕では無く頭が弾け飛んだ。
頭のなくなったオーガは崩れ落ち、少しの間痙攣すると二度と動かなくなった。
「ウゲェーー!」
オーガの頭が弾け飛ぶところを間近で見た冒険者の何人かが耐えきれず嘔吐していた。
私は音のした方を見ると、背の低い子供が巨大な何かを持って立ち上がった所だった。
彼女は私に気付くと顔をほころばせ、サムズアップをした。
私も彼女に御礼の意味を込めてサムズアップを返した。
「オーガの掃討は完了だ!ジャックの手当てをして、休憩にしよう!」
兄さんがそう叫ぶと冒険者達は力を抜き、ジャックを支えながら車列に戻っていった。
私達が車列に戻ると腕に赤い十字の書かれた白い腕章を付けた兵士達が駆け寄ってきた。
「皆さんの中に怪我をした方はいますか?」
蛇人族の少女がそう聞いてきたので、
「ジャックがオーガの攻撃を受けた時に骨を折っちゃったんだけど、なんとかなる?」
「お任せを!ついてきてください。」
彼女はジャックと付き添いの私を白地に赤い十字のマークの車までつれてきた。
「この中で応急処置をします。」
彼女はそう言うとジャックを連れて中に入っていった。
[30分後]
後ろの扉が開き、中からさっきの少女が出てきた。
「あなたはバスターズの副団長のセシルさんですよね?」
「ええ。そうだけど。」
「ジャックさんなんですが。調べてみた所、折れた骨が腕の重要な血管を傷つけているとわかりました。」
「?それってまずいの?」
「非常にまずいです。応急処置はしましたが、このまま放置すると血が他の血管を圧迫して腕が腐ってしまいます。」
「!な、なんとかならないの!」
「ここではきついです。でも方法はあります。そのためにジャックさんを戦線から離脱させて欲しいんです。」
「わかったわ。あなたに任せる。」
「それでは救援を呼んでくるので待っていてください。」
そう言うと彼女は七海さんの方へ向かって行った。
[3分後]
「セシルさん!ジャックさんを開けた所に運びます。手伝ってください。」
そう言うと彼女はジャックを担架に乗せた。
「あなたの言う助けは?」
「後10分で来ます!」
「一体どうするの?」
「私達の基地に運び治療します。」
「えっ!でもここからはかなりの距離があるけど。」
「大丈夫です!」
彼女は自信たっぷりに頷きジャックを開けた場所に運んだ。
[9分後]
彼女の言った10分が近づくと私の耳にバタバタと言う音が聞こえてきた。
「この音はもしかしてあなた達の使っている空飛ぶ箱?」
「そうです!来ましたよ!」
すぐに音の正体の空飛ぶ箱が私達の目の前に着陸した。
すると中から、金髪の女性が素早く降りてきた。
「ジェニーさん!」
「テッサ、話は聞いたわ。そっちの彼ね。」
「はい。よろしくお願いします。」
「任せて。そっちのあなたは彼の仲間ね。」
ジェニーと呼ばれていた女性は、私の肩に手を置き、
「彼は私達が責任を持って助けるから安心して。」
そう言って担架と一緒に箱に入っていった。
彼女達が中に入ると扉が閉められ、箱は街の方向に向けて飛び去っていった。
「これで何とかなります。あ!申し遅れました。私はテッサ・ブレイディです。短い間ですがよろしくお願いします。」
そう言って彼女は手を差し出した。
「こちらこそ!今日は助かったわ!」
私は彼女の手を握り、固い握手を交わした。
フェンリル軍ギルド派遣部隊第1独立大隊 七海優香 コールサイン:フェアリー
[20:30時]
オーガを殲滅した私達はその後順調に進み、野営地点を確保した。
各所で焚き火を焚き、その周りにテントが多数置かれていた。
私と各隊の隊長、バスターズの指揮官2人、商隊の隊長のカレンさんと副隊長のプリムさんは一緒に食事をとっていた。
「今日は初日から大変でしたね。」
「ええ。まさかいきなり22匹のオーガに襲われるなんて。あなた達がいなければ危なかったわ。ありがとう。」
「私達からも御礼を言わせてください。仲間を助けてくれてありがとうございました。」
カレンさんとセシルさんが御礼を言ってきた。
「これが仕事ですから。そちらに被害が無くて良かったです。」
「それにしても腑に落ちんな。本来オーガは森の奥にいる魔物のはずだ。それが大量に街道沿いに現れるとは。これはやはりダンジョンが出来ているのだろう。」
ジョナサンさんが眉間に皺を寄せて考え事をしていた。
「ダンジョンですか。すいません。ダンジョンについて教えてもらえませんか?」
私は今後の為にもダンジョンについて聞いてみた。
「ん?ああ。構わんぞ。ダンジョンは魔力が非常に高密度でたまった場所に出来る建造物だ。」
「建物が自然発生するんですか?」
私は驚き、聞き返した。
「ああ。ダンジョンは基本的に3つのタイプに別れる。遺跡型、異次元型、ボス型だ。
遺跡型は文字通り遺跡の用な建物が出来る。中の魔物は基本的に小型で感圧床などによる罠が多い。制圧は比較的簡単だな。
異次元型は入り口が異次元への入り口になっていて、中に平原や海があることも珍しくない。罠は無いが、魔物の数が多く、外は夏なのに中は冬ということも多い。こいつの制圧は不可能だが、広い上に魔物以外の動物も住んでいるから中に街を作ったりしているな。
最後にボス型だ。こいつは非常に強力な魔物が守護している。その力は街1つを滅ぼせる程だ。しかもボスはダンジョンから外に出ることができる上に、ダンジョンの最奥にあるコアを破壊しない限り死なないんだ。
しかし殆どの場合ボスは知能が高く、人間に近い外見をしているため、対話によって片が付く事が多いな。中には街の守り神として崇められている物もいるな。」
「へぇ~。色々あるんだね~。」
八重が楽しそうに笑った。
「ちなみに今回はどれだと思います?」
「おそらく異次元型かボス型だろう。中から魔物が溢れ出て、森の食料が減っているか、ボスの力を恐れて逃げているか、あるいはその両方だろう。」
「異次元型はまだ良いけどボス型だったらボスが友好的なことを祈るしかないですね。」
セシルさんがジョナサンさんの予想にそう付け足した。
「なる程。色々わかりました。ありがとうございます。」
「何、この位構わんさ。
もう大分暗くなったし、見張りの順番を決めるとしよう。」
「あ、それは大丈夫です。監視は私達の車両が自動でやってくれるので。」
「そんな事も出来るのか!頼もしいな。」
「ですがこれはマッドデビルスには秘密でお願いします。」
「?何故だ?」
「恐らく今夜彼等が動くと思います。冒険者の多くが疲れていますしね。」
「良くわからんが任せよう。」
「お願いしますね。」
「ええ。大船に乗ったつもりでいてください。」
マッドデビルス クック・ウィーカー
[24:00時]
俺様達は深夜の寝静まった頃に寝床を抜け出し、森に潜んでいた盗賊と合流した。
「次の獲物はあの商隊だ。まずは護衛の奴等の武器を手に入れる。」
「大丈夫なのか?あいつら化け物みたいに強かったぞ。」
「だから寝ている間にやるんだろうが!何故か知らんがあいつ等見張りを置いてねえしな。お前等は黙って俺様に従えばいいんだよ。」
俺様は仲間と盗賊を連れて、金属の乗り物に近づき、開いている後ろの扉から中に入り、武器を取り仲間に配った。
「よし。それじゃあ襲いに」
そこまで言った所で俺様達を強力な光が覆った。
フェンリル軍ギルド派遣部隊第1独立大隊 七海優香 コールサイン:フェアリー
私が眠っていると無線からアリアの声が聞こえてきた。
『マスター、動き出しました。』
私はすぐに起き上がり、部隊に連絡を入れた。
「各員、こちらフェアリー。ライオットが活動開始。ステルス迷彩とサプレッサーを装着しろ。鎮圧する。」
《《《《《了解。》》》》》
私と有希はテントを出て有希にはバスターズの2人の所へ状況説明に、私は部隊と合流し、私達はステルス迷彩を起動して、愚か者達を包囲しに向かった。
私達が到着すると、開けておいたストライカーから武器を取り出していた。
私達は音を発すること無く全員を包囲した。
武器が全員に渡った所で私は銃の多目的LAMをフラッシュライトモードにし、男達を照らし出した。
「グゥ!な、何だ!」「クソ!目が!」
男達は急に強力な光を浴び、軽くパニック状態に陥っていた。
「残念でした。あんた達の目論見はもう割れていたのよ。」
「俺様達を嵌めたのか!」
「ドアが開け放たれていた時点でおかしいと思いなさいよ。」
「うるせえ!だが俺様達はもうお前等の武器を手に入れたぞ!たった1人でなにができる!怪我したくなけりゃ「撃ちなさいよ。」
私はクックの言葉を遮った。
「あんた達は誤解しているのよ。
1つ、数多くの戦争を戦い抜いてきたプロフェッショナル相手に勝てると思っていること。
1つ、ここに私しかいないと思い込んでいること。
そして、根本的に間違っているのは、あんた達に、私は殺せない。」
私が侮蔑の笑みを浮かべると、
「その顔をするんじゃねぇ!てめぇ等!奴を殺せ!」
男達は私達に銃を向け、引き金を引いた。
カキン
しかし弾は1発も出なかった。
「な、何故だ!あの箱もしっかり取り付けたのに!」
「マガジンははめるだけじゃなくて、レバーを引かないと弾は出ないのよ。」
「それなら!」
クックは素早くチャージングハンドルを引き初弾を装填した。
「これでいいんだろ!」
再びクックは引き金を引いた。
カキン
しかしまたしても弾は出なかった。
「何でだ!」
「私達の銃は、私達か、私達から許可された者以外には撃てないのよ。」
私の言葉を聞き男達は青ざめた。
「クソ!だがたった1人だ!こっちは30人いる。ごり押していけば!」
「さっきも言ったでしょ。私は1人じゃなくて、」
私の横で兵士達がステルス迷彩を解除した。
「全部で60人いるのよ。」
クック達は何もない空間から突然大量の兵士が現れ、全員が銃を向けているのを見てついに心が折れた。
「今なら生かしてあげるわ。武器を捨てて手を頭の後ろで組みなさい。」
クックを除く全員が持っていた銃と剣を捨て、手を頭の後ろで組んだ。
「クソ!クソ!認められるか!」
「黙りなさい。あんたの負けよ。」
「クソー!」
クックはヤケになったのか、剣を抜いて、私に向かってきたが、
[ドチュ!]
待機していたスナイパーに足を撃ち抜かれた。
「最初に会った時にも言ったはずよ。私達は何時でもあんた達を殺せたの。今も生きている事を感謝しなさい。
こいつ等を拘束しろ!」
私の命令で兵士が素早く動き、全員を拘束していった。
「凄いですね。完全に透明になってましたよ。」
セシルさんとジョナサンさんがテントの方から歩いてきた。
「ああ。あれはステルス迷彩と言いまして。姿を透明にする装置です。数はそれ程多くないですけどね。」
「そんな物が沢山あったらたまったもんじゃないがな。」
「違いないですね。
まあこれで盗賊も制圧出来ましたし、これで今夜はゆっくり眠れますよ。
それでは私はもう寝ますね。お休みなさい。」
「ああ。明日もよろしく頼む。」
「お休みなさい。」
私はテントに入り、すぐに眠りについた。
次回は依頼2日目から3日目と街での話です。
そろそろトンデモ兵器を出したいと思います。一応未来から異世界に行ったという設定なので。
新島八重大尉のコールサインは16世紀に火縄銃での暗殺を成功させた遠藤秀清からとりました。
ご意見ご感想をお待ちしています。




