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ゲームの軍隊と異世界攻略  作者: RIGHT
第1章 Operation Labyrinths Breakers
22/88

第1章9 派遣部隊と護衛依頼

SBUのコールサインを変更しました。

[4ヵ月後]

〈アメックス王国 フォート・ディール 訓練所〉

フェンリル軍特務派遣軍集団 七海優香 コールサイン:フェアリー


訓練が始まってから4カ月がたった。元々軍人や冒険者だったので、体力はかなり高いレベルだった事もあり、射撃訓練が終われば直ぐに実戦で使えるレベルに到達した。


「諸君!これで訓練は終了だ!これより諸君は私の下で働いてもらうことになる。常に誇りを持ち、フェンリルの名に泥を塗らない働きをしろ。」


「「「「「はい!!」」」」」


「これで諸君は1人前と認められることになる。これからも期待しているぞ。最後に、私に話しかける時は別に敬語で無くても良いぞ。私もこの口調がいい加減疲れたのでこの集会が終わったら口調を戻すからな。


それでは諸君の配属先を発表したら解散とする。


それでは発表する。諸君は以降私の指揮するギルド派遣部隊の所属となる。この部隊はギルドの依頼をこなしつつ、情報収集とギルドや市民からの信頼を得ることが主な目的となる。私達には諸君の知識が必要だ。各自の能力を最大限に発揮してくれ。


部隊としての行動は3日後からとなる。ゆっくり休んでくれ。それから、隊員宿舎に各自の個室が用意してある。スマートフォンに位置情報が送信してある。家具や雑貨は無いが、この3日に限り、値段は無料にするように伝えてある。ゆっくり好きなものを選ぶといい。


それでは、解散!!」


「「「「「ご指導、ありがとうございました!」」」」」


私を含む全員が敬礼をし訓練は無事終了した。



[3日後 13:00]

〈アメックス王国 フィールの街 フォート・ベアード〉

フェンリル軍特務派遣軍集団ギルド派遣部隊第1独立大隊『フェアリー・ウインド』

七海優香 コールサイン:フェアリー


私は新たに編成されたギルド派遣部隊の隊長としてフィールの街に4カ月ぶりにやってきた。


「この街に来るのは久し振りね。もう大分変わってるけど。」


前までは中世ヨーロッパのような街並みだったが、今では街の外にはフェンリル軍の基地が出来、他の街を繋ぐ新たな足である飛行機に乗るために住民が何人か基地に着ていた。


「飛行機ってやつは凄いですね。あれだけの距離をこんなに早く移動出来るなんて。」


初めて飛行機に乗ったウィリアムスさんがそうつぶやき他の人間も頷いた。


「今回乗ってきたのは輸送機だから、あれでも遅い方なんだけどね。

さて、今日はギルドに顔を出すのと、街の中に基地以外に私達の拠点を確保することと、街を散策して情報収集をするわよ。

私の(シルキー)はギルドに、メタル(DeltaForce)は拠点を作る土地を確保、ヴォルフ(KSK)とウミドリ(SBU)は情報収集、主に街周辺の危険地帯や噂を調べて。

何かあったら報告すること。」


「「「「「了解。」」」」」


メタル、ヴォルフ、ウミドリの各隊は隊員を引き連れて街に入り込んでいった。


「さて、私達も行きましょう。」


私は自ら訓練した11人と共にギルド目指して歩き出した。


〈フィールの街 冒険者ギルド〉

街に入り20分程歩くと、冒険者ギルドの入り口についた。

中に入ると酒を飲んで騒ぐ者や、依頼内容を確認している者が多く騒がしかった。

私は真っ直ぐカウンターに向かった。


「ニーナちゃん久し振り。元気そうね。」


「お久しぶりです七海さん。今日はどういったご用で?」


「これからこの街で依頼を受けようと思ってね。今日は挨拶にきたのよ。」


「そうなんですか。」


「そうなのよ。それで、最近この街の様子はどう?」


「そうですね。飛行機が飛ぶようになって流通が活発になってますね。ただ、最近街の中に魔物の動きが活発になっているので、周辺の調査が行われてます。もしかしたらダンジョンがあるかもしれません。それとその影響で冒険者が集まっているんですが、ガラの悪い方が多くトラブルが頻発しています。」


「それは不味いわね。」


「ええ。調査が進むのは良いですが治安が悪化するのは問題です。」


「まあ、私達は明日から活動を始めるからその時はお願いね。」


「はい!ギルド本部もあなた方の活躍には注目していますので頑張って下さい。」


私はギルドを出て、無線で連絡を取った。


「こちらフェアリー、各隊現状報告を。」


《こちらテンマ、街東部で散開して情報収集中です。どうやら最近東の森に住む魔物が活性化しているようで、商隊に被害が出ているようです。》


《こちらドーラ、こちらも似たような報告を受けています。それと最近よそからきた冒険者とのトラブルがおおいそうです。》


「了解。ヴォルフ

とウミドリはそのまま情報収集を続けて。

メタル、サンドマン聞こえる?状況報告を。」


メタル隊から返事が無いためもう一度声をかけた。


《………すいません。返事が遅れました。》


「構わないわ。状況は?」


《冒険者に絡まれていた少年を保護しました。話を伝えると東の外れにある孤児院の周辺の土地を利用する許可を取りました。ただ…》


「どうしたの?」


《孤児の数がとても多いんです。全部で200人はいるかと。》


「そんなに多くがどうやって生活を?」


《隣接する教会のシスター達が頑張っていたんですが、最近悪徳商人に騙されて多額の借金を抱えてしまったそうです。》


「なるほど。つまり私達に援助して欲しいと。」


《そう言うことです。》


「良いわよ。援助しましょう。ただ、孤児院の子達にも拠点の掃除とかしてもらいましょう。」


《そうですね。位置情報をHUDに送信します。》


直ぐにHUDのマップの東に赤い光点が表示された。周辺には青い点が集まっていた。


「全員聞いたわね。30分後に孤児院に集合よ。」


《《《《《了解。》》》》》


予定を伝え、無線を切ったところであることを思い出した。


「そう言えば技術部が新しく追加した機能試してなかったわね。スマートフォンとHUDをリンクさせて、と。」


するとHUDに小さな冠を頭に乗せた金髪の妖精が映った。


『こんにちはマスター。』


「こんにちは、アリア。これからもよろしくね。」


『はい!これからもよりマスターのお役に立てる用頑張ります!』


技術部が作ったHUDのアップグレードとは全員のスマートフォンにインストールされているサポートAIをHUDに応用するソフトだった。

AIは本国のデータベースに直接繋がっている為、各隊員の集めた情報を直ぐに入手することが出来る上に、学習するので兵士達の3人目のバディになると技術部は言っていたが、これなら期待出来るだろう。


「七海姉さん、何してるの?」


ランが気になったのか話しかけてきた。


「技術部が入れたソフトを試したのだけど、凄いわね。皆も使って見たら?」


「「「「「はい。」」」」」


全員がHUDとスマートフォンを操作し始めると、


「うわ!」「これ凄い!」「エインだ!」


「HUDの操作は彼女達に任せれば良いわ。

それじゃあ孤児院に行きましょう。アリア、HUDにARで道を映して。」


『はい!』


視界に道順が投影され、20分程で孤児院についた。


「ここが孤児院ね。アリア、メタルがどこにいるか分かる?」


『教会の1階にメタル隊のサンドマン、グリンチ、トラック、フロスト、コブラ、マッコイがいます。他の隊員は今こちらに向かっています。』


「ありがとう。」


『お役に立てて何よりです。』


私達は教会に向かい中に入った。


「サンドマン、来たわよ。」


声を掛けると、奥の扉からサンドマンが出てきた。


「ご足労かけましたねフェアリー。こっちです。中にこの教会のシスター達がいます。」


「先ずは話をしないとね。」


部屋に入ると2人の若いシスターと1人の60歳程のシスターがいた。


「遅れて申し訳ありません。私が彼等の上官の七海優香です。」


「お若いですね。軍人さんのようだったので、どんな大男がくるのかと思っていたので驚きました。」


60歳程のシスターが話しかけてきた。


「私の軍では女性も数多く活躍していますよ。」


「そうなんですか。私はマリアンヌと言います。

それで、この度は私どもの運営する孤児院と教会を援助してくれると聞いたのですが。」


「ええ、それで合っています。報酬はこの周辺の土地を使わせてもらうことと、あなた方に少し手伝いをして頂ければ。」


「手伝い、ですか。」


「はい。私達の施設を管理して欲しいのです。」


「それくらいでしたら構いません。多少の荒事ならこの2人に任せてますが、流石に軍隊に行かせるのは。」


「そうですね。人を傷付けるのは私達に任せて、あなた方はご自分の使命を全うして下さい。」


「そうさせて頂きます。

それではこれからよろしくお願いします。」


「こちらこそよろしくお願いします。」


私達は握手をした。


[15:00]

全員が揃った所でゲーム時代から残っていたチート機能を使い3階建ての大きめのビルを2つ建て孤児をビルに招いた。


「今日からここがあなた達の家よ。」


孤児達は初めて見た建物に興味津々で直ぐに駆け出していった。


「あなた達は一体何者何ですか?」


「私達は異世界から来たんですよ。」


「異世界?!もしかして、以前街を救って下さった方々ですか?」


「はい。そうですね。私達はこれから会議ですので。失礼します。この紙に各部屋の説明が書いてあるので。それでは。」


私はマリアンヌさんに案内図を渡し会議室に入った。


「それでは第1回第1独立大隊会議を始めます。

先ずは各自報告を。」


サンドマンことウィリアム・フィクナー大尉がまず報告した。


「街の中を聞いてまわった時に余所者が問題を起こしているから余所から来た人に部屋は簡単には貸せないと断られることが多かったですね。」


「新島と宮本も冒険者に絡まれたと言っていたな。」


「私の方は以前からこの街にいる冒険者の間では迷彩服の連中には絡むなと言う話が出ているのを聞いた。つまりそいつらは最近来た奴等と言うことだな。」


「どうやら余所者の冒険者のせいで治安が悪くなってるのは間違いないようね。

予定としては明日からギルドで依頼を受けようと思っていたのだけど、一部はここの防衛に残しておきましょう。

それと、もし絡まれたら徹底的に叩き潰してやりましょう。

ひとまずはこんな所ね。明日も頑張りましょう。以降は1800時まで自由時間よ。子供達と遊んでも良いし、街に行っても良いわよ。ただし武器は持っていってね。」


会議は直ぐに終わり、各自自由に過ごし始めた。


有希と部屋の整理をして1階に降りると、新島大尉とジルのちびっ子コンビとエルとメヌの4人が孤児院の子達を連れて街に行く所だった。


「八重、どこに行くんですか?」


「ああ、優香ちゃん。この子達に服を買ってあげようと思って。ほら、皆ボロボロだし。」


みると確かに孤児達はボロボロの服を着ていた。


「良い考えね。私もついて行っていい?」


「どうぞどうぞ。一緒に行きましょう。」


ジルも賛成の声を挙げた。


「待った。行く前に銃を持って行きましょう。」


「ああ、そうでしたね。」


私達は、2階の武器庫に向かいそれぞれの愛銃とタクティカルベストにマガジンを入れ、準備を終えた。


「それじゃあ準備も終わったし、街へ服を買いに行くぞ~。」


「「「「「お~。」」」」」


八重を先頭に私達は中央広場にある洋服店に向かった。


[16:00時]

街の中央広場にある見るからに高級そうな洋服店についた。


「こ、ここで買うの?」


「そうよ~。お金はあるから気にしないで。」


八重の言うとおり私達は今大金を持っていた。

具体的にはミスリル貨9枚分(9億円)位。以前行った作戦に対するアメックス王国からの報奨金の一部だ。


「申し訳ありません。そのような格好では。」


と店員が入店拒否しようとしたが、


「金ならある!」


と八重が袋からミスリル貨を数枚出すと、


「し、失礼しました!」


「うむ。くるしゅうない!この子達に服を選んでくれるかな?」


「おまかせ下さい!」


八重と店員はどんどん興奮していき、子供達も各自好きな服を選び始めた。


「全く。大騒ぎね。……ん?」


騒ぎを見て外に目をそらした時、外に10人程の男達がこちらを監視しているのを見つけた。


『七海姉さん…。』


「ええ…。アリア、戻るまでの間全センサーを駆使して、周辺警戒をやって。それと、全員のHUDに[怪しい男達がいる要警戒]とメッセージを打って。」


『了解です!』


「さて手を出して来るかしら。」


[17:00時]

買い物を終え孤児院に向かってあえて人気のない道を歩いていると前から6人、後ろから4人の男達が現れた。


「おい!痛い目に会いたく無きゃその金を置いていけ!」


私達は子供達を中心に前の6人を私、有希、八重の3人が、後ろの4人をエルとメヌがそれぞれ受け持ち、銃を構えた。


「痛い目に会うのはそっちよ。道を開けなさい。私達の事を知らないの?」


「知ってるぜ。金蔓だろ?」「ちげぇねえ。」「「「ハハハハ!」」」


「………最後の警告よ。後3秒以内に道を開けろ。1…2…」


「そんな杖で何が出来るんだ?やって見ろよ!」


中央にいた男が剣を抜き、駆けてきた。


「3。撃てぇ!」


私の号令と共に戦闘、いや鎮圧が開始され、一瞬で終わった。


私は駆けてきた男の右太腿をM5Aで撃ち抜き、そのまま後ろにいた男の左太腿を撃った。

私が撃つのと同時に八重はM110で一番左にいた男の左肩を狙撃すると流れるような動きで隣の男の右肩を狙撃した。

有希は右端にいた男の右足をUSP.tacticalで素早く撃ち抜き、隣の男の左足を同じように撃った。


[バン!バン!]

[ドン!ドン!]

[パン!パン!]


男達は音速で襲いかかる銃弾を避けれる訳もなく、全員が体に開いた穴を抑えてのたうち回っている。


前が片付いたので後ろを見ると、そちらでも男達が足や肩を抑えて呻いていた。


「呆気ないわね。相手を調べずに襲うからよ。」


「おい!何の騒ぎ、ってなんだこれは!」


銃声を聞きつけて集まって来た野次馬を掻き分けて数人の警備の騎士がやってきた。


「騎士さん達お疲れ。強盗未遂だよ。証人はここにいる200人の子供達だよ。」


八重がM110を肩に担ぎながら事情を騎士達に説明した。

「そ、そうか。ではそいつらのことは我々に任せて貰おう。」


「お願いするわ。」


男達を騎士に任せ私達は孤児院に戻った。子供達はその間見た光景について興奮しながら話していた。


「何だか不安になるわね。」


私はこれからのことと、子供達が私達の所で働くと言い出さないかを考え不安になっていた。


「まあ大丈夫でしょ。」


八重はそう言って無邪気に見える笑顔を浮かべた。


[翌日 06:00時]

私の予感は見事に的中した。

朝起きて部屋から外を見たら建物から30m程の所に14人の男達が倒れていた。中には小太りの明らかに冒険者ではない男もいたが、全員深い眠りについていた。


「うわ、見事に掛かってるな~。」


八重が私の前に入り込み、外を見て言った。


「ちゃんと防衛システムが働いたようね。まさかこんなに早く試す機会があるとは思わなかったけど。」


この建物の周辺にはAIが制御するターレットや地雷が隠されており、相手の動きや表情、装備を判断し敵と判断された場合は自動で攻撃するようになっていた。どうやら彼等は睡眠ガス地雷と麻酔弾が装填されたリモートスナイパーに狙撃されたようだ。


「八重さん、全員を連れて回収に行きますよ。」


「へーい。他の人を呼んでくるよ。ジル、行くわよ。」


「は~い。」


八重はそう言ってバディのジルを連れて部屋をでていった。


「有希、私達は下に行ってあいつ等を地下牢に運びましょう。」


『はい。』


私達は下で眠る男達を尋問する事にした。


[06:30時]

私は小太りの男の尋問をする事になった。

尋問部屋は白い部屋の中央にイスと机が置いてあるだけの簡素な部屋で、東の壁がマジックミラーになっていた。マジックミラーの向こうには電話で呼んだニーナちゃんとギルドマスターに警備隊長がいた。

マリアンヌさん達に話を聞くと、どうやら例の悪徳商人のようだ。


既に他の隊員が男達を尋問してえた情報からも、こいつ等がここを襲うつもりだったのは間違いないようだ。


尋問を始める為には、男に起きてもらわないといけないので、私は眠る男の胸ぐらを掴み、


[パーン!]


と、頬をひっぱたいた。


「いってー!」


男は突然の痛みに目を覚ましたが状況が分からず混乱していた。


「こ、ここは?」


「あんた等が襲おうとした孤児院の地下よ。」


「お、お前は?どうしてその事を?」


「お友達が快く教えてくれたわ。ヨーゼフさん。幾つか質問させてもらうわよ。」


「そんな事よりこの手錠をとっとと外せ!」


「どうしてここを襲ったの?」


「誰が貴様なんかに教えるか!俺はレイシス帝国の貴族のお抱え商人だぞ!とっとと解放しろ!でないと後で後悔するぞ!!貴様等はどっかの変態貴族に奴隷として売ってやる!」


「……………カイヒメ。こいつの右手を開いて抑えつけろ。」


カイヒメこと宮元良美大尉が男の頭と右手を抑えつけた。

私は胸のナイフホルダーからコンバットナイフを抜いた。


「……ねぇ。街の外にある基地の連中は知ってる?」


「知ってるがそれが何だ?!」


「そこに銀色の毛並みの狼が描かれた旗が掲げられているのは?」


「フェンリルだろ!だから、何なんだ!この街であいつ等を知らない奴はそういないだろ!」


「それじゃあ私達の服の胸のマークと、この模様の服を見たことはあるわね?」


「そんな物、知る、訳が…。」


男は私とフレイの迷彩服の胸の銀狼のエンブレムを見て、顔を青くしていった。


「彼等は市民には優しいけど、無法者や敵に容赦しないと聞いた事は?」


「あ、ある。」


私は冷や汗を垂らす男の親指と人差し指の間にナイフを立てた。


「今現在あなたは私達の敵よ。状況は理解した?」


「は、はい。」


「そう。嬉しいわ。もう一度聞くわね。どうしてここを襲ったの?」


「こ、子供が、とんでもない大金を持って、買い物をしたと聞いて、それを奪おうと。」


「それだけ?」


「子供とシスターは捕まえて裏の奴隷市に出すつもりで。」


「それはどこで、いつ開かれるの?」


「い、言えない。」


「そう。」


私は男の親指にナイフを突き立てた。


「ウグァーー!」


「もう一度聞く。どこで、いつ開かれる?」


「………」


「指を切り落とすわ。」


「!分かった!言う!言うから止めてくれ!」


「懸命な判断ね。」


「裏市場は、観覧都市イーファンのキールカジノの地下で1カ月後の7月7日だ!」


「どうやって中に入るの?」


「受け付けで合い言葉を言うんだ!」


「それは何?」


「受け付けに『今日の大当たりはルーレットで黒の99らしい』と言えば連れて行ってくれる!」


「アスタ、こいつの言ってることは本当?」


「嘘じゃないわ、フェアリー。どうやら本当のようね。」


エッタが金色の目を怪しく光らせながら答えた。


「そう。どうもありがとう。カイヒメ、治療してあげて。」


「はい。」


治療を良美に任せ私とエッタは隣の部屋に向かった。


中は軽くざわついていたが私達が入ると静かになった。


「あの商人と冒険者達の身柄は警備隊にお預けします。

ギルドマスターはこの事をギルド本部と王国政府に伝えて下さい。

依頼が決まり次第こちらに回して下さい。それと、もしこの件が依頼とならなくても私達は動くので、その事も合わせて伝えて下さい。」


「は、はい。」「分かった。任せろ。」


警備隊長とギルドマスターは直ぐに部屋を出て行った。


「ここは退屈しないわね。」


「そうねエッタ。」


私はエッタに後ろから抱きついた。


「わわ。ちょ、ちょっと。私はもう婚約者もいるし子供じゃないんだから抱きつかないでよ。」


「いや?」


「い、いやじゃないけど。気持ち悪くないの?青い肌に角と翼と尻尾なんて。」


「全然そんな事ないわよ。肌は艶やかで柔らかいし、角や尻尾も可愛いわ。」


私はエッタの角を撫でながら言った。


「っあ!ほ、本当に?」


「ええ。それに斎藤さんも気持ち悪いなんて言わなかったでしょ?」


「それはそうだけど…」


「少なくとも私の国にあなたを気持ち悪いなんていう奴はいないわ。だから、あなたはもっと自分に自信を持ちなさい。」


「は、はい!」


「あの~。もう良いですか?」


2人で盛り上がっているとニーナちゃんが我慢出来なくなったのか口を挟んできた。


「はわーーー!」


エッタは青い顔を赤くして部屋から飛び出していった。


「ああ。行っちゃった。

まあ後でゆっくりやればいいわね。

あ!ご、ごめんねニーナちゃん。ニーナちゃんには私達が受けるのにちょうど良い依頼を用意して欲しいの。人数は、150人程ね。」


私はニーナちゃんからの視線を感じ慌てて話を変えた。


「…………わかりました。

それにしても、七海さんって百合何ですか?」


「むさい男よりは女の子が好きね。」


「…なんか最初の凛々しい印象とのギャップが…。

とりあえず私はギルドに依頼を探しに行きます。2時間後にギルドに来て下さい。」


ニーナちゃんはそう言って部屋を出て行った。


[09:00時]

2時間後に私とDelta、KSK、SBUの隊長達、合わせて13人(ちなみに、8人は女性)はギルドの扉を開いた。

私達が中に入ると騒がしかったギルドが静かになった。

冒険者の様子を横目に見ると、私達を畏怖の目で見る者、観察する者、侮るような表情でこちらを見る者に別れていた。


「あ!七海さん!こちらです!」


私達に気がついたニーナちゃんがカウンターから身を乗り出して手を振った。


「何か良い依頼は見つかった?」


「はい。ですがその前に皆さんに伝えることがあるんです。」


「何かな?」


「皆さんはギルドに登録してから昇級依頼を受けていないので通常はFランクなのですが、ここのマスター、商業都市ノーレンのギルドマスター、陛下からの推薦でCランクへの昇級依頼を受けられる用にしたのでそれを受けてください。」


「それは有り難いわね。内容は?」


「ここから菜園都市ファーブルへ向かう商隊の護衛です。」


「所要時間は?」


「順調に行って、往復6日といった所ですね。」


「商隊の人数と運搬する物資、運搬方法は?」


「商隊はエルフ種で構成される『風の隊』で、隊長は黒エルフ族のカレン・オーランドさんです。人数は商人が合わせて38人、商人の雇った護衛が40人物資は食料品と雑貨、運搬は大型の馬車37台です。」


「こっちで乗り物を用意してもいいの?」


「構いません。」


「他の冒険者の人数は?」


「今の所軍団『バスターズ』からDランク7人とSランク2人が、パーティー『マッドデビルス』のDランク5人、Cランク6人、Bランク5人の合計25人です。」


「指揮官は誰になるの?」


「商隊の隊長のカレンさんが判断すると聞いています。」


「経路上で予測される危険は?」


「最近周辺で盗賊と魔物による被害が発生している為注意が必要です。

確認されている魔物はオークとトロール、オーガですね。」


「なるほど。それなら多分大丈夫ね。その依頼受けるわ。」


「わかりました。手続きはこちらで行います。

商隊との合流は11:30に東門です。

ご健闘をお祈りします。」


「そっちも頑張ってね。」


私達はギルドを出て、孤児院の武器庫に向かい、ベアード基地に向かった。


[11:30時]

〈フィールの街 東門〉

商隊『風の隊』隊長 カレン・オーランド


私達風の隊は冒険者ギルドから200人近い護衛を確保したと連絡を受け、集合場所である東門に来ていた。


「それにしても依頼を出して2日で200人が集まる何てここにはどれだけ冒険者が余ってるのかしら。」


「隊長~冒険者さん達が来ました~」


私がぼーっとしている間にどうやら冒険者達が来たようだ。


「分かった。ありがとう。プリム。」


「隊長のサポートをするのが~副隊長である私の仕事ですから~」


妖精種のプリムはそう言って私の肩に乗った。


「それで冒険者達はどこに?」


「門を出て~直ぐの所ですよ~。すごかったです~。ビューンって来てワーっと出てきました~。」


「どういう意味だ?普通の冒険者ではないという事?まあ行けば分かるか。」


門を出て私は直ぐにその集団を見つけた。

そこには大中小の様々な大きさの金属の塊が20個程並んでいた。

その周りには似たような格好をした集団150人程と冒険者と思しき30人程がいた。冒険者達は非常に驚いているようで目を見開いていた。


「な!これは一体!」


私が驚き声を上げると、集団から銀髪の女性が出て来た。


「あなたが風の隊の隊長のカレンさんですか?」


「そ、そうですがあなたは?」


「申し遅れました。私はフェンリル軍ギルド派遣部隊第1独立大隊『フェアリー・ウインド』隊長の七海優香です。このたびはギルドの依頼を受け、あなた方風の隊の護衛をさせていただきます。」


「ちょっと待って!フェンリルってあの怪しい術で魔物の群れを全滅させて、良く分からない空飛ぶ箱を使ってる集団の事よね?!」


「はい。術は使ってませんが大体あってます。」


「彼等の力の源は生物の魂や生き血だって聞いた事があるけど…。大丈夫なの?」


私が冒険者達に流れる噂を伝えると彼女達は笑い出した。


「アハハハ!大丈夫ですよ。それはただの噂です。私達の使っている道具や乗り物は鉄などの資源から出来てますし、私達の多くは魔法を使えませんから。」


「そ、そう。なら良かったわ。

私はカレン・オーランド。この『風の隊』の隊長よ。

そっちの冒険者さんは?」


私の声に我に帰った冒険者達の中から3人が集まってきた。


「すまない。突然のことに茫然としてしまった。

私は軍団『バスターズ』のリーダーのジョナサン・マーランだ。こっちは妹で副リーダーのセシルだ。」


「セシルです。バスターズの副リーダーを務めています。」


赤髪の男女が自己紹介をしたが、私はその名前に聞き覚えがあった。


「俺様h「バスターズのジョナサンとセシルってあの炎人族の兄妹でSランク冒険者の?」


3人目が何か言っていたが無視して続ける。


「そうだ。今日はうちのDランクメンバーの昇級を見守るためと審査のために参加した。」


「皆さんにはご迷惑をかけるかもしれませんがよろしくお願いします。」


「こちらこそよろしく。私はカレン・オーランドよ。」


「私は七海優香です。フェアリー・ウインドの隊長です。一応ギルドには軍団として登録されています。」


「どっちも噂は聞いてるよ。

『武器無き英雄』と『自由の守護者』だろ?」


「………その渾名まだ残ってるの?」


私はげんなりとしてしまった。


「私はどちらも知らないんですが。何なんですか?」


優香がそう言って聞いてきた。


「そ、それy「お2人の商隊と軍団の二つ名ですよ。」


私は何とか話をそうとしたがセシルに邪魔されてしまった。


「武器無き英雄はカレンさん率いる風の隊が80年前に災害に襲われた人々に無償で食料を配り、怪我人を治療し多くの命を救ったことでついた二つ名です。

自由の守護者は、フェンリル軍が奴隷にされ自由を奪われていた数多くの人を種族関係無く悪徳貴族から解放したことからついたそうです。」


「なるほど。カレンさんは凄い人なんですね。」


「そ、そんな事より、最後の彼に話を聞きましょうよ!」


「それもそうだな。」


私は”ある事”を聞かれる前に話をそらす事に成功した。



フェアリー・ウインド 七海優香


私は必死で”年齢”の事から話をそらそうとしているカレンさんを生暖かい目で見てから、最後の1人に目を向けた。

そこには2メートルを超える大男が顔を真っ赤にしていた。


「全員俺様を無視しやがって!俺様はパーティー『マッドデビルス』のリーダーのクック・ウィーカーだ!

この護衛の指揮は俺様達がとるぞ!」


男は大声で怒鳴り散らした。


(うわ。最悪の連中ですね。)


(セシルさん、こいつらの事知っているんですか?)


私は小声で聞いてみた。


(最近この街に来たチンピラグループの1つです。

暴力沙汰もかなり起こしてますし、盗賊と繋がっているという噂も有ります。

リーダーのクックは元々王国の騎士だったんですが暴力沙汰や軍規違反を繰り返し、辞めさせられたと聞いています。)


(へぇ。)


私はその話を聞いて一歩前に出た。


「残念ですがクックさん。あなたに指揮を任せる訳には行きません。」


クックは私の言葉にさらに顔を赤くして叫んだ。


「何だお前は!女、しかもFランクなんかが俺様に指図するんじゃねぇ!指揮は強い奴がやるべきだろう!弱い奴は引っ込んでろ!」


「だからこそあなたには任せられないと言っているんです。指揮の意味を履き違えていますし。

それに、あなたは私より弱いじゃないですか。」


私は侮蔑の笑みを浮かべてクックをみた。


「俺様がお前なんかより弱いだと!」


「ええ。あなたじゃ私には勝てませんよ。

勝負しますか?」


「当たり前だ!」


「では勝った方が指揮をとるということで。セシルさんとジョナサンさん。審判をお願いします。」


「分かった。」「気をつけて。」


私はP320とコンバットナイフを抜きクックと向き合った。


「そんなおもちゃみたいなナイフと杖でなにができる!?」


「あなたを殺す事は出来ます。」


「ほざきやがれ!そんなもんで元騎士の俺様がやられるか!」


クックは1メートル程の長さの剣を右手で持って切りかかってきたので、銃を剣のグリップ部分に向けて撃った。


[パン!]


発射された9mmパラベラム弾は狙い通りグリップを破壊し剣を持てなくさせた。


「何!」


突然剣のグリップが壊れたクックは立ち止まり剣を拾おうとした。

私はその間に一気に近寄りクックの顔面にハイキックを叩き込んだ。


「グオ!」


クックはたまらず後ろによろめいたので、首を掴み、足をかけて地面に背中から叩きつけた。


「ガハ!」


クックの口から空気が吐き出された。


「動くな!私の勝ちよ。」


私は剣を遠くに蹴り、肩を踏みつけ、顔に銃口を向けながら勝利を宣言した。


「「勝者、七海優香!」」


審判役の2人からも勝利が宣言された。


「ま、待て!まだ[パン!]」


まだ諦めないクックの顔の近くに銃弾を撃ち込んだ。


「終わりですよ。やろうと思えば最初の一発であなたを殺す事が出来たんです。命があるだけありがたいと思いなさい。」


「クソ!」


クックは素早く立ち上がり、仲間の所へ戻って行った。


「やるなあんた。」


「ええ。すごかったわよ。」


ジョナサンさんとセシルさんがそう言って私の肩を叩いてきた。


「そんな事無いですよ。私の…私達の軍の兵士ならあのくらい余裕ですよ。」


「そうですか。それじゃあ今回の護衛の指揮は大丈夫そうですね。」


「お任せを。商隊とあなた方には指一本触れさせませんよ。奥の手もありますし。」


私は決意を口にし、指揮を引き受けた。

ギルド派遣部隊は全部で11の独立大隊で編成されており、状況によっては各自で判断し行動する必要があるため、各特殊部隊から1個中隊を選抜し編成されている。


第1独立大隊 SBU DeltaForce KSK

第2独立大隊 SFGp DEVGRU GROM

第3独立大隊 GreenBeret SAS SOG

第4独立大隊 SEALs Spetsnaz GIGN

第5独立大隊 SBS SAD FORFUSCO

第6独立大隊 JTF-2 ForceRecon Jagdkommando

第7独立大隊 JGK CGSU MARSOC

第8独立大隊 SRT SRR SEAL(タイ)

第9独立大隊 SASR SayeretMatkal GCMC

第10独立大隊 13RDP CAG WAiR

第11独立大隊 FSKp17 CIASAD Vympel


上に書かれているのは全て実在する特殊部隊です。全部隊に出番を作れるよう頑張ります。


HUDには通常のアイプロテクションギアタイプ、サングラスタイプ、目を完全に覆うゴーグルタイプなど様々なタイプがあり、フェンリルの兵士は全員装備しています。隊員個人にサポートAIがいますが優香や特殊部隊の物は一般兵の物より成長速度や権限が強化されています。


次回は護衛依頼です。ダンジョンはもう少し後になりそうです。


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