第1章8 訓練
装備とキャラクター紹介を追加しておきました。
やまと型ミサイル巡洋艦とあかぎ型航空母艦のスペック表が欲しいとの意見がありましたので、作ってみました。遅れてすいません。
〈アメックス王国 フォート・ディール 訓練所〉
フェンリル軍特務派遣軍集団 七海優香 コールサイン:フェアリー
国王と通商条約を締結した翌日、査察団は来たときと同じ様にデルタフォースを護衛に連れて王都に帰還した。違う点は、王子と王女に7人の若い士官を残していったことと、王国政府の要人がタブレットまたはスマートフォンを持って帰った事だろう。
”まさか士官を連れてきているとは、最初から私達に預けるつもりだったな。”
私はそんな事を考えながら、前の作戦でフュージリア海兵コマンドが助けた少女の中で戦闘がしたいという4人と王族3人、7人の士官を連れて訓練所に来た。
「皆さんにはここで働いてもらう事になりますが、直ぐに部隊に配属する事は出来ません。」
「どういう事ですか?」
7人の士官の中で最年少のマイク・モートン三等騎士が質問してきた。
「一言で言うと、経験と錬度が不足しているからです。あなた方が受けてきた騎士としての訓練はここでは何の役にも立ちません。そのため、まずは訓練を受けてもらいます。」
「訓練ですか?」
「はい。部隊で働けるレベルになるまで訓練は続きます。それとここで不要と判断された場合は王都に送り返します。
それではまずこの迷彩服に着替えて下さい。」
全員に迷彩服を配り、着替え終えるのを待った。
「全員着替えましたね。それでは早速訓練を始めますが。その前に訓練中にこれまでと同じ様に接してもらえるとは思わないでください。訓練が始まった瞬間からあなた方は私の部下で、終わるまでは兵士ですらありません。それと、私の軍に身分の貴賤や種族の違いによる差は存在しないと言うことを忘れないで下さい。」
私は全員に改めて向き直り告げた。
「それでは訓練を始めます。」
私は自分の中のスイッチを切り替えた。
『全員、気をつけぇー!』
私の怒鳴り声に全員が直ぐに気をつけの姿勢を取った。
「これより貴様等の訓練を開始する!まず、貴様等の基礎体力を見せてもらう!あそこに塔が見えるな?ここからあの塔まで2kmある。あそこの入り口に置かれたタブレットに4秒以上手を触れて戻って来い。魔法、魔術の行使と空を飛ぶことは禁止だ。分かったな?よし!行け!」
訓練生達は一斉に走り出した。
「やっぱりヴァンパイア3姉妹が一番ね。というか有希も速いわね。同じ位じゃない。それから、ライリー王子、ミハエル王子、ジャンヌ王女、士官連中ね。」
私はサングラス型HUDを付け上空を飛行するUAVの映像を見ながら、双眼鏡で様子を確認した。
ちなみに彼等の速さは、
ラン[50m4秒台]
リン>レン[50m5秒台]
有希[50m6秒台]
ライリー>ミハエル>ジャンヌ[50m7秒台]
士官達[50m8~10秒台]
という感じだ。
様子を見る限り今のところは相手を蹴落としてでもという輩はいないようだ。
20分程すると全員が戻って来た。驚くべきことにヴァンパイア3姉妹と有希はペースを落とすこと無く4km走り抜け、呼吸の乱れも見えなかった。
「………あなた達何で捕まったの?」
「えっと、飲み物に強力な睡眠薬を混ぜられて、眠っている間に弱体化の首輪を着けられたんです。」
「なる程。まあ、それは置いといて、全員良くやった。次の訓練に移る。貴様等には今から3グループに別れてもらう。組み合わせはこちらで決めた。今から発表する。」
組み合わせはこのようになった。
1:レン、ウィリアムス・アーデン二等騎士、ジョセフ・マイナー二等騎士、クライヴ・ハルトマン二等騎士
2:ラン、ジャック・ノーランド一等騎士、フィルマン・テルシャー二等騎士、エーリッヒ・アンドリュー二等騎士、マイク・モートン三等騎士
3:リン、有希、ライリー、ミハエル、ジャンヌ
「よし。別れたな。次に貴様等には装備を受け取ってもらう。軽い物から総重量60kg以上の物もある。良いものが出るよう祈れ。では順位の順番に受け取りに来い。」
全員がくじを引き装備が決まった。
ラン:M60 M320 デザートイーグル ボディーアーマー 予備弾倉複数
総重量40kg
リン:M5S M9A1 ボディーアーマー 予備弾倉複数
総重量20kg
レン:GAU-19B 予備弾 バッテリー
総重量75kg
有希:XM109 M5C ボディーアーマー 予備弾倉複数
総重量55kg
ライリー:XM8LMG M320 パンツァーファウストⅢ タクティカルベスト 予備弾倉複数
総重量60kg
ミハエル:M240 HK416C ボディーアーマー 予備弾倉複数
総重量35kg
ジャンヌ:M110 MP5K ボディーアーマー 予備弾倉複数
総重量25kg
ウィリアムス:XM29 M96A1 ボディーアーマー 予備弾倉複数
総重量30kg
ジョセフ:M8A1 M320 MP9 タクティカルベスト 予備弾倉複数
総重量25kg
クライヴ:HK417 P320 ボディーアーマー 予備弾倉複数
総重量25kg
ジャック:M134 タクティカルベスト 予備弾 バッテリー
総重量65kg
フィルマン:Mk.18mod.0 Mk.23 タクティカルベスト 予備弾倉複数
総重量20kg
エーリッヒ:M249 M1911 ボディーアーマー 予備弾倉複数
総重量50kg
マイク:P90 Five-seveN タクティカルベスト 予備弾倉複数
総重量15kg
全員にくじで割り当てられた装備が配られた。大半は初めて持つ銃と装備の重さに驚いているがそれどころでない者もいた。ジャックは総重量65kgの装備の重さに苦悶の声を出した。
「グッ!何だこれ!凄い重いっ!」
「ふむ。どうやら”当たり”を引いたようだな。
それでは今度は協調性を見せてもらおうか。もう一度さっきの塔まで班ごと行って来てもらう。今度は急がなくて良いぞ。仲間としっかり協力して進め。5分後に次の班が出発する。それでは、始め!」
全員が班ごと塔に向かって歩き始めた。
第1班 レン・フーバー
私は運悪く総重量75kgの鉄の塊を持つことになってしまったが、何とか持ち運びは出来た。
「ヨイショ!それじゃあ行きましょう。」
「ああ、その前にあんたそんなもん持って大丈夫か?」
一人の騎士が身長と同じ位の武器を持つ私を心配して声をかけて来た。
「大丈夫ですよ。私は吸血族で力もありますし。さすがにこれは重いですけど。」
「そうか。きつくなったら言ってくれ。持つのは無理そうだが手伝うくらいは出来るぜ。」
「ありがとうございます。その時はよろしくお願いします。」
「ああ。こちらこそよろしくな。俺はウィリアムス・アーデンだ。そっちのメガネかけた生真面目そうなのがジョセフで、軽そうなのがクライヴだ。」
「誰が生真面目そうだ。お前が緩いだけだろう。失礼したなお嬢さん。俺はジョセフ・マイナーだ。」
「そうですよ。俺は軽いんじゃなくて本能に忠実なだけです。俺はクライヴ・ハルトマンです。お嬢さんこれが終わったら俺としょく[グッ]グエッ!」
「このバカが失礼したな。」
ウィリアムスさんがクライヴさんの首に腕をかけながら謝罪してきた。
「いえ。いいチームですね。あっ!私はレン・フーバーと言います。」
私が名前を言うとウィリアムスさんが驚きの声を上げた。
「!!フーバーってまさか鮮血姫として名高いカレン・フーバーのことか!?」
「ええ、カレンは私の母です。」
「良かったなクライヴ。お前ウィリアムスが止めなかったら生ける伝説の娘に手を出す所だったぞ。」
「あ、危なかった。」
「お前これを機に無闇に手を出すのはやめろよ。」
「だが断る!」
「あの。皆さんお母さんを知ってるんですか?」
「ああ。この国のまともな軍人なら知らない奴はそうそういないな。」
「私あまりお母さんのこと知らないんです。良かったら教えてもらえませんか?」
「ああ、良いぞ。一番有名なのは一人でドラゴンと戦って力を認められて、友人となったって話しだな。」
「あれ?殺したんじゃなかったっけ?」
「いや。仲良くなったであってる筈だ。」
「ドラゴンを……。お母さんは何者何ですか?」
(いくら吸血族でも一人でドラゴンは無茶な気が…。)
「ギルド所属のSSS級の冒険者さ。依頼で大陸中を飛び回っていると聞いた事がある。」
「そうですか。」
私は居場所がわからないと知って少し落ち込んでしまった。
「なに嬢ちゃんはギルド所属なんだしここの奴らも大陸中で活躍するようになるだろうからいつか会えるさ。」
私の様子を見たウィリアムスさんが励ますように言った。
「ありがとうございます。」
「この程度気にするな。まずはこの入隊試験を協力して乗り越えようぜ。」
「そうですね。一緒に頑張りましょう!ところで、第2班の人達はどういう人何ですか?」
すると3人は苦虫を噛んだような顔になった。
「あいつらか…」「俺あのボンボン嫌い何だよな。」「大丈夫だクライヴ。俺もさ。」
「???」
私はそんな3人の態度に疑問を持ったが、理由が分かったのは、塔に着いてからだった。
第2班 ラン・フーバー
第1班が出発した5分後私達第2班も出発した。
最初は皆静かに歩いていたが、森に入って少しすると。
「ああ!何で貴族の僕がこんな物持たないといけないんだ!おい!そこの三等騎士!僕のと貴様のを交換しろ!」
男はそう言うと、鉄の塊を地面に乱暴に置き、若い騎士の装備を奪おうとして来た。
「うわ!何するんですか!止めてください!」
「うるさい!未熟な三等騎士の分際で一等騎士の僕に逆らうんじゃねえ!」
私は見ていられなくなり二人の間に割って入った。
「止めなさいよ!嫌がってるじゃない!」
「亜人の癖に僕に命令するな!おい!こいつらを囲め!」
男がそう言うと残った2人も動き出した。
私は若い騎士の腕を掴み、地面を全力で踏みつけ砂ぼこりを巻き上げると騎士と一緒に草むらに飛び込んだ。そこで私は三人に魔眼の力で幻覚を見せ、私達が塔に向かったように見せかけた。
「あっちに逃げたぞ!」
「追いかけろ!何としても捕まえて僕の所に連れてこい!」
男達は一目散に走り去っていった。
「ふう。何とかなったわね。大丈夫?」
私が心配して声をかけると草むらからさっきの騎士が這い出てきた。
「ええ。ありがとうございます。助けてくれて。」
「敬語じゃ無くてもいいわよ。同じ位の年見たいだし。私はラン・フーバーよ。」
「僕はマイク・モートン。それでこれからどうしょう。」
「とりあえず進しか無いわね。塔まで行けば第1班もいるから大丈夫なはずよ。」
「そうですね。行きましょう。」
「ええ。あ。これここに置いとくのは不味いわよね。仕方ない。私が持つか。」
私は近くに落ちていた鉄の塊を持ち上げた。
「凄い力ですね。」
「私は吸血族だからね。」
「そうなんですか。僕まだ騎士になったばかりなんであんまり詳しくなくて。」
私とマイクは喋りながら塔に向かっていった。
第3班 七海有希
私はリンと王族の人達と一緒にここに来るまでのことを話ながら森を歩いていた。
「へえ。捕まってた所を音もなく忍び込んできた男達に助けられたとは。そいつらは一体何者なのかしらね?」
『優香姉さんのお話では特殊部隊という人達らしいですよ。』
「特殊部隊…。是非ともあってみたいものね。」
「ああ。スマン、ミハエル。こいつを一緒に持ってくれないか?重くてかなわん。」
「わかりました。…これでどうですか?」
「ああ。少し楽になった。助かる。」
「困ったときはお互い様ですよ。」
「皆さん仲がいいですね。」
「家族だしね。君達も手伝って欲しかったら言ってね。」
「『ありがとうございます。』」
私達は順調に親睦を深めあいながら塔への道のりを歩いていた。
[2時間後]
〈アメックス王国 フォート・ディール 訓練所 多目的訓練塔〉
フェンリル軍特務派遣軍集団 七海優香 コールサイン:フェアリー
各班無事に到着したが様子は少し違った。当然理由はしっているが。
第1班と第3班はしっかり親睦を深め、談笑していたが、第2班はランとマイクを男達がにらみつけており、ジャックに渡したM134はランが持っていた。総重量は90kg近くになっており流石にくたくたなようだった。
「さて、諸君!ここまでご苦労。今日の訓練は終わりだ。宿舎に案内しよう。風呂にでも入ってゆっくり休んでくれ。…………だがその前に一つ非常に残念な話がある。」
突然声色を変えた私に緊張した面持ちを浮かべた。
「この中に私の言ったことを守らなかった奴がいる。……ジャック・ノーランド一等騎士。心当たりは?」
私に名指しされたジャックは驚いたが直ぐに不敵な笑みを浮かべた。
「はい!そこの吸血族と三等騎士が突然襲い掛かってきました!突然のことで武器を置いて逃げるのがやっとでした。」
「「ハァッ?!」」
「なるほど。後ろの二人、間違いなく事実か?」
「はい。間違いありません。」「そいつらが突然!」
二人はジャックと同じ事を言い出した。
「なるほどなるほど。良く分かった。ジャック・ノーランド一等騎士、 フィルマン・テルシャー二等騎士、エーリッヒ・アンドリュー二等騎士。」
「「「はい。」」」
「貴様等はクビだ。今すぐ荷物をまとめてこの基地から出ていけ。そして二度と戻ってくるな。」
「「「は?」」」
「何だ?詳しくいって欲しいのか?良いだろう。貴様等の罪は上官への虚偽の報告、仲間への危険行為、人種差別、装備の無断放棄。以上だ。反論は?」
「わ、私達は嘘など「これを聞いてもか?」
私はスマートフォンに保存されていた音声を再生した。
そこには森での一部始終が録音されていた。
「それは!」
「他にも映像もあるぞ。協調性を見る訓練で監視しないバカがいるか良く考えておくんだったな。」
「…僕をクビにすると父上に言いつけますよ?」
「はっ!知ったことか。私達は貴様の部下でも何でもない。それに私の軍に親の力に頼るようなガキとレイシスト(人種差別)はいらないんだよ。」
「この女!言わせておけば!」
「どうした?気に入らないならかかってこい。もし私を倒せれば、貴様の性奴隷でも何でもなってやろう。」
「なめるなぁ!」
ジャックは私の挑発に乗り、真っ直ぐ殴りかかってきた。
私は身をそらしパンチをかわし、足をかけてやった。
「ウワッ!」ドタッ
ジャックは見事に転んだ。
「ははは!無様だなぁ!その程度か?」
「くそが!」
また考えなしに殴りかかってきたので奴の腕を右手で捕まえて引き、左手を伸びた肘に逆向きに折れるように振り下ろした。
バキィッ!
右肘は完全に破壊され曲がってはならない方向に曲がった。この世界の医療技術では魔法以外で元に戻すことは出来ないだろう。
ジャックの突進の勢いはまだなくなっていないので、足をかけて転ばせた。右腕が下になるようにして。
「……ッ……ッ!」
ジャックは声にならない悲鳴をあげていた。
「そっちの二人も来るか?」
男達は顔を真っ青にして首を振った。
「それならそこでおとなしくしていろ。警務。フェアリーだ。暴行未遂、虚偽報告、人権侵害の現行犯だ。憲兵隊に引き渡せ。一人腕が折れてるからメディックも頼む。」
《了解!すぐ送ります!》
直ぐに白いヘルメットとMPと書かれた腕章を付けた警務隊1個小隊が駆けつけ、3人を連行していった。
「さて、ごみ掃除も終わったし、宿舎へ案内しよう。」
笑顔を向けた私に若干引きながらも、全員頷いた。
[15時ごろ]
〈アメックス王国 フォート・ディール 中央区画 宿舎地区〉
私は皆を5階建ての建物がいくつも並んだ宿舎地区に連れてきた。
「ここが宿舎よ。あなた達にはここで寝泊まりしてもらうわ。部屋割りはこちらで決めてある。では発表する。」
301:レン・フーバー
ウィリアムス・アーデン
クライヴ・ハルトマン
302:リン・フーバー
ライリー・アメックス
303:ラン・フーバー
マイク・モートン
ミハエル・アメックス
304:七海有希
ジャンヌ・アメックス
ジョセフ・マイナー
「以上だ。それと各部屋には諸君等より先にここで訓練を始めた言わば先輩がいる。彼女達は既に私達の定めた特殊部隊の採用基準を満たしている。本来は2ヵ月未満で達成出来るようなものじゃ無いんだけどな。おっと。話がそれた。とりあえず、諸君の部屋には先客がいて彼女達は先輩に当たる。これからの訓練について聞いてみるのも良いぞ。注意点を親切に教えてくれるだろう。」
「はいっ!質問です!」
「クライヴか。何だ?」
「”彼女達”と言うことは、先輩方は女性なのですか?」
「ああ。」
「いよっしゃー!」
「だがさっきも言ったようにすでに特殊部隊レベルの実力を持っているし3分の1は婚約済みだ。下手に手を出すと潰されるぞ。」
「女性がいるだけで十分です!」
「そ、そうか。それではこれを受け取ってくれ。」
「この板切れはなんですか?」
ウィリアムスが私に質問してきた。
「これはスマートフォンという機械だ。遠くにいる人物と会話したり、風景を記録したりと様々なことができる。画面に人差し指を押し当ててくれ。」
スマートフォンを受け取った7人は画面に人差し指を当てた。
『『『『『登録完了しました。これからよろしくお願いします。マスター。』』』』』
スマートフォンから声が流れ、それぞれの画面に違う容姿をした妖精が現れた。
「うわっ!えっ!」「妖精が現れた!」「一体どういうこと?」
「彼女達はあなた達をサポートするための存在よ。その機械について詳しいことは彼女達に聞くと良いわ。それと、彼女達はあなた達と同じで成長するわ。できるだけ話しかけてあげなさい。
最後に、そのスマートフォンがこの基地での身分証と鍵、お金の替わりだから大事にしなさい。壊したらしっかり報告する事。以上よ。それでは今日の訓練は終了よ。挨拶が終わったら自由時間よ。先輩方に頼めば基地を案内してくれると思うわ。」
〈ディール基地 第3宿舎 304号室前〉
七海有希
私達は簡単な自己紹介を済ませてから部屋に向かった。
「それにしても、まさか姫様がいると思いませんでしたよ。」
「待って。ジョセフ。ここでは私も君と同じ身分の人間よ。敬語はいらないわ。タメ口で構わないわよ。」
「………それじゃあお言葉に甘えさせてもらおう。ジャンヌさんと呼ばせてもらう。」
「うん。それで良いわ。それで、ここが私達の部屋ね。先輩方は特殊部隊レベルの実力があると言っていたけど、有希、以前特殊部隊に助けられたと言っていたわよね?どんな様子だった?」
『非常に高い戦闘力があることは確かです。屋敷の人間にバレずに私達を助け出す位ですから。』
「なるほど。それは凄いわね。それじゃあ失礼の無いよう気をつけましょう。」
ジャンヌさんはそう言って数回扉をノックした。
『『はーい。どうぞー。』』
中から声が聞こえて来たので、扉を開けて中に入った。
『「「失礼します!」」』
私達が中に入ると金髪の吸血族と赤い肌に燃えるような髪の魔人族の2人がいた。
「あなた達が今日から訓練に入った人達ね。私はフラン・スカーレット。吸血族よ。」
金髪の吸血族が最初に自己紹介を始めた。
「あたしはラミリス・コリーナだ。見ての通り魔人族だ。これからよろしくな。」
そう言って魔人族の女性が手を差し出した。
「こちらこそこれからよろしくお願いします。」
ジャンヌさんがその手を握り、固い握手をした。
「そう固くならなくても良いぞ。なあ、フラン?」
「そうね。友達みたいに接して欲しいわね。」
「そうですか。それでは改めて。ジャンヌ・アメックスです。これからよろしく頼みます。」
「俺はジョセフ・マイナーだ。あんた達とは仲良くやれそうだ。これからよろしくな。」
『フランさんにラミリスさんですね。私は七海有希です。よろしくお願いします。』
「よし!それじゃあ挨拶も済んだし、見学に行くか。」
私達の自己紹介が終わると、ラミリスさんが言った。
「そうね。車は私が運転するわ。」
「ええー。あたしにもやらせてくれよー。」
「だめよ。あなたまだ操縦訓練終わってないでしょ。」
「そうだけどー。……分かったよ。我慢するよ。」
「そうしなさい。それじゃああなた達はラミリスと玄関で待ってて。車を借りてくるから。」
フランさんはそう言って部屋を出て行った。
「そんじゃ、玄関に行こうぜ。」
ラミリスさんも部屋を出て行ったので私達もすぐに後を追いかけた。
[10分後]
私達はフランさんが借りてきたハンヴィーという車に乗って基地の西に向かっていた。
『フランさん、どこに向かっているんですか?』
「海軍区画よ。友人がそこで働いてるから知り合いがたくさんいるの。」
フランさんは顔にうっすらと笑みを浮かべながら答えた。
「おいおい。友人じゃないだろ。」
『え、どういうことですか?』
「ああ、あそこではフランとその他大勢の婚約者が働いてるんだよ。」
「その他大勢とはどういうことなの?」
「あたし達を助けた部隊の隊長の一人に、そいつが助けたフラン含む7人が告白したんだ。全員まとめて娶ってくれ、ってな。それを受けて晴れてフランは婚約者を手に入れたのさ。」
「ほう、それはそれはいい男なのでしょうね。」
ラミリスさんの話が終わったのでふとフランさんを見ると、
「うぅ……。」
真っ赤になっていた。
「い、いいじゃない!家族以外の男の人に優しくされたのはあれが初めてだし、私達を助けてくれたし。」
『愛してるんですか?』
「!!そ、それは、その……うぅ…。」
フランさんは更に顔を赤くしてしまった。
((((うわ、可愛いなこの人。))))
そんなことをしていると港に着いた。巨大な港には、これまた巨大な船が停泊していた。
「!つ、着いたわね!まずはここの艦隊の司令兼海軍司令の所に挨拶に行きましょう!」
『「「「逃げたな(ましたね)。」」」』
「逃げてない!さっさと行くわよ!」
フランさんは車を止めると、急いで建物に入っていった。
フランさんを追いかけていくと、彼女はある部屋の前で待っていた。
「いい。ここにいるのはこの国の海軍の司令官だからくれぐれも失礼の無いように。」
フランさんはそう言って部屋の扉をノックした。
「はい。」
中から男性の声がした。
「フラン・スカーレット三等軍曹、入ります!」
「ラミリス・コリーナ三等軍曹、入ります!」
「どうぞ。」
フランさんが扉を開け、全員が中に入った。
「山本司令。先程連絡した訓練生3名をお連れしました。」
「うん。ありがとう。新しい訓練生を一目見ておきたくてね。なかなか良い顔をしているし、そのうち活躍してくれそうだね。
それで、この後は、”やまと”の見学をしたいんだっけ?」
「はい。」
「そうか。分かった。有賀艦長には俺から伝えておこう。」
「ありがとうございます。それでは失礼します。」
「ああ。頑張れよ。」
私達は部屋を後にし、再び車に乗りこんだ。
「これから私達は”やまと”とか言う船に乗るということでいいのよね?」
「ええ。あそこの島みたいなやつ程ではないけど、こっちの世界の船と比べると桁違いに大きい船よ。」
「それは楽しみね!」
ジャンヌさんが興奮気味にそう口にした。
〈海軍区画 ミサイル巡洋艦”やまと”〉
5分程車が走ると、一隻の金属で出来た大きな船に着いた。
「さあ、着いたわよ。行きましょう。」
外に出ると、船からも制服を着た女性と男性がやってきた。
「来たわねフラン。」
「今日はよろしくね海幸。元気?」
「出番が少なくて暇してることを除けば元気よ。
今日は旦那と一緒じゃなくて新人の案内をしているそうね。そっちの4人がそう?」
「赤いのは私のバディよ。残りの3人が今日来た新人よ。」
「なるほど。
こんにちは。フランのバディに新人の方々。私は有賀海幸。階級は中将で、このミサイル巡洋艦”やまと”の艦長を務めているわ。これからよろしくね。それと私敬語が苦手でね。タメ口で話して頂戴。」
有賀さんはそう言って私達に視線を向けた。
「まずはこの”やまと”の紹介ね。この艦は私達の海軍の中でも最強の軍艦の一つよ。
最も特筆すべきは足の速さね。高出力の水素エンジン4機を積んだおかげで、46ノットという今までの船では考えられない足を手に入れたわ。燃料の補給も水があれば何処でも補給出来るし、武装も強力、彼女の艦長になれて本当に良かったわ。」
「彼女?」
「やまとのことよ。私達の国では船は女性に例えられるのよ。異世界に来たんだし、もしやまとに意思があるなら是非話して見たいわね。」
有賀さんはそう言ってやまとを見上げた。
「さて、それじゃあ中に入りましょう。今日は楽しんでいってね。」
私達は有賀さんに続いて中に入った。
[3時間後]
〈中央区画 宿舎地区〉
ジャンヌ・アメックス
私達はやまとの見学を終え、入浴などを済ませて宿舎の部屋に戻ってきた。
夕食はやまとの食堂でカレーという辛い食べ物を食べた。最初はみんな茶色の液状の物に不安を示していたが一口食べた瞬間に顔が驚きに変わり、私はおかわりもしてしまった。
「明日は自分の武器の選択と、射撃訓練の予定よ。朝6時起床だから今日は早めに休んだ方がいいわ。それと私達もあなた達の担当として着いて行くからよろしくね。」
フランさんはそう言うと自分のベットに入り直ぐに眠り始めた。
ちなみにラミリスさんは既に寝息を立てながら寝ていた。
有希ちゃんもベットに入ると直ぐに寝てしまった。
「ここは良いところね。優秀な士官に兵士、私達とは比べものにならないほど強力な兵器。
本当に仲間で良かったと思うわ。」
「そうだな。正直言ってこんな国相手に勝てる所はこの大陸には無いだろう。」
「私もそう思うわ。
でも、問題は、その事を知っているのは私達だけと言うことよ。
新しく国が現れた事は既に広まりつつあるわ。いずれ他の国も接触を計ってくるでしょう。その時にもし無礼な態度をとったら……」
「……考えるのも恐ろしいな。」
「ええ、そうならないことを祈りましょう。
明日も早いそうだし、寝ましょう。
それじゃあ、これからよろしくね。お休み。」
「こちらこそよろしく。お休み。」
私達はこれからに多少の不安と多大な希望抱き、眠りについた。
次回はこのままでは訓練だけでかなりかかりそうなので時間を訓練終了まで飛ばそうと思います。
出来れば1章のサブタイトル通りそろそろダンジョン出したいです。
ご意見ご感想をお待ちしております。




