第1章1 新天地と窮地
戦闘回です
〈アメックス王国 ディーフ地方 LCAC内〉
フェンリル軍特務派遣軍集団 七海優香 コールサイン:フェアリー
私達派遣軍は航海中に人魚族の人達と仲良くなった事を除くと何の問題も無く目的地であるアメックス王国ディーフ地方についた。港の整備が完了するまで艦隊は近づけないので、揚陸艦からLCACに乗り込み上陸した。
「広々とした草原に、リアス式の海岸…。基地を作るにはいい場所ね。」
「そうですね。」
私の言葉に一緒のLCACに乗ってきた施設化大隊大隊長の宮崎大佐が続けた。
「ここなら文句言われることもありませんし、好きに広げられるってのは良いもんですな。」
「そこら辺は大佐に任せるわ。海軍の為にも、出来るだけ急いであげて。」
「任せてください!3週間で形にして見せます!」
そんなに早く基地ってできるものなのかしら?ゲーム時代ならメニューで一瞬で……ん?
「そう言えば全然使って無かったけど、基地ってメニューを使えばもしかして…。大佐、先に試させてもらってもいい?」
「はぁ。わかりました。」
大佐から了承を得た私はメニューを出した。
「え~と。サポートの施設で必要な施設を選択して。ん~、統合作戦本部、港湾施設、海軍基地、空軍基地、陸軍基地、砲兵基地、海兵隊基地、石油精製施設、製鉄所、教練施設、貯蔵施設、研究施設、兵舎、陸海空各兵器工場、レーダーサイト、整備工場、ハンガー、SAMサイト、ガンタワーっと。こんなもんかな?サイズは全部特大で配置は自動最適振り分けで、地下施設と人口島と埋め立ても許可して、基地外周にはフェンスとゲートとガンカメラとセントリーガンをマニュアル操作で設置して。最後に実行っと。」
すると地響きと共に、海岸と草原しか無かった場所があっと言う間に超巨大な要塞に変貌した。しかもゲームの設定と同じと言うことは、ここはほぼ全自動で動く上に石油や鉄は無尽蔵に生み出されるということだ。
「なに…このチート」
私は愕然としつつつぶやいた。そして私の横で宮崎大佐と施設化の面々が崩れ落ちていた。
「そんな…こんな事って……」「これでは…私達の存在意義が」
「み、皆元気出して!必ずまた出番があるから!」
私はそう励ましたが彼等の顔は晴れなかった。
「と、とにかく基地はできたから艦隊と本国とミハエル王子に連絡を。」
私はまず派遣海軍司令の山本正之大将に連絡をとった。
「メッサー、こちらフェアリー。聞こえる?」
《フェアリー、こちら”あかぎ”のメッサーです。良く聞こえます。》
「メッサー、港湾施設の設営が完了。至急こちらに来て。」
《…すいません。無線の調子が悪いようです。港がもう出来たと聞こえたのですが……》
「間違ってないわ。メニューを使ったら1発だったわ。3個艦隊が入っても余りある程の港ができたわ。」
《なる程、それが使えるなら納得です。1時間で其方に着きます。陸で会いましょう。》
メッサーこと山本大将との交信を終え、本国にいるミーシャ・ホーキンス大将に連絡を取った。
「ホークアイ、こちらフェアリー聞こえる?」
《こちらホークアイ、どうしたのフェアリー?》
「空軍基地が完成したわ。滑走路が5本に管制塔が5本ハンガーは数え切れないわ。」
《あなた達は今日現地に着いたのよね?おかしくない?》
「メニューが使えたのよ。」
《それなら納得ね。それにしても、どんだけでかいのを造ったのよ。派遣空軍の全機をその基地だけで運用出きるわよ。》
「詳細は後で送るけど研究施設とか教練施設も造ったからこっちに来るときに研究者や新兵を輸送機で運んで来て。」
《あの少女達もですか?》
「ええ、彼女達の訓練をしてるSBUも一緒にね。」
《わかりました。明日の正午にはそちらに着けるでしょう。》
「わかったわ。陸軍を連れてくるのを忘れないでよ。」
ミーシャとの通信を終え、ミハエル王子に伝える為に護衛の4名のデルタフォースに連絡を取った。
「サンドマン、こちらフェアリー、聞こえる?」
《こちらサンドマン良く聞こえます。》
「近くにミハエル王子はいる?」
《はい。隣にいます。》
「それじゃあ基地の設営が完了したと伝えてくれる?」
《はっ。》(王子、七海総帥からの連絡です。基地の設営が完了したと。) (……早すぎないかい?) (私に言われましても…) (ちょっと変わってもらえる?) (どうぞ。)
そんなやりとりが無線から聞こえてきた。
《あーこれで聞こえるかな?》
「聞こえますよ。」
《おお!本当に聞こえる!基地の事だけど、近いうちにそっちに父上と兄上に貴族達を連れてそっちに行くよ。》
「……何か問題が?」
《設営とその地域の統治の許可は父上が出したのだけど反対する人が多くてね。彼等を黙らせる為にも見せたいんだ。》
「そう言うことでしたら構いませんよ。」
《そうか!ありがとう!ではまた。》
……迎賓館も造っておきましょう。
[3時間後]
艦隊が到着し部隊の配置もあらかた終了したので、一緒に”あかぎ”に乗ってきたエミリーさんと海兵隊司令のアレン・ストルーカー大将と近くの街に行く部隊の編成について話あっていた。
「ここの部隊をギルドに登録って出きるんですよね?」
「ギルドに軍団登録すればいけると思うけど。多くても100人位よ。5万人以上なんて聞いたこともないわ。」
「それなら、50人の2個小隊に戦車小隊をつければ良いだろう。となると、使用する車両は10式戦車4両、LAV-25歩兵戦闘車4両、HMMWV 7両、MCV 2両って所か。」
「これで総数146人か。車両については魔道具のごり押しでいきましょう。エミリーさん、軋轢を少しでも減らす為に着いてきてください。」
「ええ、わかったわ。」
この時私達は街があんな事になっているなんて知らなかった。
〈アメックス王国 フィールの街 冒険者ギルド〉
ギルド職員:ニーナ・ヴァレン
調査船団が行方不明になってから1ヵ月以上がたったが依然として何の手掛かりも見つかっていない。
「どこにいるのよエイミー…。」
彼女と旅をしたことのある私にはどうしても悪運の強い彼女が死ぬとは思えなかった。
「この依頼の受付をお願いします。」
そう言われてやっと私は冒険者が来ていた事に気づいた。
「はい、こちらの依頼で宜しいですね?」
何時もと変わらない日常が過ぎようとしていたときその知らせが届いた。
「魔物の襲撃だ!!戦える奴は全員東門に来い!オーガが3000はいるぞ!!」
「「「「「何だと!!」」」」」
その報告を聞き、冒険者やギルド職員が飛び出していった。
私も愛用の弓を持ち東門の城壁を登り矢をつがえた。
「来たぞ!弓持ちとバリスタ持ちは攻撃を始めろ!!魔術師は準備でき次第撃て!」
その言葉に一斉に矢と巨大バリスタの弾が放たれた。矢はオーガに降り注ぎ、バリスタがオーガを貫いたがオーガの群れの歩みは止まらない。
「こいつを食らえ!!」
数人いる魔術師がファイアボールを放ち、10体程のオーガが消し炭になったが。
「数が多すぎるわ!このままじゃ…」
その時東の森から周りの物の倍近い大きさのオーガが現れた。
「くそ!異常種だ!!」
「もうだめだ!この状況で更に異常種なんて。」
冒険者達の間に絶望が蔓延したとき、それは突然起こった。
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
腹の底から響くような音がしてすぐにオーガの群れの中央でファイアボールとは比べ物にならない爆発が起こった。
「一体何が?」
音のした方向を見ると金属の塊の群れが砂煙を巻き上げながら向かって来ていた。
〈アメックス王国 フィールの街北 フェンリル海兵隊第8機甲師団第33戦車大隊『アイアンホーネット隊』 アイアンホーネット・アクチュアル 車内〉
フェンリル軍特務派遣軍集団 七海優香 コールサイン:フェアリー
「不味いわね。」
街の状況に私は思わずそうつぶやいた。
《あれはオーガよ!しかもやたらでかいやつは遥かに強力な異常種よ!!何でそんなのが街の近くに!?》
「それは今は後回しよ!アイアンホーネット(10式戦車 機動戦闘車のコールサイン)、こちらフェアリー、制圧射撃要請、目標、オーガの群中央、弾種榴弾、第1射以降は弾種をキャニスター弾に変更し継続して制圧射撃を行いつつ、街と群の間に壁になるように車両と歩兵を展開させろ!それ以降は各自の判断で交戦せよ!!第1射、撃てぇ!!!」
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
私の命令を受けた10式戦車と機動戦闘車が主砲を発射した。
発射された榴弾は命令道理オーガの群の中央付近で爆発し、一気に異常種を含む400近くのオーガが肉片に変わった。
「命中だ良くやった!次だ!フェアリーより全隊員!これより街とオーガの間に突入する!停車と同時に機銃手以外は降車しオーガに対し、攻撃を行え!機銃手!お前達は歩兵の支援をしろ!ワスプ(LAV-25 HMMWVのコールサイン)、こちらフェアリー、発砲を許可する!敵を蹴散らせ!」
ドドドドドドドド!
グォーーーーーー!
ポンポンポンポン!
LAV-25の25mm機関砲が火を噴き、大量の矢のような弾がまき散らされオーガの肉を穴だらけにし、10式戦車とLAV-25の砲塔上部につけられたM2とHMMWVに搭載されたGAU-19から大量の50口径弾がオーガの肉をえぐり取り、一部のHMMWVに搭載されたMk.19の擲弾がオーガを肉片に変えた。
「よし!全車停車!全員降車しろ!オーガを近寄らせるな!!」
私は10式戦車に搭載されたGAU-19をオーガに向け射撃を開始した。
アイアンホーネットは陸上自衛隊戦車教導隊第3中隊の事です。本物は10式戦車ではなく、90式戦車を使用しています。
次回はギルドに登録して初依頼と初チンピラの予定です。
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