魔力
本日二話目
やはりと言うか、カイルが確かめた時点で既にゴルタールは逃げていたのかもしれない。
先ほどリーチェが言った『決定的な証拠がないから』という言葉を考えるならば、今を逃せばゴルタールを捕まえる事が出来ないかもしれない。拘束した何人かが自白すれば別かもしれないが、おそらく誰も喋らないような気がする。
いや、ダンストンおよび他の連中が自白したとしても、ゴルタールはしらばっくれそうだ。
「まずいわね……絶好の機会なのに……」
「何よ……状況証拠で十分じゃない。あたしのカイルをボコっただけでも万死に値するわ。いいえ、むしろ死刑でも温すぎるわ!」
「そうもいかないのよ……。ゴルタールはあれでも貴族なの。
だから決定的な証拠がないと、現行犯以外では捕まえられないのよね」
え? それじゃ……あいつらを捕まえたって、何の意味もないの?
とカイルは展開が推移しすぎてついて行けない。
「あんなのが貴族ですって!?」
「ゴルタール・ライラリス。爵位は低いけれど、れっきとした貴族よ。
いいえ、正確には貴族に列せられたと言った方が良いかしら。もとは平民だったけれど、十数年前に行われた、王城の改装の時、莫大な資金を提供した事で士爵位を与えられたのよ。
もっと言うなら『グリードリ』商会の各都市の支部長は全員貴族よ。だから潰そうと思っても潰せないのよ」
そ、そんな……それじゃ……。『グリードリ』商会の権威を伴った巨大さにカイルは戦慄する。
「ちょっと待ちなさいよ。あんなやつが貴族ですって? じゃあ、あいつに暴言を吐いただけでも死刑にされるというの?」
「――誤解があるようですが、その程度では死刑にはできませんよ。
暴言程度で死刑になるのは、陛下と大公閣下くらいではないでしょうかね」
「え? 本当に? …………あっ、本当だ。びっくりしちゃったじゃないの」
あっ、検索魔法を使ったんだな、と事情を知っているカイルならばわかるが、あれでは聞いている方は混乱してしまうのも無理はないと思う。
その証拠と言うか、カリンの不思議な物言いにリーチェは首をかしげている。
「まぁ、いいわ……。それよりここの出口はあそこだけなのよね?」
「あるにはありやすが、ここから見る限りでは物で遮られてその機能を果たせるとはおもいやせんな。他は俺の部下が抑えていますし、まず簡単には逃げられないと思いやすぜ?
最初からいなかったと考える方が自然ですな?」
リーチェは大男と話し合いっていたが、それはカイルにとっては望まない、最悪な方向に進もうとしていた。
それに異を唱えるべく、カイルは最後の力を振り絞って声を出そうとするも、口から音が出てこない。
『出口が一つしかないなら、まだゴルタールはこの建物に潜んでいるよ!』
それは言葉にならないカイルの嘆きだった。
「――そうね。カイルくんには悪いけど、ゴルタ――」
「待って! ゴルタールはまだここにいるわ!」
カイルの想いを代弁したかのように、カリンの口からその言葉が飛び出した。
「――どうしてそう、断言できるの?」
「逆に聞くけど、どうしてあたしがこの場所を――カイルがここにいるとわかったのか不思議に思わない?」
「えっ? カリン、貴女はここに捕らわれている所を見たのではなかったの? だから私たちを案内出来たのではなかったの?」
カリンは検索魔法でゴルタールの居場所を確かめたのだろう。フルネームを知り得た事で、本人と確定したはずだ。
「あたしの魔法は探知魔法よ! だからカイルの場所がわかったの」
探知することも可能。だから嘘は言っていないというところか。その事からリーチェたちを完全に信用していないことがカイルには分かった。
いい人だと思うのにな……。
「探知魔法……。そんな便利な魔法が――」
「だからゴルタールの居場所もわかるわ。リーチェさんがあいつの本名を教えてくれたから特定は簡単だったわ。
あいつはあそこよ!」
そう言ってカリンはどこかを指差したのだろう。寝そべっているカイルにはそれがどちらの方向なのかすらわからなかったが。
「何もないわよ……。カリン! あなたは巫山戯ているの?」
「巫山戯てなんていないわ。魔法よ、魔法。あいつら姿隠しの魔法を使っているわ!」
「なんですって!」
カリンの言葉を聞き、リーチェの傍らに控えていた大男が動いたのがわかった。「ふんっ!」と気合いを込められた声と共に、大地が震えたような気がした。
その後すぐ、カキンッという音が鳴り響き「ゴルタール!」というリーチェが声を発した。
「カ、リン、ちゃん……おこして」
カイルの願いに応え、カリンは優しく抱き起こす。
視界に飛び込んできたのは、数名の男とゴルタール。
姿隠し――いつの間にか、いなくなっていたのはそう言う事か。ゴルタール本人か周りの者が使ったかは定かではないが、その効果は途切れ、姿を衆目に晒していた。
それと近くに突き刺さっている槍が異彩を放っている。
大男は先ほどそれを投げたのだろう。甲高い音がしたという事はその攻撃を防いだということだが、それは地面に突き刺さるほどの威力を防げる護衛がいたことに他ならない。
「やれやれ……。見つかってしまったのぅ」
「姿隠し……。なるほど、確かにカリンが言った通りだったようですね。
突然現れておいて、今ここに来たなどとは言わせませんよ、ゴルタール」
「ふむ、まあ、流石にその言い訳は無理のようじゃな」
絶体絶命という状況にも拘わらず、ゴルタールは焦りを感じさせない自然体であった。
「つまり貴方がこの一連の騒動の大本と言う事で、よろしいですね?」
「違う、と言ったら信じてくれるのかね?」
「当然信じませんよ。そもそも絶好の機会ですので」
ジリジリとリーチェ率いる兵士たちはゴルタールとの距離を縮めていく。
しかしゴルタールは逃げる訳でもなく、平然とそれを待ち構えていた。
「まさか、平民相手にした事だから助かる、とでも思っているのですか?」
「そんなことは思っておらんよ。
領主軍の中に『嘘を判別する魔法』を使える者がいると聞く。だとしたらこれを機に、わしが怪しいと思っていた全ての事を清算するつもりじゃろ?」
嘘を判別するとはどういう事なのか、カイルにはわからないが、ゴルタールにとって後がないと言う事だけは理解できた。
「よく知っていましたね。流石、と言うべきでしょうか?
いえ、秘匿していた訳ではありませんから、あなた程の立場なら知っている方が自然ですかね?」
会話を続けている間にも包囲する様に、その距離は少しずつ縮められていた。それだけではなく、唯一の出入り口の扉は領主の兵隊によって既に抑えられていた。
これでゴルタールは万策尽きた、とカイルは気を緩めてしまった。
「さて、素直に投降してくれると互いのためにもなると思いますが?」
「ほっほっほ。――何故じゃ?」
先ほどまで温厚な表情を浮かべていたゴルタールが、その言葉と共にまるで愚か者を見るかのようにリーチェを見下した。
「何故? そんなの決まって「やれぃっ!」る……えっ?」
リーチェの言葉を遮りゴルタールは号令と思わし声を発した。それが何を意味していたのか――それは図らずも、直ぐに判明してしまった。
攻撃の合図だったのだ。
「バカなっ!? 攻撃魔法……だと……」
リーチェの傍に佇む大男は驚愕の声を上げていた。他の兵隊もどよめいている。
攻撃魔法――100人に1人が使えればいいとされる魔法。それだけに使えるだけでエリートとされ、どんな種類でも国軍にすら所属できるという希有な才能。領主の私兵ですらわずか数人しか存在していないだろう。
だから驚くのも無理はないことだ。
もちろん今居る兵隊の中にも使える者がいるかもしれない。
けれど攻撃魔法にも質がある。ただの火を矢として飛ばすだけの魔法から、一見同じように火の矢なのだが、標的触れた途端大爆発を起こす魔法も同じ攻撃魔法なのだ。
伝説では地を割ったり、天より雷を落としたり、太陽の如き灼熱を生み出したりする魔法もあったらしいが、それらは皆等しく『攻撃魔法』とされている。
そして今も残っている、ゴルタールの配下の内――二人も攻撃魔法の使い手がいた。
彼らは魔法を使うため精神を集中させている。即時発動でなかったのは救いだろうか。
一人は地面に両の手をつき、土の塊をボコッボコッと生み出し続けている。土塊の大きさはカイルの身長くらいだろうか、土から産まれたというのに手足が生えている。それでいて卵型という珍妙な姿をしていた。
あれはゴーレム!?
カイルは自分の目が信じられなかった。ゴーレム使いがゴルタールの配下にいること自体が理解できなかった。
あの男が使うゴーレム魔法がどのような性能を秘めたゴーレムなのかはわからないが、ゴーレムというだけで壁として使えるのだ。だから攻撃力が皆無であっても攻撃魔法として認識されている。
何より国に1人いるかいないかという極めて希な魔法使いなのだ。ゴルタールなどに使役されている意味がわからなかった。
もう一人は頭上に火の玉を浮かべ、少しずつ数を増やしている。
相当な攻撃性を秘めているようだが、ゴーレム使いと比較すれば格が数段下がる。しかし破壊力という面においてはそれを上回るだろう。
それに危険を感じた兵士たちは魔法を撃たせまいと、ゴルタールたちに向かって駆けだしている。
そこで卵型のゴーレムが立ちふさがった。
兵士たちの武器を使った攻撃を受けてもビクともせず、隙があれば武器を掴み殴りつけている。攻撃魔法使いに近づく事も出来ず、まさに『壁』その物であった。
「破滅するのはわしじゃなく、おぬしたちのようじゃな」
勝ち誇ったような笑みを浮かべ、その様子を眺めるゴルタール。
それも当然だろう。兵士たちはあらかた地に倒れ伏し、頼みの綱はあの大男と数名ばかりとなっていた。ダメージ自体は大した事はないが、鎧を着ているため直ぐに立ち上がる事など出来そうになかった。
彼らが復帰するより前にあの火の魔法は発射するに違いない。
その時カリンが耳元で囁いた。
「カイル、よく聞きなさい」
最期の言葉だろうか。カリンの声を聞きながら死ぬならば悪くはない、とカイルは考えて耳を澄ます。
「魔法は魔力あってこそよ。疲れる原因は魔力の枯渇なの」
「え゛っ?」
掠れた声がカイルの口から零れ出た。もう声など出ないと思っていたが、予想外の言葉を聞き、身体が限界を超えてそれを発してしまったのだろうか。
「時間がないわ。カイルの分類魔法であの火の魔法――『火炎弾』の魔法から魔力を捨て去るのよ!」
魔力を分ける? そんな事が可能なのだろうか。しかし考えている時間はもはやない。出来ると思って、やるしかない。
カイルは先ほど自覚した視認する能力を発現させるため、カリンの言葉を念頭において、感覚の全てを分類魔法に集中させた。
すると――。
『火炎弾』構成魔力 威力:制御――29:14
という文字が視界に映った。
カイルは『威力』という危険な数値を『制御』に振り分けた。
その成果は直ぐに現れた。
カイルが干渉した火の魔法、それが数値を下げるごとに大きさと輝きがみずぼらしくなっていく。それでも火は消えるような事はなかった。それどころか先ほど以上に安定した力強さを感じさせる物になってしまった。
「ん?」
魔法を弄ったせいか、火を扱っていた男が疑問の声を上げた。しかしどこか満足そうに頷き、より一段と気合いを込めた様に見えた。それに併せて火は大きくなっていく。
『火炎弾』構成魔力 威力:制御――16:43
男は『火炎弾』に更なる魔力を込めていた。
これでは意味がない。何度『制御』に魔力を移したところで、その都度込められてしまえば無駄に終わってしまう。
カリンが魔力が魔法の根本だと言っていたが、魔法は使うと疲れるのはカイルも経験から理解している。
あの男と我慢比べは互いに魔力を消費させるだけに過ぎない。いや、消耗しているのはカイルだけだ。『火炎弾』自体から魔力は失われていないのだから。
これでは駄目だ! カイルはこの分類の仕方は今は適さないと感じた。
だが既に威力が30となりかけていて、危険域に達している。
カイルは消耗戦だとわかりつつも『制御』に振り分けるしかない。魔力が尽きるまでにどうにかして打開策を考えなければいけなかった。
何回その行為を繰り返しただろうか。10回までは数えていたが、その先はそんなことをしている余裕すらなかった。
『制御』の数値が増える度『火炎弾』に注ぎ込まれる魔力、『威力』の高まりが少しずつ早くなっていた。それに焦りを感じ、数えるどころか打開策を考える暇などない。
「バーンライトよ、いつまで遊んでおるつもりじゃ」
兵士たちは既に4度ほど立ち上がっていた。本来であれば1度も立ち上がれず全てが終わるはずだったのだ、ゴルタールも不思議に思うだろう。
「何か変なんですよね……。でも、この魔法は自信があります。何でか知らないけど、王宮魔法兵、それの筆頭の魔法すらコイツは上回る自信がありますよ」
「ふむ……。まあ、あまり大規模にするなよ。小僧まで殺してしまってはいかんぞ?」
わかってますよ、と『火炎弾』の使い手――バーンライトは余裕たっぷりに頷いた。
それがカイルには死神の微笑みに見えた。
『火炎弾』構成魔力 威力:制御――20:852
『制御』の数値が250を超えたあたりから、火は燃えさかり『炎』と呼ぶに相応しい物になり、500を超えて揺らぐ事ない球状の物へと変わった。
注ぎ込まれる魔力も5ずつに変わり、今は一度に10増えている。これ以上増えた場合カイルの操作では間に合わなくなってしまう。
もう駄目だ、カイルは無駄な抵抗だったのだと諦めてしまった。ゴルタールは自分を巻き込むなと命じていたが、あれが放たれたら自分以外の命は尽きると感じていた。
それでは先ほど死を覚悟したときと何ら代わりはない。ならば自分も共に死のうと決意した。
どうせ死ぬなら焼けるという苦痛を味わいたくない。ここにいるのは自分だけじゃない。カリンちゃんだっているんだ、そんな目に遭わせるわけにはいかないんだ! とカイルはある事を決断した。
――『制御』ではなく『威力』に全てを振り分ける。
それが人生最後の足掻きだと全神経を集中させた。自分に眠る魔力という物を意識して――。
『火炎弾』構成魔力 威力:制御――332:652
「うおぉっ!? 何だこれはっ!?」
バーンライトは急激に火力が高まりつつある『火炎弾』に思わず焦りを覚える。自分が想像した以上の猛り見せ、思わず魔法の制御を手放してしまいそうになった。
こんな威力では捕獲対象である、カイルという子供すら焼き殺してしまいかねない。
「な、何をやっておるっ!! そんな大規模な魔法が必要か!? わしらにまで被害が及ぶじゃろうが!」
「す、済みません。なんとかします」
お叱りを受けてしまった。先ほど自慢してしまっただけに、これでは減点対象となってしまうだろう。バーンライトは舌打ちをする。
今日は色々とおかしい。
いつも以上に自分の理想とする形に『火炎弾』を作り出せていた。中々力が込められなかった事を除けば、会心の出来だと思っていた。
にもかかわらず、この有様だ。
理想と思っていた形が突如崩れ、思わず制御を手放しそうになるくらいの強大な力がどこからか流れ込んできた。
――一体どうなっているんだっ!?
バーンライトはかつてないほど必死に『火炎弾』の魔法に集中する。一度作り出した魔法は自分の意思で消すという事は出来ない。何かしらして使わないといけないのだ。『火炎弾』ならばどこかへと撃ち出す必要がある。
けれど攻撃魔法をむやみやたらに放つ訳にはいかない。これほどの威力ならばなおさらだ。
したがってバーンライトが打てる手は、火の弾の数を増やし一個ずつの威力を落とす事だけだった。
「おい、まだかっ!?」
遅々として魔法を放たないバーンライトに焦れたのか、ベッケラーが急かしてくる。
ゴルタール様に仕える仲間、いや親友とも言える存在だ。傘下に収まった理由が共に借金と言う事から意気投合。後に相棒と呼べる間柄にもなっていた。
彼が自分の盾となってくれているから、こうして全身全霊をかけて魔法に集中出来る。ありがたい存在だ。
だがそんな彼も『エッグマーン』の魔法制御に疲れたのか、振り返った顔には汗が滲んでいた。
普段ならば彼がこんな短時間に疲れる事はない。正規軍を相手にしたとしても、もっと余裕があるはずだ。
ゴーレムなどの生成系魔法は生み出すときに身体が疲労する。だから少しずつ作り出し、膨大な数で蹂躙するのがゴーレム使いの本来の戦い方なのだ。壊されるか、主が自壊を命じるまでは滅びないのだから、ゴーレム魔法の使い手の戦闘は楽な物だ。
そんな彼が疲れなければならない理由――。
それはあのリーチェとか言う女のせいだ。
あの女は化け物かっ!? 素手でベッケラーの『エッグマーン』を砕いてやがる。本当に人間なのか?
もちろん人間だというのは見てわかる。ただ人間業じゃないだけだ。綺麗な顔をしているだけに、その暴れぶりに戦慄してしまう。
それが魔法による物なのは、冷静になってみればわかる事だった。自己を高めるという珍しい種類の魔法だ。ベッケラーのゴーレムを作り出す魔法ほどではないが中々目にすることは出来ない物であった。
だが、ここで問題なのはあの女の魔法がベッケラーにとって、天敵、ということだった。
『エッグマーン』自体は硬いという以外はそれほど攻撃力を持たないゴーレムだ。その代わり土で作る、量産に適したゴーレムの中では防御力は最硬と言ってもいい。歴史上不可能だったと言われる物を防ぎきったのだ。間違いなかろう。
それをあの女はいとも簡単に砕いている。あれを自分が受けたなら……と思うと身体が震えてしまう。おっといけない、今は制御に集中しないと!
頭上に浮いている『火炎弾』の数は100を超えているのではないだろうか。バーンライトはそれ以上の数え方を知らない。だからどれほど増えているのか理解出来なかった。
もともとこの魔法は10個の火を生み出す。それを10回以上2つ分けている。
考えるのも馬鹿らしい。それほど無数の火がバーンライトの上で何かを焼き尽くすのを待っていた。
これら1つ1つが、あの女を含め、自分たちを敵に回している奴等を殲滅するだけの威力を秘めている。いや、自分たちにすら被害が及んでしまうだろう。
ゴルタール様に声を掛けられたときの『火炎弾』を撃ち出していたら、ここら一帯消滅していたかもしれない。もちろん自分ごと……。
これだけの数を分けて初めてその事に気付き、額から汗が流れ落ちてくる。
まずいな……制御しきれなくなってきたぞ。バーンライトは苦肉の策として多くの『火炎弾』を頭上の――建物の屋根に向けて放出した。全てを焼き尽くしたのか、残骸が落ちてくる事もなく、策が成功し大分楽になった、とほっと一息をつく。
きっとお叱りを受ける事だろう。この様な事をしては人目を集めてしまう。だが死ぬよりマシだ。ゴルタール様の『透明化』の魔法もあるし、きっとわかってくれるはず。
とバーンライトは減給を覚悟し、あとは役目を果たすだけ、と気合いを入れ直す。
そのとき地震が起きた。グラグラと揺れ、まともに立っていられない。
これでは砲撃地点が定められないと舌打ちをしようとする……が、出来なかった。それどころか足を踏ん張ろうとしても力が入らないのだ。
次第に意識も朦朧としてきた。
そこに来てバーンライトはようやく自身の状態に気が付いた。これは地面が揺れているのではなく、自分がふらついていただけなのだと。
――魔法の使用過多、それによる命の危機。
それがバーンライトを襲っている物であった。
あっ、駄目だ。そう思った瞬間バーンライトは全身の力が抜け崩れ落ちてしまう。それと同時に『火炎弾』が制御を外れたと理解する。
やがて視界が白に染まり、そのままバーンライトは意識を閉ざした。




