第四話
第四話
制服姿に戻った笑里とモルモットくらいのサイズの天使、テンテンはレンガ敷きの道を仲良く並んで歩いていた。
……並んで歩くと言っても、テンテンはふよふよと飛んでいたわけなのだが。
笑里は物珍しそうにキョロキョロと周囲を見回している。
レンガ作りの建物がほとんどで、木造の家は見当たらない。道いく人の肌色は真っ白から真っ黒まで、髪の色も真っ白から真っ黒まで、おまけに水色や緑の髪の人までいる。
「ねぇ、テンテン。ここって外国?」
「外国っていうのもなんだな。けど、日本じゃないな」
「さっき、ここは地球の裏側だって言ってたじゃない? じゃあ、ブラジル?」
「そういう意味じゃないんだな……」
のんきに話している笑里たちの脇を、馬車が追い抜いていった。
「わあ、馬車だぁ! テンテン、私、あれに乗りたい!!」
「乗りたいって言ってもムリなんだな」
「なんでよぅ。あ、お金がいるの!?」
「お金は、まあ、持ってなくちゃいけないな」
「ほかになにがいるの?」
「貴族の称号なんだな」
「貴族ぅ!? なにそれ! 中世ヨーロッパなの、ここは!?」
「次元が違うけど、まあ、似たような世界観だと思うな」
ぽかんと口を開けた笑里のそばを、鎧姿に剣を携えた男が通りすぎる。
通りを見渡してみれば、モネの絵から飛び出してきたかのような服装の男女や、ローブをまとって杖を持った老人や、剣を腰に下げた男女などが行き交っている。
「……えっと、コスプレ?」
「違うんだな。ガチマジなんだな。マジカルランドは剣と魔法の国なんだな」
「RPG! 私、お姫様になりたい!!」
「……たぶん、RPGでも、お姫様になるゲームは少ないんじゃないかな。それに、笑里は魔法少女なんだな。転職不可だな」
笑里は両手を握りしめて叫んだ。
「労働基準監督所に訴えてやる!」