第二話
第二話
気がつくと、両足はしっかり硬い地面を踏みしめていた。
両手を見下ろすと、死んだときの制服のままだ。
「ここ、どこ?」
「マジカルランドだ!」
笑里がつぶやいた言葉に背後から答えがあった。
びっくりして振り返ると、ティーカッププードルくらいの大きさの天使がふよふよと浮いている。
「あんた……」
「あんたじゃない! テンテンだぃ!」
天使は真っ白な羽をパタパタさせながら胸を張ってみせた。
「で、あんたは知ってるの? ここ、どこか」
「人のことをあんたって言ったらイケないんだぞ!」
「あんた、あんた、あんた、あんた、あんた、あんた、あんた、あんた……」
「もう! もういいよ! わかった、あんたでいいよな!」
「で、テンテン。ここ、どこ? マジカルランドって遊園地?」
名前で呼べるんじゃないか〜!とひとしきり怒りながら飛び回り、やっと落ち着いたテンテンが説明する。
「ここは笑里たちの世界の裏側! こちらとあちらは相似型! でも相対型! わかった?」
「全然わからないけど、ここが地球じゃないことはわかったわ」
「ちがう、ちがう、ここも地球なの! 裏側の地球な!」
両手と羽をパタパタさせながら叫ぶテンテンの言葉を、笑里は耳をふさいで防ぐ。
「むずかしい話はいらなーぃ!簡単に言ってょ」
ふーっと深いため息をついてから、テンテンは目の前に建っている建物を指差した。
「ここが今日から笑里が暮らす『スマイルカフェ』だな」
「カフェ? で暮らすの?」
「そうだな。カフェに住み込みで日銭を稼ぐんだな」
「そんな簡単に言わないでょ!」
「笑里が簡単に言ってって言ったな」
「話がちがーう! だいたい、私、コーヒーなんか淹れたことないょ!」
「紅茶カフェでもいいんだな」
「紅茶もないょ!」
テンテンが『なに、この子。女子力ひくーい』みたいな目で笑里を見る。
「とにかく、カフェなんかむり! 私、ふつーの女子高生なんだょ!? 資金繰りとか原料調達とかメニュー採択とか、そうだ! 調理師免許もとらなきゃ! この店舗の規模ならフロアに二人は欲しいから、バイトを雇って……」
ブツブツと、カフェのオープンに向けた策を練り始めた笑里の背中に、テンテンがポツリとつぶやいた。
「……やる気まんまんなんだな」
こうして魔法少女・スマイルエイミーのスマイルカフェが誕生した。