↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君だけが俺をユイと呼ぶ  作者: shiyushiyu


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/54

第47話 タイムカプセル

「おーし。んじゃタイムカプセル埋めに行きますかー」

 電車から降りた落合が伸びをしながら言う。

 懐かしい道のりを歩きながら俺は、白石の顔を盗み見たがその表情からは何も読み取れなかった。



 昨日のあの出来事が嘘のようだ。

 おそらく原因は俺の隣だろう。



 ルンルン気分の吉岡がいる。

「私もタイムカプセルを入れたんだから参加するのは当然でしょ?」

 これが吉岡の言い分だ。

 ピンクの缶には、俺の写真がどっさりと入っていた。

 これ見よがしに、みんなの目の前で入れていた。



「代わりに私たちが入れてあげるって言ったのに」

「あら? 白石さん居たの? 私の存在感が強すぎて気がつかなかったわ」

 相変わらず仲悪いなこの2人。

「大丈夫か?」

 落合が塩田に声をかけている。

「何が?」

 何かあるのかと思ったが、塩田はキョトンとしている。

「いや。缶に入れる中身決めたんだなって思って」

「うん! とってもいい物」

 にこりと塩田が笑う。

 よっぽどいい物なんだな。

「頑張ったな」

 どこか落合が寂しそうだな……


 ●


「おい落合?」

「あん?」

「お前、体調悪いのか?」

「悪くねーよ?」

「本当か?」

「本当だよ。俺はいつも通りだから気にすんな」

 まぁ本人がそう言うなら、これ以上は何も言えないけど……


「どうしたの?」

 佐々木が俺の近くに来る。

「いや。なんか落合の様子が変というか、いつもと違う感じがしたから……」

「へー。ちゃんと周りを見れるようになったんだ?」

「は? どういう意味だ?」

「心に余裕ができたんだね」

 にこりと微笑まれるが、言っている意味がよくわからん。

「ま。とりあえずキミは落合のことは気にしなくてよろしい」

 ポン。と背中を叩かれたけど、なんだか素直に喜べない。


 ●


 川辺の一箇所に俺たちは着いた。

 落合が事前に自治体とかに許可を取っていたというのだから、頭が上がらない。

「なんだか落合が完璧人間に見えてきた」

「実際よくやってくれてるよね?」

 塩田が曖昧な笑い方をする。

 珍しい。

「? 何かあったのか?」

「何かって?」

「塩田がそういう言い方をするの珍しいから」

「んー。素直に喜べないだけかな? 落合くんっていっつも私のことからかってくるし」

 そういえばそんなことを言っていたな。

「からかわれる理由ってなんなの?」

「知らないよそんなの。私が小さいからじゃない?」

 確かに塩田の背は低いけど、そんなことでからかうもんなのか?

「とにかくいつもからかってくるから、素直に喜べないの」

 確かに落合って、おちゃらけキャラというか人のことを茶化すことが多いよな。

「ところで朝倉くんはタイムカプセルに何を入れたの?」

「あぁ。俺は昔よくやっていたゲームを入れたんだ」

 そう言って白石を視界の端で、盗み見たがその表情に変わりは無かった。

 俺の言葉が聞こえなかったのか、それとも気にしていないのかは分からないが。

「そういう塩田はどうなんだ?」

「私? 私はマフラーを入れたよ」

「マフラー? 何で?」

「もう使わないからねー」

「まだ使える物なのか?」

「だねー。ただもう必要ないだけ」

 なんだかそう言う塩田の顔が寂しそうに見えた。

「勿体ないなー」

「もしも私がマフラーを渡したら受け取ってくれた?」

「そりゃあ受け取らない理由がないよ」

「そうだったんだ……」


 ●


 俺は、穴を掘る手を止めた。

 一瞬。

 心残りが出てきた。


 もうあの、ユイって名前を付けたゲームは出来なくなるのか……

 そういえば、あのゲームのこと白石にまだ聞いてなかったな。


 俺は――

 知らないことだらけだ。


 そう思って辺りを見渡すと、俺と同じようにみんなの手が止まっていた。


 みんなそれぞれに思うところがあるのか……


 落合はみんなとの写真。

 佐々木は文化祭の出し物。

 吉岡は俺の写真。

 塩田はマフラー。

 白石は何を入れたんだろう……


 そう思って白石を見ると、目が合った。


「内緒」


 そう言われた気がした。


 ●


「ゲーム埋めたんだ?」

 埋め終わると白石が声をかけてきた。

「聞いてたのか」

「聞こえちゃったの」

「絶対聞いてただろ」

「何で私のこと疑うかなー?」

 白石はみんなの前だから、これでもセーブしてるのが分かる。

「今度。俺たちだけのタイムカプセルを開けに行かないか?」

 白石が口を開くその瞬間――

「おいおい痴話げんかはよせよ?」

 落合が茶化してくる。

「ちょっと! はる様の隣を取らないでくださる?」

 俺と白石の間に吉岡が無理やり入り込もうとしてくる。

「あーら吉岡さん。いたの?」

 あ。これは朝の仕返しだ。

「来年はさ」

 塩田がそっと声をかけてくる。

「ん?」

「マフラー編んであげる」


 頬を染めながらそう言って笑顔を見せる塩田の表情が。

 俺にはとても寂しそうに見えた。


「もうすっかり寒いし、帰りにマフラーでも買おうかな」

 俺と塩田の話しを聞いていたのか、落合が茶化してくる。

「もぅ! 落合くんにはクリスマスプレゼントあげないから!」

「なに! 頼む! 俺にもサンタさんしてくれ」

「気が向いたらね」

 みんなが笑いながら2人のやり取りを見届けていた。


 夕陽が川に反射して、俺たちを映す。


 俺はきっと。

 大人になってもこの光景を忘れないだろうな――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。