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君だけが俺をユイと呼ぶ  作者: shiyushiyu


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43/54

第43話 返信

 白石からの返事がないだけで、俺はありとあらゆることが手につかなくなった。 

 ずっとそわそわして、常に上の空な感じだ。

 今までも何度かはこういうことがあったから、本当は気にしなくていいんだろうけど、最近白石に避けられている気がするから、気になってしょうがない。



「んなの気にしててもしょうがないだろ?」

 と、落合は言ってくる。

 そうなのか?

「そんなことよりも、今まで通り接してあげた方がよくね?」

「まぁ……そうなのかもしれないな……」

「そんなことよりさ、昨日言ったやつ。持ってきた?」

「やべ。忘れた」

「今日なんのために来たんだよー」

 バシリと背中を叩かれた。

 落合とはまた後日会うことにした。



 別の日にはこんなことがあった。

「あのねぇ。仮にも告白した相手を目の前にしてその態度はないんじゃない?」

 佐々木は不機嫌そうなセリフを言っているが、その表情は笑顔だった。

「かおるちゃんのことがそんなに気になるんだったら、もっかい連絡してみればいいじゃん」

「いや。それはしつこいだろ? 嫌われたくないし」

「ほーんと。かおるちゃんのことが大好きなんだねー」

 ニヤッと笑ってくる。

「いや。好きとかそういう感情よりも……」

「なに? 好きじゃないの?」

 佐々木に上目遣いされると、まだ心臓が早く脈打つ。

 けど――

 この気持ちは恥ずかしすぎて口には出せない。

「何でもねーよ」

 今度こそ佐々木は不機嫌そうに、何よー。と言っている。

 たぶん白石は、俺にとって全てなんだ。

 好きとかそういう次元じゃなく、俺の人生そのものなんだ……



 ●


 もう完成するんだな……

 朝倉くんのことを想いながらもっと編んでいたかったな……

 朝倉くんは優しいからきっと受け取ってくれる。

 私が告白したらどんな顔するのかな?

 驚く? 笑う? 喜ぶ? 困る?

 きっと朝倉くんは私を傷つけないようにやんわりと断るんだろうな……

 吉岡さんはどうやって吹っ切れたんだろう……

 今度聞いてみようかな。

 朝倉くんは白石さんのことが好きなのに。私はそれを知っているのに、告白して困らせようとしてるんだな……

「私はズルくて嫌な女だな……」


 ●


「んじゃあいよいよ来週あの神社にタイムカプセルを埋めに行くぞ」

 落合が言い、俺は小さな缶をみんなに手渡した。

「これは?」

 佐々木が聞いてくる。

「あぁ。この前落合と話してたんだけど、中身が見えると恥ずかしかったりするだろ?だから中身は次開けるまで秘密にして、本当に埋めたい物を各自持ってくるようにしようぜ」

「へぇー。朝倉にしてはいいこと思いついてるじゃん」

 水色の缶を選びながら佐々木が言う。

「んじゃ、俺は緑な」

 そう言って落合は缶を開けた。

「え? 今入れるの?」

 佐々木が驚く。

「別に恥ずかしいもんとかないしなー」

 落合は、いつの間にか現像していたみんなで撮った写真を缶の中に入れた。

「それはズルいでしょー」

 とか佐々木も言っているが、文化祭の時の掲示物を缶の中に入れている。

「おい。無理やり入れるなよ?」

「なによー。手伝って」

 いつも通りの、佐々木と落合のやり取りだ。

「私は家で入れるね」

 塩田は薄い黄色の缶を選ぶと、缶をカバンの中にしまった。

「入れる物決まってるのか?」

 落合が聞くと、一瞬塩田は俯いてから答えた。

「何となくわ決まってるかな……」

「そうか……」

 またいつもの、そうか。だ。

「ほれ白石。紫、好きだったろ?」

 俺は薄い紫の缶を白石に渡した。

 俺には分からなかったが、塩田がその様子をずっと見ていたと後から落合に聞かされた。

「ありがと……」

 白石が何か言おうと口を開きかけた瞬間、 

「ちょっと! 私をのけ者にしないでくださる?」

 突然吉岡が入ってきた。

「あのなぁ。吉岡は同好会に入らないんだろ?」

 俺は、やれやれと首を振る。

 そう。吉岡はほぼ毎日この美術準備室に顔を出すから同好会に入れと何度も誘ったことがある。

 それなのに吉岡は同好会に参加しないと断り続けていたのだ。

「迷惑かしら?」

 そう言って小さな包み紙を出した。

「これは?」

「うまくできたのよ」

 包み紙を開くと、様々な形をしたクッキーがそこにはあった。

「おいしそう」

 甘い物が大好きな塩田が目を輝かせる。

「へー。うまいもんだな」

 落合も感心している。

「アンタほんと何でもできるのね」

 佐々木が皮肉る。

「どれ」

 俺はいただきますも言わずに1つを食べた。

 クッキーは、見た目は最高に美味しそうな見た目をしていたが、その味は、この世のものとは思えなかった。

 どうやったらこんなに不味いクッキーが作れるのか……

「おー。うめーうめー」

 これをみんなに食べさせるわけにはいかない。

 俺は全部を食べ切った。

「ちょっとー! みんなの分だったのにー」

 そう言って吉岡は懐から小さな袋を取り出した。

「それは?」

「自分用に少しだけ取っておいたのよ」

「それもくれ!」

「え?」

「自分で作ったのを自分で食べるなんて勿体ないだろ?」

 慌てて俺は吉岡が持っていたクッキーを奪うようにして取って、口の中に放り込んだ。

「はる様のことを好きでよかった」

 なぜか吉岡が笑顔でそんなことを言っていたが、俺にはよく意味が分からなかった。


 それよりも気になることがあった。


<いいよ>


 みんながいるこの美術準備室で、目の前に俺も白石もいるのに、一言だけメッセージが返って来た。

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