聖女たちとイケメン三人
セイナは聖力と呼ばれる力を広範囲で発することが出来るようで軍の先頭には常に彼女が配置された。
彼女が先頭を行くと魔獣は逃げ惑い、散り散りに逃げ出そうとする。
そして重苦しい魔素が一気に薄まるのだ。
セイナが『ふ〜〜〜〜〜っ』と手のひらを口元に当てて息を吐き出すとキラキラと光る霧のようなものが広がって行く。この光の霧は風に乗りかなり広範囲で辺りを清めていく。これに触れた魔獣はあっという間に萎れ、毒が回ったように弱った。
先陣を切る軍団を束ねるのは宰相の家門が中心だ。パーカーは黒髪を鎧兜の中に仕舞い、白馬に聖奈を抱えるように乗せて移動していた。
セイナに危険が及ばないように多くの護符を縫い付けたベールを被せ大将に指示を出し続ける姿は誰もが見惚れるほど素敵だ。無駄に顔が良く切長の瞳に見つめられると男たちであっても思わず頬を染めてしまうと皆が噂する。
忠誠心あふれるケリーという既婚の女性騎士がセイナの補助で常にそばに侍ってくれていたが、その彼女でさえ『パーカー様は本当に凛々しいですね』とため息を吐くほどだった。
そんな時セイナは『ハハハ……本当に芸術品のようですよね』と微笑んだ。
その言葉に宰相家の皆は『うんうん。本当にパーカー様の容姿は素晴らしい。さすがの聖女様も照れていらっしゃる』とほくそ笑む。
そしてユイナは強力な聖力を弾丸のように放つことができた。
拳銃のように手の形を組み『バン』というと指先から光が放たれる。
両手を広げて親指と人差し指で輪を作り『ドン!』と掛け声を発する。そうすると大きな光の玉は見えなくなるほど遠くまで飛ぶのだ。
その為見上げるほど大きな魔獣が現れた時などはオスカーたちに補助されながら攻撃魔法として繰り出していた。
セイナはその姿を見ながら
『ユイナは馬の上からバズーカを撃ってるみたいね』と驚いていた。
矢よりも遠くまで攻撃することができ、その上どんなに体が大きな魔獣にも効果がある。
オスカー王子はユイナの体を後ろから抱え込みどの戦闘でも抱き込むようにしていた。そしていつも自らが盾となっていた。
王子自らが聖女を守ろうとする姿はまさにヒーロー。
それを見た国民全ては
『我らが王子の自分を顧みない戦いぶりはまさにあっぱれ。胸を打たれました』と涙ながらに語った。
そう。
『見てるだけで男前すぎて惚れてまうやろーーーー!』と叫びたくなるほどのイケメンぶりを発揮していたのだ。
その辺にいる村娘などオスカーのそんな姿に遠目からでも腰が砕けてしまったくらいだ。
「我が太陽は素晴らしいでしょう?」
殿を務める副司令官がユイナに同意を求めた。
「本当ですよね。あのようにキラキラとした王子様が現実にいるなんて。私も夢を見ているようです」と答えると、ウンウンと大きく頷いて
「殿下の素晴らしさは見た目だけではなく、行動が伴っているところです。あのように誰よりも聖女様を守ろうと必死になっておいでですよ」と耳打ちした。
ユイナは耳まで真っ赤に染めて『そんな……私如きに過大評価を……恥ずかしい』と俯いた。
まだ若き副司令官は
〈フフフ、殿下に靡かぬ女などおらぬ〉とニンマリと笑いたいのを必死で堪え
「ユイナ様とオスカー殿下は一枚の絵画のようにお似合いです」とお見合いのおばちゃんならぬおじちゃんを自ら演じるのだった。
そして野営のテントではジェラルドは二人の聖女に甲斐甲斐しく接していた。
「ここだけの話学院時代は三人でよくヤンチャをしたものですよ。護衛を撒いて王子を逃したこともあるんです」ジェラルドが片目をバチんとウインクするとセイナは興味深そうに言う。
「三人はお家の方たちからずっと守ってもらっているお坊ちゃんたちだったのに、そんな一面があったのね」
「ええ、苦労して逃げた先で食べた屋台の肉串の味は最高でした。良い思い出です」
太陽のような笑顔につられてかユイナとセイナも思わず笑う。
「そうですよね。高級な食べ物ばかりが美味しいんじゃないわ。冒険をした後のその一口が最高だったりするのよ」セイナが笑った。ユイナも『わかる〜屋台のご飯はそんなに美味しくなくてもあの雰囲気を楽しみながら食べるから美味しいのよね』と頷いた。
楽しそうに場が盛り上がるとジェラルドはフッと表情を和らげた。
「お二人とも国を思い出してお辛いでしょう……すみません。この討伐がいち段落したら、私たちで祭りに連れて行きます。ウランバルブ王国は花火を産業として発展させていたので他国のものより見応えがあり、美しいのですよ」
「花火?この世界にも花火あるんだ」セイナが満面の笑みを浮かべた。
「ぜひお願いします。私は温泉街で育ったので夏にはいつも花火大会が開かれていました。だから花火を見れなかったことが寂しかったんです」
ジェラルドは勿論!とバチッとウインクする。
そして二人の手をとって約束ですよと握った。
テントを任されている侍女の女性二人は聖女たちに耳打ちした。
「本当にジェラルド様は高貴なお生まれですのに気さくで優しいですわ」
「ええ、気が利いていらっしゃって思いやりに溢れていらっしゃるのがわかります」
「聖女様だからお優しくされるのではなくて、お二人の人柄に触れているから励まされているのですよ?」
「あら(笑)確かにそうですわね。じゃなきゃ手を握ることは流石にしませんわよね」
「オホホホホ」
「ウフフフフ」
二人の侍女が微笑ましげに聖女に微笑みかけると二人は耳元を赤くして
「免疫ないですよ〜」と照れている。
「ユイナに笑いかけていたよね?」とセイナはいたずらっ子のように言いながらモジモジしている。
侍女たちは『まぁ〜』と言いながら確信した。
(お二人ともとても純粋で可愛らしいお方たち。この三人の男性にかかれば赤子のようなものですわね。それを側で見ている私たちも眼福ですわ。本当に美男子たちの本気って怖いわ)
そんな風に日々を過ごしながら国中のあちこちに聖女二人は派遣された。




