表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女二人はサバサバ系  作者: 三輪 有利佳  (旧 美輪 伊織)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/21

聖奈と結菜はへこたれない


 その日ゲートが閉じたと聞いて、聖奈と結菜は陛下たちの前に立っていることも忘れ神殿まで走ってしまった。

 今までそこにあった神の門はなくなっており、青々とした芝が残っている。それを見た瞬間自分たちの状況を理解した。

 結菜は魂が抜けたようにへたり込む。

 聖奈は「なんで!どうして!」と叫んだあと頬を伝う涙を拭うことも出来ず呆然と立ちつくした。


 どのくらいそこに居たのかは定かではないが、後で聞いた話によるとディケンズ総司令官が聖奈の肩を抱き歩くように促し、ウィリアムが結菜を抱え上げそれぞれ馬に乗せたそうだ。


 あまりのショックに二人ともどうやって戻ったのかもわからず、気がつくと同じ部屋のベッドの上で手を繋いだまま眠っていた。


 翌朝侍女たちが

「何か召し上がらないと体が弱ってしまいます」

 と果物を差し出してくれたが、同じトレーに載っていた水を飲んで喉を潤したことしか覚えていない。


 やがて聖奈は結菜の体を抱きしめた。

 そして「これからのこと考えよ」と囁いた。


 結菜たちは寝台の上で盛大に神様を罵っていたが、日本に帰ることは叶わなかった。

 何度目が覚めても王宮の建物で目覚め、侍女たちが起こしに来る。


 今まで別々の部屋で寝ていたのに、この期間は二人は離れ難く、ずっと同じ部屋に引き篭もっていた。


 今思えば、寝ている間に、どちらかが忽然と姿を消して日本に戻ってしまうことを危惧していたのかもしれない。一人になりたくない気持ちがそうさせたのだろう。神殿のゲートは変わらず消えてしまったままであるから、二人して帰れる可能性はほぼないことが確定した。


 貴族の人々の反応は様々で

「お気持ちをお察しします。ですがこの国で根を張って頂けるならなんでも仰ってください。お力になります」と励ましてくれる者。

「もう帰れないのだから、より国に貢献するべきだ」と強く出る者。


 王家の思い通り、この国に留まるしかなくなったことをウランバルブの国民は概ね喜んでいるようだった。


 結菜たちは自分たちはこれからどのような職業で、生計を立て、どう過ごすのかを陛下たちに相談しようかと話したが、

「どう考えても『結婚してこの地に家庭を築いてくれ』としか言われないような気がする……」と聖奈が言うと、『それはその通りだね』と結菜も納得した。


 侍女たちが窺うようにこちらを見てくれているのも知っていたので、『気持ちは落ち着いてきたから、今からのこと二人で話しておきたいの』と言えば『でしたら是非王子殿下たちにご相談されると良いかと思いますよ!』と勧められた。

 なんと言っても彼らは国でも重要なポジションにいる人たちではある。確かにそうだが結菜の感覚からすると『自力でまだ一円も稼いでない大学生に何かを相談するなんて……』という感覚であるし、聖奈だって就活の相談をいきなり社長(陛下)にするより、近所の気安く話せるおじさんに相談してみたい……というのが本音だ。


「ジェラルド様たちが悪いわけではないけれどこれはいう相手は間違えちゃダメよね」

 結菜が腕組みをすると、聖奈がアッと声を漏らす。

「ディケンズ総司令官の実家は大きな商家らしいよ。私にはチート商品を作り出す力はないけれど、そういう方達なら何か働き先のヒントがもらえるかも」

「それで言えばウィリアム副司令官はウランバルブ人のハーフらしいわ。隣国に母方の親戚がいらっしゃるそうで、交流が多いのよ。この国に縛られずに他国の情報ももらえるかもしれない。お二人に時間を作ってもらいましょうか?」


 二人の表情は一気に明るくなった。


 先のことをネガティブに考えても行動に移せない。少しでも前進でき、尚且つ自分たちの納得する将来を選んでいきたいと思った。


 オスカー殿下やジェラルド、パーカーたちはいつも『少しでも君たちの心を癒したいんだ』と遊びに誘ってくれる。

 それはそれでありがたいが、ダンスが踊れないのに夜会に出て人に囲まれたり、自分のお金で買ったわけでもない装飾品やドレスを褒められるのは苦手だ。殿下たちは討伐後にヒーローとして崇められ益々輝いているようだが、結菜たちは(そんなことより無職の私たちこのさきヤバい)という心配の方が強くて笑顔も余裕が持てない。


 チヤホヤされるというのは自分の力が正当に認められた時に初めて『嬉しい』と思うものなんだな、と聖女たちは感じている。


 食事や遊びに行くことを一生懸命誘ってくれても楽しめないのだと改めて知った。


 転移するということは過去をそのまま無かったことにされるとんでもない人生の修行だな、と結菜は自分の人生を幾度となく振り返ったそうだ。聖奈より結菜の方が社会で経験が長かった分そういう気持ちも深かったのではと聖奈は思った。


 王子たちは観劇やパーティーなどの楽しいことには全部参加表明するが、仕事が絡むと絶対参加はしなくなる。

 彼らからすると討伐の残務処理は『討伐』ではないらしい。


 下々の兵士ができる仕事は彼らにさせてしまえと思っているのがよくわかる。


 それがわかっているから結菜達は(四人でこっそり話したい)という考えのもと計画を立てた。

 

 どんな時でも護衛がつく二人であるから

『久しぶりに隣町の神殿に挨拶に伺おうと思います。森を抜けていくので護衛は手厚い方が良いかもしれませんね。お忙しいから無理はなさらないでほしいのですが、総司令官様さえ良ければ一緒に視察に行きたい』

 と伝言を頼むともれなくウィリアムもついてきて、四人は自然な形で日帰りの神殿参拝に向かうことになった。


 計画して二日目には顔を合わせることができたのは彼らの配慮があってのことだろう。


 朝早く迎えにきてくれた総司令官は結菜を見た瞬間

「小さくなりましたね」

 と労し気に言葉を発した。

「それ、結菜が縮んだって聞こえるわ」

「いいのよ、実際縮んだかも。ちょっと引きこもっていたから」そう言って結菜は微笑ったがディケンズは珍しく焦ったように

『違う!痩せたと言いたかった。食べてないんじゃないか?』と困った顔をした。

 ウィリアムは

「ユイナ殿。今日は隣町に貴女が以前言われていた『お餅』に近い食べ物があります。良ければ昼食に食べましょう」と提案した。彼なりの無骨ながら配慮なんだなと思うと鼻の奥がツンとした。


 天気が良く、気持ちの良い風が吹く中、いつもは騎乗している二人が、その日は聖女達のために馬車に乗り込み、行動を共にするという。結果オーライとばかりに結菜たちは彼らに自分たちのこれからの生活のことを相談を始めた。



「というわけで私たち、この国で仕事を探して、住む場所を決めていかないといけないんです。ウランバルブ王国も良いところだと思うんですが、ここだけに限定しなくてもいいかな?とも思っています。魔獣を討伐すること自体は他国も望んでいらっしゃるようですし、神も私たちにその方面での活躍を期待されているかもしれません。今までの聖女たちはどう過ごしていらしたのでしょう。王家はあまり教えてくださらないんです」

「国を守る私たちにその相談は……なんとお答えすればいいのか。国に残るなら、地位の高い、将来性のある旦那様を見つけて結婚するのが一番だと言われると思わなかったんですか?」

 ディケンズがそう言うと聖奈はコロコロと笑った。


「総司令官殿は正直ですよね。表情は変わらないけれど、私たちを心配してくれているのがよくわかります。人間として気にかけてくれているのが感じられるんです。討伐の時であっても他の方達と考えていることが違うのがよくわかっていました。だから相談しようと決めたんです」


「ウィリアム様は私のこと鬱陶しいわがままな女だとずっと思っていたでしょう?だから都合の良い言葉ばかりを使う人ではないと信じているんです。王家にあなた達が睨まれては困りますが何せ正しい情報がいただけないので、こうやってお願いしているんです」


 二人は厄介な……と表情に全面的に出していたが二人が揃って頭を下げる様を見てやがて諦めたように

「わかりました」


 と告げる。



 聖女はこの国では何度も召喚されており、国をあげて歓迎はしていること。だが、粗雑に扱ったり、酷い目に遭わせると忽然と姿を消してしまったり、神からの神罰が国に起こることが幾度かあった。現王家は穏やかで治世も問題はなく、聖女たちに接する態度は前向きで悪くないと思う、と率直に言う。


「あなた様達の世話を甲斐甲斐しく焼く彼らから将来の夫を選び、何かしたいのであれば彼らの資産で事業をするも良いでしょう。それは聖女の仕事の代償としては全く問題ない」

「寧ろ、足りないくらいですよ、遠慮はいりません」ウィリアムも賛同する。


 二人は顔を合わせると意を決した様に頷いた。


「実は私たちは皆様にお伝えしないといけないことがございまして」

「そうなんです。特に結菜が罪深いですね」

「いえいえ、この世界の基準でしたら聖奈も同罪なんですが」

 と言えば

「え?罪?」

「同罪?」


 と大柄な二人が目を見開く。


 結菜は席を立つと防音の魔法が馬車にかかっているかを再度確認した。

 そして徐にウィリアムの隣に滑り込むと耳打ちをした。


「なんですって!!」

 ウィリアムはその瞬間、目玉がこぼれ落ちんばかりに見開かれた。後にディケンズは深夜に敵襲を受けた時よりも驚いた顔をしていた、と語る。


 聖奈は顔の濃い人種の驚く表情ってすごいわ〜漫画に出てくる『劇画タッチ』の顔そのものだったよ、と結菜に説明したのであった。


  

 

ディケンズはさっぱり日本人寄り、ウィリアムは暑苦しい顔立ち…という説明がずっと抜けたまま。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ