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面接

作者: あやお
掲載日:2025/12/06


私はコンビニにバイトの面接でやってきた。

家の最寄りにあり、私もよく大学帰りに寄っている店舗だ。

目の前には、この店の店長が座っている。

店内は暖かいが、小太りの彼には暑いようで額に汗が滲んでいる。


「じゃあ、採用ね。早速明日から入れるかな?」


店長は履歴書から目を離し、微笑みながら私に問いかける。

はい、と答えると了解と返される。

彼は手帳にボールペンでメモを取り、そのカリカリという音だけが控室に響き渡る。

私が結果に安堵し、小さく息を吐くと、店長は手を止めて、こちらに向き直る。


「うちで働くからには、困ったことがあったら何でも言ってね。よくバイトの子達の相談にのっているからさ」


眼鏡越しに男の細い目が、更に細まる。

男は堅くみえるが、口角が上がると優しそうな雰囲気になった。

つられて私も微笑む。

室内からは緊張感が薄まり、エアコンの風でパタパタと机に積まれた書類の端がなびく。


「最近、少し物騒だろう?この間はストーカーに付き纏われているって相談を受けたなぁ」


ストーカー


そのワードを聞いて、私の心臓は大きく跳ねた。口内には唾液が広がり、それを飲み込んだ音が耳に響いた。


店長はそんな私の顔をじっとみつめ、もしかして……と呟いた。


「君も、ストーカーに遭っているのかい?」


その声は、私を心配しているようだった。

不安気にこちらを伺い、さっきまで組んでいた脚を下ろしていた。

しばらくの間、店員のレジ対応をしている声だけが、控室の外からくぐもって聞こえていた。



「……実は、そうなんです」


私は意を決して、ぽつりと溢した。

緊張で喉が渇いてしまっていたからか、

声は思っていた以上に掠れてしまっていた。

店長は、面接前に出してくれていたペットボトルを私の方に押し進めて、飲みなさいと言ってくれた。

ペットボトルを開け、お茶を喉に流し込むと、ようやく少し落ち着けた。

その様子を店長は、優しい笑みを浮かべてみている。


「落ち着いたかな?」


「はい、ありがとうございます……」


私がお礼を言うと、店長は、気にしないでと言う。


「それより、ストーカーの話、大丈夫かい?さっきも話したけど、他の子の相談にも乗っていたから何か力になれるかもしれない。少し話してみないかい?」


そう促され、私はペットボトルを握りしめながら、自分の足先を見つめて話し出す。


「玄関の前に、紙袋が置いてあったんです。中を見たら、真っ白なノースリーブのワンピースと、薔薇の花束が入っていて……誰に聞いてもそんなもの送ってないって言われて」


話す程に、あの気味が悪い気配を思い出して、体温が奪われるたように身体が震える。


「盗撮写真みたいなものも、ポストに入れられていて、本当に怖いし……」

「それって、君のこと愛してるって愛情表現なんじゃないかな?」


間髪入れずに、店長が早口でそんな事言う。

私は、一瞬何を言われたのかよく理解できなかった。

そんな私に気がついていないのか、店長は饒舌に続ける。


「そんなに愛してくれる人って、中々居ないんじゃないかなぁ。本当素敵な人だねぇ。羨ましいなぁ」

口から唾を飛ばしながら、半笑いで話し続ける店長に、私は眉を顰めそうになるのを我慢する。


「でも……気持ち悪いですよ、そんな一方的な事されても」


嫌悪感いっぱいの声で、そう吐き捨てる。

チカチカと古い蛍光灯が点滅し、部屋が薄暗くなる。

視界がぼやけ、店長の眼鏡の奥の表情が、うまく読み取れず、私は目を擦った。


「気持ち悪いとかいうなぁ!!!!!」


突如、店長が大声で叫び、机の上の書類をぶちまける。

鼻の穴を大きく広げ、息を絶え絶えに、何かずっと呟いている。

眼鏡越しに見える細い目からは、優しさは消え、狂気を孕んでいるように見えた。



店長の異常な姿に私は驚き、席を立とうとする。しかし、それは叶わず脚がうまく動かない。頭が朦朧とし、意識をとばしそうになりなる中懸命に抗う。


店長は私の様子を見て、ニコリと微笑み、

やっと効いてきたね、と呟く。

そして、足元にあった紙袋の中を漁り出す。


「いつもお店に来てくれてたでしょ?その時から君だっで決めてたんだ。プレゼントも、また用意しておいて正解だったよ」


紙袋の中には、白いワンピースと薔薇の花束がみえた。


「今日はね、バイトの他にもう一つ面接をしてたんだよ。最後の一言で本来なら不合格だけど、許してあげるね」



そう言って、私の薬指に指輪をはめる。



「これで、ずっと一緒にいられるね」


気味の悪い笑顔を浮かべる店長が見えたのを最後に、私は意識を手放した。


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