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三度目の。極寒公爵を娶って魔王を倒します!  作者: 安ころもっち


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04 - 憂いは全てなくなった


 ざわめく会場。

 一度目の時は咄嗟にかばってくれたアロンツォ様が負傷し、大変なことになったけど……アロンツォ様が私とその暗器の間を視線が行ったり来たり。


「ア、アロンツォ様とのダンスが嬉しくて、つい、はしたなくも飛んでしまいましたわ。あ、あれは?なんですの?……私、気付きませんでしたわ?」

 そう言って両手で口元を覆い驚いてみせる。


「すぐに調べるんだ!」

 今回の舞踏会を主催していた子爵が慌ててそう言った後、アロンツォ様の前で土下座している。それを冷たく見下ろすアロンツォ様。


「ア、アロンツォ様、無事で何よりですわ。それよりも私、少し気分が、その、2人っきりになりたく、思ってますわ」

 少し恥ずかしさが出てしまって言いよどむ。


 犯人は分かっている。足を負傷したアロンツォ様が鬼の形相でこの件を子爵に問い詰め、すったもんだの末、犯人がわかり逆に謝罪することになるのだ。

 アロンツォ様もそんな恥をかかせるわけにはいきません!妻として!


「そ、そうだな。ルチアーノ子爵、部屋を用意してくれ」

「は、はい!今すぐに!」

 その言葉と共に子爵の傍にいた執事が慌てて動く。


 子爵は私を拝むようにして見つめた後、再び頭を床に擦り付けた。


 ややしばらくして、部屋の準備が整ったとのことで案内の者がやってきた。そして慌てて傍までやってきた執事長セガールがアロンツォ様に耳打ちをしている。


「フィエロ公爵様、こちらへどうぞ」

 子爵家の執事に案内される中、会場の隅で震えながら固まっている元執事長であるエベッソと元侍女長のクリストファを発見。アロンツォ様も2人を視認できたようで、その2人を鬼のような形相でにらんでいる。


 さらに震えあがる2人。

 そんな2人に顎で合図するアロンツォ様。


 ついて来いよ!という意図は伝わるかな?カクカクと体を強張らせながら後ろをついてこようと移動を始めた2人。やめて!面白過ぎて笑っちゃう!ぷるぷると震えながら堪えていると、アロンツォ様が優しく肩を抱いてくれた。


 そして室内に入るや否や2人は土下座。


「どういうことだ!」

「私が、誤って、その、先ほどの刺客を、脅されてて、いや、家の事情で」

 何を言ってるのか分からないクリストファ。


「ひいっ!」

 悲鳴を上げるだけで固まっているエベッソ。


「つまりは、お前達があの刺客を手配した、ということだな?」

「私はこの女に言われて手配しただけでございます!」

 アロンツォ様の質問に間髪入れずそう返すエベッソ。


「私はそんなことしてません!」

 そう言いながら縋るようにアロンツォ様のおみ足を掴もうと……蹴られるクリストファ。


「2人ともどうなるか、分かってるだろうな?」

 顔が怖いよアロンツォ様?


 必死で頭を床に擦りつけ「おゆるしください」を繰り返す2人。


 このままだと処刑される流れなんだけど……


「アロンツォ様。良いではありませんか。偶然にも刺客を退けた強運、自慢できますわ!」

 後味が悪いなと思って口を開くが、咄嗟のことだったのでそんなアホみたいなことを言ってしまった私。


「世間体があるので降格で済ませていたことがそもそもの間違いだったようだ。私を殺さんとしたその所業、死をもってが償うべきだが、お前達はクビだ!早急に屋敷から出ていけ!」

 2人は顔面蒼白。しばし固まったまま動かなかった。


 少し可哀想になったが処刑されるより良いだろう。

 クリストファを処刑すると、その後で事あるごとに娘に絡まれることになる。だからこれでいいのかな?そう言えば毒殺未遂もあったな。その時にはすでに愛されマックスになってたから、毒見役が死にかけて大変な目に……


 その後、再び謝罪の言葉を述べに来た子爵に謝る必要はないと伝えるアロンツォ様。仔細を伝える。


「すまなかったな。折角の会を邪魔してしまったようだ」

「いえ!お怪我が無くて何よりです!」

「また呼んでくれるか?」

「はい!喜んで!」

 緊張しっぱなしの子爵に笑いそうになる。


 笑顔を浮かべご機嫌な子爵にそろそろ帰ると伝え無事帰宅。


 玄関にはあの2人が待っていた。

 馬車を降りるとアロンツォ様に深々と頭を下げる2人。


 アロンツォ様は私の手を引きながら無言で2人の横を通り抜ける。

 手に力を軽く入れ足を止める。


 そっと振り返ると、こちらに向かってまた頭を下げている2人。そしてゆっくりと頭を上げた2人は、重そうな荷物をゴロゴロと引きながら敷地の外へ出ようと歩き出していた。


「アロンツォ様、少しお時間いただけますか?」

「ん?ああ、良いが?」

 私はアロンツォ様の返事を聞いてすぐ、2人の傍まで走り出す。


「マ、マリア、様……」

 クリストファは悔しそうに顔を歪め涙を溜めた目で私を見ている。


 エベッソは無言だ。


 私はクリストファのすぐ傍へと移動し、耳元で話しかけた。


「これ、なんだかわかる?」

 取り出したのはSランク冒険者のタグだ。


「ひっ」

「私、毒とか効かないから」

「くぅ」

「バカなこと考えてたら、娘も死んじゃうから」

 こくこくと頷く人形と化すクリストファ。


 こうしてクリストファは体を震わせながら敷地から出ていった。

 やや遅れエベッソもその後を追う。


 これで憂いは無くなった。クリストファがちゃんと躾てくれれば娘も絡むことなく平和に暮らせるだろう。そう考えながらアロンツォ様の元まで戻った。


「何かあったのか?」

「いえ、何もなしではお可哀想だと思ったので」

「そうか。外は寒い。早く入ろう」

 きっと施しをしたのだろう。とでも思ったのか、アロンツォ様は私に優しい笑顔を向けて私の手を引いた。


「アロンツォ様、御身を狙われた者に対する寛大な御対応、素敵です!」

 アロンツォ様の私室に及ばれした私は、自分が狙われたという事実を隠すようにそう言った。やや戸惑いながら首を傾げるアロンツォ様。


「そうか?そうかそうか」

 爽やかな笑みを浮かべるアロンツォ様。


 誰?極寒なんて言ったの。子供のような笑顔じゃん?一度目の時にもこんな笑顔見た事無かったけど?私をキュン死させる気?

 神様ー!三度目の人生をありがとー!


 やや暴走気味な私の脳内を他所に、ふうと息を吐きソファに腰かけたアロンツォ様。手を引かれた私はその隣に恥ずかしそうに座る。


 沈黙。


「マリア、その、なんだ……最近はお前を、愛おしく思っている……本当だぞ?」

「う、嬉しいですアロンツォ様」

 咄嗟に発動させた水魔法(アクアウェーブ)でいつものように目を潤ませ……


 ビシャビシャにして見つめてみる。


「お前、相変わらず無様な泣き顔だな。まあいいよ。幾分見慣れてきたし」

「ひ、ひどいです!」

 本当に酷いのは私の魔力操作技術だ。


「今晩、このまま部屋で過ごすといい。まあ、良かったらだがな……」

 きたー!思わず頬がにやけそうになる。頑張れ私の頬筋!


「よろしいのですか?」

 そう言って笑って見せる。上手く笑えてるかな?頬がヒクヒクしている。


「お前……面白い顔をしている」

「またそんなひど ―――」

 私は今生では初めての口づけを頂いた。


 久しぶりの感触に幸せを感じ、私はゆっくりと意識を失った。


 そして目を覚ます。

 見知った天井。

 窓からは朝日が差し込み、ドアの開く聞こえる。


 や、やっちまったー!

 私は一糸乱れぬ帰宅時のままの体を起こし、入ってきたローラにより着替えさせられた。


 慌てながら食堂に入ると、そこには笑顔を向けてくれるアロンツォ様。


「くふっ、昨日は、やってくれたな」

「も、もうしわけありません」

「私の、ふふ、私の誘いを受けたにもかかわらず、眠りこけるとは」

 楽しそうな表情でなによりです。


「あまりにも幸せで、意識を飛ばしてしまったのです」

「そうか。それなら良かった。てっきり意識を失うほど嫌だったのかと思ったよ」

「アロンツォ様を嫌うなんて、あるわけないですわ!」

 またも笑うアロンツォ様を見て顔を赤くする私。


 思わず昨日の口づけを思い出してしまう。


 今夜は私を抱いてくれますか?そう言えたら良いのにね。

 女性から誘うなんて娼館の女性でもあるまいし。そんなことを考えながら、アロンツォ様の対面に座り食事を頂いた。


 食事が終わると咳ばらいをしたアロンツォ様。


「今夜は部屋に来てくれるかな?」

 はい喜んでー!と思わず即答したくなったがぐっとこらえる。


 恥ずかしそうに頷いてみせる。いや本当に恥ずかしいんだよ?この部屋あっつくない?


「今日は公務がある、寂しいだろうが夜には帰る。待っててくれるな?」

 私はもう一度頷いた。


 部屋を出ていくアロンツォ様を目で追った私は、背もたれにがっつりもたれかかって呆けてしまった。


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