顔
「私、写真は嫌いなの」
「じゃあ、肖像画を描くよ」
「絵はもっと嫌」
「なんで?」
「私の事見られてる間、心まで見透かされそうで嫌なの」
最後に彼女に会った時、そんな会話をした。
写真も、絵画も拒否された俺は魔法を習得する事にした。
勿論、最初は上手くいかない。旋風を起こすだけでも精一杯だった。
彼女を忘れたくはない。その思いだけが俺を突き動かす。
ようやく魔法で彼女の幻影を呼び起こせた時には、十年が経過していた。その幻影の顔には靄がかかっている。
もう、顔さえもはっきりと思い出せなくなってしまったなんて。右目から雫が静かに零れ落ちた。