多くのアオムシが蝶になれないわけ
アオムシは言いました。
アオムシ「僕のこの葉っぱ大好き。ムシャムシャ。」
アオムシ「いっぱいたべて、大きくなるんだあ。あれ、大きくなりすぎちゃった。」
葉っぱがいいました。「どうしよう。このままじゃ、葉っぱをみんなたべられちゃう。なんとかしなくちゃ。鳥さん、鳥さん。おいしいアオムシ、ここにいますよ。」
鳥さん「おいしいアオムシめっけ。パクリ。」
アオムシ「仲間が食べられた。どこかに、隠れる場所はないいかなあ。」
鳥さん「アオムシのお馬鹿さん。自分が隠れるための葉っぱを、自分で食べてしまったし、体もずいぶんおおいくなったから、もう、丸見えだなあ。」
アオムシ「ねえ、神様。僕たちは、どうして、こんな無茶苦茶な戦略で生きているんですか?」
神様「お前たちだけじゃないさ。カマキリだって、すべての卵が親カマキリになってごらん、世界はカマキリだらけにだってしまうだろう。あのたくさんの赤ちゃんカマキリは、ほとんど、食べられてしまうのさ。それは、アオムシくんたちも同じこと。」
アオムシ「ぼくたちが、100匹食べられて、1匹生き延びる戦略なの。僕たちって、鳥の餌になるために生きているようなもの。」
神様「それは仕方がないんだよ。お前たちが食べている葉っぱだって、お前たちが食べるために生えているわけじゃない。レモンはレモンを大きくするために、ミカンは、ミカンを大きくするために生えているのに、アオムシたちのお前さんたちが勝って食べているんだからな。」
アオムシ「だって、僕たちは、レモンの葉っぱやミカンの葉っぱしかたべれないもの。他の葉っぱを食べるわけにはいかないんだから、しかたがないじゃないの。」
神様「そうだ。この世界は仕方のないことが組み合わされて出来上がっているんだよ。その仕方が無さを草や木も、そして、虫も鳥も知って生きている。この世界がアオムシや蝶だけの世界になってごらん、レモンの木やミカンの木は、枯れて死に絶えてしまうだろう。そうすれば、アオムシや蝶だって、死に絶える。そして、だれもいない世界になってしまう。すこしづつ、いろんなものがいるから、みんななんとか、生きて行くことができるんだ。」