セミの子が地中の中に長くいるわけ
セミの子供がいいました。
セミの子「ぼくは、土の中が大好き。あたたかいし、食べ物もいっぱいあるし。」
セミの子「ねえ、神様。どうして、僕たちは、外の世界にいかなくちゃならないの。危険な鳥たちが、僕たちがでてくるのを待っているというのに。こわいなあ。」
神様「だから、逃げられるように羽をあげたじゃないか。外に世界にいくときは、りっぱな羽があって、空を自由にとべるんだよ。だから、外の世界はこわくないさあ。それに、結婚して、あかちゃんを産んで、次の世代に命をつなぐんだよ。」
セミの子「外の世界、明るい世界。まぶしい世界。自由に空をとべる羽。結婚、赤ちゃん。なんて、すばらしい未来が、僕たちにあるんだあ。素敵だなあ。でも、怖い。僕は、土の中がいい。もう、7年も土の中にいるんだ。外の世界なんて、知りたくもない。外の世界には、一週間しかいられないなんだよ。土のなかに、何千日も暮らしてきたのに、たった7日のために、外の世界に行くなんて絶対、変。」
神様「しかしなあ。何千日も生きてきたからと言って、何万日はいきれない。セミにも寿命があるんだ。生き物には、寿命があるんだあ。それを世代を超えて、それをつないでいくしかないんだ。」
セミの子「どうして?」
神様「わしも、いろいろ考えたんだが、それが、命の宿命だ。一つの生命が無限に生きることはできない。しかし、命は、世代でつないでいくことができる。そうすれば、無限の時間を生きて行くことができる。」
セミの子「命の宿命。命の限界なの。神様にも、それしかできないわけ。」
神様「そうだ。それが、限界だあ。だから、セミたちが、世代を超えていくためには、羽をもち、自由に空をとべる必要があるとかんがえたんじゃ。土のなかじゃ、恋もできないだろう。結婚もできないだろう。」
セミの子「土の中で、恋をしたり、結婚したりする生き物だっているでしょ。」
神様「しかしそれは、昆虫たちじゃない。虫たちは、青空の下で、恋をし、結婚し、赤ちゃんを産むんだ。地上に出て、最後の冒険をしてみなさい。」