挿話。あるモブ転生者たちのお話。
今日は視点を変えて書いてみようと思って書いてみました。
ミゲルスぼっちゃまがカレーを錬成して、カレーを一口食べて「これだよ。これが食べたかったんだよ。家庭で作るカレー。」っていう呟きをついしてしまいました。
そう。私はカルレ辺境伯邸でメイドとして勤めさせております。
ただ一つ秘密があるとすれば、前世の記憶を持っており、日本という国で暮らしていたということでしょうか?
ただ、そんな記憶があっても知識チートやらなんとやらをできることもなく、カルレ領で生まれ落ちました。
そして、転生のおかげかどうか知りませんがこの国の文字を難なく読めたおかげで、辺境伯邸のメイド試験を受け無事に合格し、勤めさせていただくことになったのです。
ですが、元日本人としてどうも我慢できないものがあります。それは、ご飯が美味しくないっていうことです。
慣れてしまえばこっちのものだと思い込もうと思っていた時期もありました!
でも。前世の某ハンバーガーチェーンとか、某牛丼屋チェーンとか某コーヒーチェーンとか、あれやこれやの味を思い出してしまったのです。
思い出したら、食べたいもの。ですがここにはそれを作り上げる術がない。
ここの料理長さんは一度食べたものは覚えてると言っていたので、聞いてみましたよ!ハンバーガーとか牛丼とかコーヒーとかその他思いついた食べ物を全部。
「君が言ってる食べ物たちは知らないなあ。本当に存在するのかい??」
ムキーーーーっっと叫ばなかった私褒めてあげたいってその時は思いました。
そっか。ないのか。この世界に私が食べたいあれやこれは・・・。
うちの領地が貧乏だから食べられないのかと思っていたら、実際にないものと聞いて愕然としましたよ。
そんな時ぼっちゃまがカレーを錬成して食べさせてくれたのです。
カレーですよ!皆さんカレー!!
一口を口にした瞬間思い出したのは、家族で食べたカレーでした。
某社のカレールウを使って作ったカレー。あれを思い出したのです。
隣を見たら、護衛見習いがグスグス号泣しながらカレーを食べてました。
「カレーや。母ちゃんのカレーやああっっっっっ!!」
「え?関西弁。」
あ!やば!!だって関西弁が聞こえてきたら、つい反応してしまうじゃないですか!!
「自分。転生者なんか?」
え?この人めっちゃ耳がいいんだけど・・私小さい声でしか言ってない。
「て・・・転生者ってなんですか?」
「いや。あんた言ったやん。関西弁って。それって日本人じゃないとわからへんやろ?」
私はキョロキョロと見渡して、誰も私たちに反応してないことを確認してから、護衛見習い君を部屋の隅に引っ張っていく。
「まず自己紹介からね。私の名前はシャーリー。シャーリー・マクライアン。」
「俺の名前はジョン。ジョン・ニックウエル。ニックウエル子爵家の三男だ。」
私たちは名前を紹介してから、色々と話した。話した結果。ある結論に達したのです。
「「モブでいよう!!」」
「うん。それは無理だね。」
「「え??」」
モブでいようと決めた瞬間をミゲルスぼっちゃまにしっかりと聞かれていました。。。
「うふふ・・聞いちゃったよ!つーか二人とも、反応がめっちゃカレーを知ってる反応なんだもん。
知られたくなかったらさ、素知らぬ顔でカレーを食べなよ。」
その時私たちは知りました。あーぼっちゃまも転生者なんだって。
「ねえねえやっぱりさあ。マックがない街はさ街じゃないよね?」
という質問に対して
「絶対に街じゃねえ!!」
「そうよ!!マック!!あーーなんでマックがこの世界にないのーーーー!!!」
という反応をしてしまった私たちを見て、ニヤリと意地悪い顔を浮かべるぼっちゃま。
ぼっちゃまは私たちの手をひいて領主様のところに引っ張っていきました。
「父様!!この二人を僕の専属にしてください。シャーリーは僕の専属メイドにジョンは僕の専属護衛に。
ねえ?いいでしょ??お願い父様!!」
「うん??いきなりどうしたんだい〜。ミゲルスがわがまま言うなんて珍しいじゃないか〜。二人の意見を聞いたのかい??」
「うん!!」
え?ぼっちゃまそんな元気よく返事しないでくださいよ!!私たちはモブなんです。名前はあるけどモブなんです。
二人合わせてモブーずなんです!!それに私たち返事も何もしていない!!
「ちょっとジョンはいいの??」
「うーん。ながされるのもいいかなって思った。」
「ちょ!!いきなりなんで標準語なのよ??」
「え?だって俺生まれ。神奈川県だもん。バリバリの浜っ子よ!!関西弁はなんていうかノリ??」
神奈川出身なのかあああああああああいい!!って思わずジョンの頭を叩いて領主様に威勢がいいメイドだなあ・・
と憐れみの笑みをもらったのはここだけの内緒ということでお願いします。
「シャーリとジョンと言ったかなあ??君たちをミゲルス専属にするのはいいけど。くれぐれもミゲルスへの忠誠を忘れないようにできるかな?ジョンは護衛見習いということだから、しばらくは特訓を続けてもらう。10歳になるまでに君は護衛騎士に昇進すること。シャーリーはメイドから専属侍女になることが条件になるけど大丈夫かな?
多分。これからこの領地は発展することになると思う。僕の代では叶わないかもしれないけど、でもせめて発展の芽が芽吹くまでの土壌を作り上げたい。そのために、これからさまざまなことが起こると思う。どうかそれを意識して、ミゲルスへ忠誠を誓ってほしい。ミゲルスはさっき意見を聞いたと言ったけど、何も聞いていなかったのだろう?だから考えてみて欲しいんだ。専属になるということを・・。」
「ミゲルスは、専属を持つということは一人前の第一歩を歩むことだ。人に忠誠を誓わせるという重みをこの二年でちゃんと知ること、そして絶対にジョンとシャーリーの二人が誇りに思えるような主人になること。それがわかるなら専属にさせよう。専属にさせるのは簡単だけど少しは考えてご覧?」
領主様・・。なんていうお人なのでしょう。私たちは使用人の身。使用人は主人家族の命令は絶対だと思っていたのです。
他の貴族ならそうだと聞いてきましたから。いいも悪いも全部主人の命令は絶対。
そう聞かされてきましたから。私たちは断ることも考えることもできずにただ、肯定するしかないのかと思っていたのです。
ですが。領主様はちゃんと考えて自分で答えを出しなさいとおっしゃてくださったのです。
私はジョンを見ました。ジョンも私の顔を見てうなづきます。
これは転生者の絆かもしれません。またはこの辺境伯邸に転生者が3人もいるという神様の思し召しなのかもしれません。神様に対してちゃんと祈ったことはありませんが、今度からきちんとお祈りを捧げようと思います。
ぼっちゃまは領主様に言われてハッとした顔になり、気まずそうな泣きそうな顔で私たちを見てます。
ああぼっちゃまも聡明な方なのですね。
「シャーリー。ジョン。僕は・・・。ごめんなさい。ちゃんと考えずに言っちゃってごめんなさい。」
ああぼっちゃま。泣かないでください。
そのお心で私たちの心は決まったのです。
「領主様。私シャーリー・マクライアンはぼっちゃまの専属になることに忠誠を誓います。」
「領主様。私ジョン・ニックウエルはぼっちゃまの専属になることに忠誠を誓います。」
私はすごく苦手ですが、ぼっちゃまの前でカーテシーを。
ジョンは片膝をついてぼっちゃまの前で騎士の礼を。
ぼっちゃまは領主様を見上げます。
領主様はぼっちゃまの肩を優しく叩きます。
「ミゲルス。君はこの二人の忠誠に対しての忠誠を誓えるかい?」
ぼっちゃまはその言葉に今度は輝かしい笑顔になりました。
「はい!!」
「それでは。二人をミゲルス専属にさせよう。」
こうして、私たちはミゲルスぼっちゃまの専属になったのです。
専属になったおかげで色々とまあ人生が思いもよらない方向に転がり込んでいくのですがそれはまた別の話。
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