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意識が途切れてからどうやら三日間眠っていたらしい。
その間、僕は夢の中で前世の記憶の濁流に飲み込まれていた。
もうすごいのよ。記憶の濁流って・・・。
待って!整理させてって思っても次から次へと記憶が流れてくるんだ。
最初の1日はその記憶の流れに身を任せて、2日目はその記憶を精査して必要と不必要さを分けて整理。
でもどの記憶が必要で不必要か当の本人は全く持ってわからないから、多分自分の本能に身をまかせた。
3日目。僕は前世で言う神様に出会った。というか声が聞こえたんだ。
「今記憶を見た通り、君は前世家族に恵まれなかった。幸せを追い求めて、そのぬかるみにハマってそのことに気づかずに生が終わってしまった。だから今世では君は家族に恵まれて幸せにならなくっちゃね。今世では君は君の好きな人と出会って恋をして家族になっていいんだ。人とたくさん出会っていろんなことを知って君はまた新しい自分となっていく。なあに、前世の記憶っていうのは君の個性の一つさ。そうそう10歳になったらこの国の教会に行ってお祈りしてね。そうしてまた私とお話ししよう。待ってるからね。あ!あと君のギフトのカレー錬成。ギフトを使うと声が聞こえるのは前世でいうAIみたいなものだから、成長させていってね。君を守るようにセットアップしてるから、あとちょいちょいいじってるけど何をどういじっているかはお楽しみ。君が住んでいる領地確かに僻地だけど、あそこの土地はきっとそのうち恵みが出てくるから安心してね。君が幸せになっていくためのバックアップは任せといてね。他の仲間からはやりすぎだの。チートをぶっちぎってるから辞めろだのって言われて断念したものもあるけれど、大丈夫!君には君のことをちゃんと見て、見守って手伝ってくれる仲間と家族がいるから安心して甘えなさい。ごめんね言いたいことを言って君に名前も告げていなかったね。私の名前はキルリアントス。キルって気軽に言ってね。じゃあ10歳になる時まで私は君を見守ってるよ。じゃあね私のいとし子よ君に『祝福』を。さあ眠りから醒めなさい・・・」
そっと額にキスをされたみたいだった。それを合図に僕は目を醒めた。
家族全員見守っていたみたいで、目が覚めたのを見て安堵の声を上げた。
みんなからキツく抱きしめられて、僕は目が覚めた安心感から泣いてしまった。
そうそう目が覚めた場所は船の上だったんだけどね。
なんでいきなり目が覚めた場所をいったかというと、ほら。うちの領地半円状の山脈に連なってるっていって僻地って言ったじゃない。海があるとも言ったよね?
うちの領地から王都に行くってなると山を越えた先の他の領地を二、三個経由してから行くことになるんだ。
領地を通る時って通行税ってかかるのね。平民とかならまだ安いのだけど貴族からだと結構な金額になってしまうんだ。
で、うちは僻地な上食べるのに苦労してる貧乏領地。お金をできるだけかけずに王都に行く方法を考えた苦肉の策が船な訳。なんで苦肉の策っていうと、うちの領地の海一年のうちほんの三か月くらいしか、船を行き来できるくらいの穏やかさがないみたい。だから王都に行くのもこの三か月の間で移動することになる。カルレから王都まで大陸をぐるって半周するから、移動だけで往復で二週間とか三週間かかる。そんなのだから、うちは王都よりとの交易よりも他国との交易の方を重視している。王都が二、三週間かかって交易するなら、往復で4日で済む他国の方がその三か月の方でやり取りたくさんができるから。
なんで僕がそんなことを知っているかって?それはね。うちの領地は多分他領地と違って、すごく開放的なんだ。
いち早く他国との貿易を開始していることもあって内地の領よりも他民族を受け入れているし、他民族がいて当たり前っていう土壌が出来上がってる。他の辺境の領地に比べると、人間がおおらかなのだと思うんだよね。
で、そのおおらかさって領民同士のいい絆の深さに繋がるみたいで、一丸となって領地を守るっていう傾向がどうやら他領地よりも強いみたいなんだ。だから領地のことは領民がよく知ってるし、いいところも悪いところも教えてくれるし、家族が悪手を打ったらそれは違うって言ってくれる。
だから、うちら家族はちゃんと領民が過ごしやすいように心を砕いてるし、なんとか頑張ってるんだ。
まあ。その領民ファーストな部分がうちを苦しめてるんだけどね。
領民が苦労しているのに贅沢はできないといつも切り詰めて質素な生活をしている。
領民の数もそこまで多くないから徴収できる税も少ないし、輸出よりも輸入が多いから貿易は万年赤字だから本当にいつもカツカツなんだよね。
そんな中のカレー錬成というギフト。僕にとってはこんなにありがたいギフトがないんだよ。
だってカレーなら少なくとひもじい思いしないでみんなたっぷりご飯を食べられるんだからね!!
三男だし、まだ8歳で耳年増な部分で本当に大事なことは父様母様兄様姉様達の方が詳しいけど、でもそれでもご飯をたくさん食べるくらいの幸せは僕がなんとかしてあげたいんだ。
それが僕の唯一できることだと思うから。
あっちいったりこっちいったり設定がゴタゴタしてるかと思いますがそのまま書き進めていこうと思います。
見切り発車だけど、書いてるのが楽しいのでその楽しさのノリのまま行きたいと思ってます。