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初恋の後悔  作者: お風呂かこ
一章 高校生編 一年生
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五節 三者面談

 夏休み前には三者面談が行われる。僕にとっては、あまりうれしくない行事だった。

 

 いつものように事前に先生に話をして、時間をかなり遅くしてもらった。先生は、忙しいだろうに全くそんな素振りは見せず「遅くても平気だよ。お家の方、何時だったら都合つきそう?」と言ってくれた。

 

 毎年、このやさしさに僕は申し訳ない気分になる。小学校四年生のときから、こういうことがあった際はいつも時間外まで遅くしてもらってきた。そしてどの担任の先生も、遅い時間帯を快く引き受けてくれる。その先生たちのやさしさが、僕にはとても眩しかった。同時に、返せない恩義も感じていた。


 一旦家に帰ってから、父の車に乗って少し薄暗い学校に来た。家に帰ってから、制服を脱げないのがわずらわしかった。僕は父を教室に案内する。


「このスリッパ、つかっていいやつだから。靴はこの辺に置いといて」

「うん」


 父とともに、一年四組の教室に向かう。廊下からは、ひとつだけ明かりの漏れている教室が見えた。僕は少し急ぎ足になる。


「失礼します」


 僕と父は教室に入った。

 江口先生は椅子から立ち上がって、僕たちを椅子に促した。


「すみません、こんな時間に」


 父は座る前に江口先生に向かって言った。


「いえいえ、とんでもないです。お忙しいところありがとうございます」


 今までに何度も見たやり取りが終わるのを待ってから、僕は席に着いた。


 その後はありきたりな話がされた。僕の成績は期末でも維持されているので、何かを言われることはなかった。なんとなく選んだ経済学部の国公立大学を目指していること、勉強はこの調子でいいということ、学校生活も特に何の問題もないこと、父は初めて知る情報を聞いて頷いていた。

 大方は予想通りだろう。先生の前では、父はふつうに話しかけてくる。僕も、相槌を返す。これは、必要なやり取りだ。


 少し話すだけで、三者面談は終わった。この短い時間のために、気を遣わなければいけなかったことを不愉快に思った。そして、先生の勤務時間を延ばしてしまっていることを、申し訳なく感じた。仕事終わりの父に時間を取らせていることも、申し訳なかった。

 僕は念入りに先生にお礼を言って、教室を後にした。


「大学は国公立目指すんだね」

「うん」

「勉強、がんばって」

「うん」


 短い会話。だけど、これは必要な会話。

 僕と父は、用があるとき以外会話はしないけれど、こういうときにだけ事務的ではない会話が発生する。これは一年に一回、家族ということを認識するために、必要な会話。

――――登場人物――――

玉木悠太たまきゆうた 僕

 中学時代はバレーボール部。

 父親と兄との三人暮らし。


永野司ながのつかさ かさ

 小学校からの付き合い。


前川倖成まえかわこうせい 倖成くん

 中学時代は、僕と同じくバレーボール部。

 二年間クラスも同じでよく話をした。

 僕をまこと呼ぶ。


今井俊いまいしゅん 今井くん

 僕と似た空気を感じる。

 親戚の家で暮らしており、少しだけ僕と境遇が似ている。


小林正樹こばやしまさき 小林くん

 昔やっていたゲームの話をした。気が合わないわけではない。


田原友貴たはらともき 友貴

 中学は同じだが、話したのは高校受験の日が初めて。

 部活をやっている。坊主頭。


江口えぐち先生

 高校一年生のときの担任。担当科目は国語。

 役者めいた話し方をする人。

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