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初恋の後悔  作者: お風呂かこ
五章 大学生編 二年生
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七節 気になること

 その翌週、西牧さんは普段通りだった。いつも一緒に来る友だちと教室に入ってきて、笑って過ごしていた。

 各班の発表が終わり解散になった。

 僕はそのまま大学の図書館に向かうことにした。

 通学時の読書とは別に、読みたい本があったからだ。



 僕は文学を扱う講義で紹介されていた本を探した。

 少しの間さまよって、僕は目当ての本を見つけた。その分厚い本の中には、愛とは何かについてが長々と書かれている。

 この論考を読めば、僕の感情も少しは理解できるかもしれない。

 そう思って僕は、本を借りた。



 図書館を出て、すっかり暗くなった道を歩いていると、すぐ前に見覚えのある服装の人がいた。

 僕は歩く速さを上げて、その人の隣に行く。

「西牧さん?」

「あれ、まっきーじゃん。今帰り?」


 西牧さんは笑顔を浮かべながら聞いてきた。

「うん、西牧さん遅いね。講義終わってからけっこう経ってるけど」

「ちょっと学校でレポートやってた。家じゃなかなかやる気にならないからさ」

「そうなんだ」


 そうして僕たちは、一緒に駅まで歩くことになった。


「そういえばゼミ決まった?」


 僕は隣を歩く西牧さんに聞いた。


「うん。まっきーも?」

「僕は落ちてた」

「えー、どうせ嘘言ったんでしょう?」


 西牧さんは、顔を僕の方に向けた。


「むしろ本音を隠さなかったからこそだめだったというか……まあ別にそれはいいよ。第二希望のところはちゃんとやったから」

「そうなの?」


 西牧さんは、なおも笑いながら話をする。


「そうだ、この前言ってた運動って何してるの?」


 僕は話題を変えた。


「あー運動は、走ったり泳いだりとかだけど、最近は走るのが多いかな」

「ふーん、そういうの好きなの?」

「まあそれもあるけど……今度成人式あるじゃんか。私あの日は、人生で一番きれいになっていたいからさ」


 ためらいながら放たれた言葉は、随分と女の人らしいものだった。


「痩せたいってこと?」

「そういうことになるかな」


 西牧さんは今の状態でも痩せているようにも思うが、本人からするとそうではないのだろう。


「てかさ、まっきーって成人式行くの?」


 西牧さんは、にやにやとした顔で僕を見てくる。仕返しのつもりだろうか。


「行くよ?」

「へー、ちょっと意外」

「なんで?」

「なんか興味なさそうだし」

「だって友だちとの約束があるし」


 友貴を裏切るのは忍びない。それに、慎ちゃんにも久しぶりに会いたい。


「それがなかったら行かない?」

「なかったら、まあわかんないけど」

「ふふ、やっぱり」


 僕の言葉を聞いて、西牧さんは笑った。そのいたずらっぽい笑顔を見せてくれるのが、僕はうれしかった。



 そして駅について僕たちは別れた。通学のために使う鉄道はそれぞれ違った。

 別れ際、西牧さんが振ってくれた白い手に、目が吸い寄せられた。

 今までも女の人の手くらい何度も見ているはずなのに、それはどこか特別なものに感じた。

――――登場人物――――

玉木悠太たまきゆうた 僕

 中学時代はバレーボール部。

 父親と兄との三人暮らし。


永野司ながのつかさ かさ

 小学校からの付き合い。

 僕をまこと呼ぶ。

 京都に住むために勉強をしているらしい。

 人との接し方が似ている。

 小学生のときに転校してきた。

 僕にとっては貴重な、家のことを話せる関係。


前川倖成まえかわこうせい 倖成くん

 中学時代は、僕と同じくバレーボール部。

 二年間クラスも同じでよく話をした。

 僕をまこと呼ぶ。

 高校でもバレーボール部に入った。

 最初だけは僕を玉木くんと呼んでいた。


中里佳世なかさとかよ 佳世ちゃん

 小学三年生のときに知り合った。

 いつもくだらないことで笑わせてくる愉快な人。

 一緒にコスモスを見に行った。

 中学二年生の終わり頃から話さなくなった。


浅羽慎二あさばしんじ 慎ちゃん

 中学一年生のときに同じクラスだった。

 やさしい言葉をかけてくれた。

 僕はそんな慎ちゃんのやさしさの在り方に、憧れを抱いている。


今井俊いまいしゅん 今井くん

 僕と似た空気を感じる。

 親戚の家で暮らしており、少しだけ僕と境遇が似ている。

 曜子という人ともめたらしい。

 一年生の文化祭のときに、曜子という人ともめた話を聞いた。

 それからは、距離が開いてしまった。


小林正樹こばやしまさき 小林くん

 昔やっていたゲームの話をした。気が合わないわけではない。

 勉強に打ち込んでおり、部活もしている。

 高校一年生のときは室長もしていた。

 修学旅行のときから、僕をたまちゃんと呼ぶようになった。

 思っていたよりも、ずっと仲良くなれた。


田原友貴たはらともき 友貴

 中学は同じだが、話したのは高校受験の日が初めて。

 部活をやっている。坊主頭。

 修学旅行のとき、急に僕のことをたまちゃんと呼んできた。

 おせっかいだが、悪い人間ではない。


森島もりしまさん

 今井君のことを教えてくれた人。

 曜子という人の友人。

 友貴と付き合っていたらしい。

 冷静な人のようだが、友貴に似ておせっかいな面もある。


伊藤恵いとうめぐみ 伊藤さん

 吹奏楽部。フルートが上手らしい。

 わかりやすい感情表現をする。

 気さくな人でクラスの中心的存在。

 随分と、僕を気遣ってくれていた。

 僕の字を褒めてくれた。

 何事も一生懸命に取り組むことができる。


江口えぐち先生

 高校一年生のときの担任。担当科目は国語。

 役者めいた話し方をする人。

 表面を繕って核を守る振舞いが、僕に少し似ている。

 気を許せる先生。


中川なかがわ先生

 高校二年生のときの担任。担当科目は国語。

 やさしい笑顔が特徴。

 いろいろと見抜かれている気がする。

 あのやさしい笑顔は、葛藤の末に得たもののように見える。

 人にやさしくあれる強さをもっている。

 尊敬できる先生。


渥美あつみ先生

 高校三年生のときの担任。担当科目は数学。

 弱さを隠さない人。

 だからこそ、信用できる。

 人間味あふれる先生。


西牧美緒にしまきみお 西牧さん

 初対面とは思えないほど話しやすい人。

 僕のことをまっきーと呼ぶ。

 僕に似ている。


山瀬貴久やませたかひさ 貴久たかひさ

 大学からの友人。柔道部所属。

 一人暮らしをしている。語学のクラスが同じ。

 同じ部活の人と付き合っている。

 惚気話をよくする。


出口和也でぐちかずや 和也かずや

 大学からの友人。空手部所属。

 実家通い。語学のクラスが同じ。

 アルバイトに明け暮れており、講義はほとんど寝ている。

 高校時代に同じ部活だった先輩のことが好き。

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