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初恋の後悔  作者: お風呂かこ
四章 大学生編 一年生
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五節 アルバイト

 夏休みが明け、秋学期が始まった。春学期にとっていた講義は、全部単位が取れた。

 評価はそれほど良くもないが、難しい講義を避ければどうにかなるだろう。


 語学はまた二人と一緒に過ごした。しかし教養科目は取っている講義が変わって、二人と空きコマの時間が合わなくなった。

 そうしてなんとなく距離は開いていき、貴久の家に理由もなく遊びに行くことは無くなった。学部が違う二人と話す時間は、語学の時間だけになった。



 そして僕は、同じ学部の少人数講義で知り合った人たちと、一緒にいるようになった。

 しかし、その在り方はひどく軽薄で、貴久や和也と同じような関係性になれるとは到底思えなかった。毒にも薬にもならないどうでもいい話を、表面上でするだけの関係だ。

 しかし一緒にいることで講義のことが聞けたり、課題が効率よく進められたりもするので、その表面上の付き合いは続いた。



 そうして、僕はついに単発ではないアルバイトを始めることにした。

 二人と会う機会が減って、もともと余っていた時間がさらに増えたからだ。


 アルバイト先は近くの薬局を選んだ。アルバイトを始めるにあたり、同じ学部の人たちに話を聞いたところ、スーパーか薬局が楽だと言われた。

 家賃の分は稼ぎたかった僕は、スーパーよりも少し時給が高かった薬局に決めた。

 そうして僕は、大学と薬局と下宿先を往復するだけの生活を始めた。


 講義後や休みの日は、アルバイトでつぶれるようになった。途端に自由な時間が減って、窮屈に感じることも増えた。

 アルバイト先は人当たりのいい人ばかりだったが、頭数が少なかったので僕は思っていたよりも多く働くことになった。


 しかし秋学期の講義も別段難しそうなものはなく、休みもあらかじめ伝えればもらえるので、大きな不満はなかった。

 そうして一か月、二か月と同じことの繰り返しで大学生活は消費されていった。アルバイトや講義を通して話す人は少し増えたが、貴久や和也のように、集まって遊ぶほどの仲にはならなかった。


 そして退屈だったからという理由で始めたバイトは、僕の日常を何の遠慮もなく圧迫することになる。

 ずっと減る一方だった貯金が増えるのはうれしかったが、その金を得るためにかけた時間を考えると、釣り合わない気もした。

 業務内容も、土日は多少忙しい日もあるが、平日の夜はレジでただ立っているだけ。たまに代わってくれと言われるシール貼りや、トイレ掃除のほうがまだましだった。学校の人が教えてくれた通り、確かに楽ではあったが、それ以上に退屈だった。


 結局僕は、アルバイトを始めても退屈なままだった。

 退屈なのに、人がいないからという理由でシフトは多く入れられる。かといって特に断る理由もない僕は、そのシフトを受け入れていた。

 そして僕は、だんだんとこの日常に嫌気がさしてくるようになった。

 そんなとき、貴久から連絡があって、みんなで集まろうという話になった。


 だけど、連日バイトが入っていた僕は、その誘いを断ることになってしまった。

 僕はこのとき、バイトをやめたいと思った。

 だが、この生活を維持するためには、金はある程度稼いでおきたいのも事実だ。それでも、大学生活をアルバイトでつぶしてしまうのはもったいないとも思った。


 それに、長時間の束縛は苦痛だった。

 たとえ何もしていなかったとしても、僕にとって一人でいる時間は必要だった。バイトを始めてからは、その時間をも失われている。

 そんな日常を過ごしていた僕は、ここでの一人暮らし自体に価値を感じなくなっていた。


――――登場人物――――

玉木悠太たまきゆうた 僕

 中学時代はバレーボール部。

 父親と兄との三人暮らし。


永野司ながのつかさ かさ

 小学校からの付き合い。

 僕をまこと呼ぶ。

 京都に住むために勉強をしているらしい。

 人との接し方が似ている。

 小学生のときに転校してきた。

 僕にとっては貴重な、家のことを話せる関係。


前川倖成まえかわこうせい 倖成くん

 中学時代は、僕と同じくバレーボール部。

 二年間クラスも同じでよく話をした。

 僕をまこと呼ぶ。

 高校でもバレーボール部に入った。

 最初だけは僕を玉木くんと呼んでいた。


中里佳世なかさとかよ 佳世ちゃん

 小学三年生のときに知り合った。

 いつもくだらないことで笑わせてくる愉快な人。

 一緒にコスモスを見に行った。

 中学二年生の終わり頃から話さなくなった。


浅羽慎二あさばしんじ 慎ちゃん

 中学一年生のときに同じクラスだった。

 やさしい言葉をかけてくれた。

 僕はそんな慎ちゃんのやさしさの在り方に、憧れを抱いている。


今井俊いまいしゅん 今井くん

 僕と似た空気を感じる。

 親戚の家で暮らしており、少しだけ僕と境遇が似ている。

 曜子という人ともめたらしい。

 一年生の文化祭のときに、曜子という人ともめた話を聞いた。

 それからは、距離が開いてしまった。


小林正樹こばやしまさき 小林くん

 昔やっていたゲームの話をした。気が合わないわけではない。

 勉強に打ち込んでおり、部活もしている。

 高校一年生のときは室長もしていた。

 修学旅行のときから、僕をたまちゃんと呼ぶようになった。

 思っていたよりも、ずっと仲良くなれた。


田原友貴たはらともき 友貴

 中学は同じだが、話したのは高校受験の日が初めて。

 部活をやっている。坊主頭。

 修学旅行のとき、急に僕のことをたまちゃんと呼んできた。

 おせっかいだが、悪い人間ではない。


森島もりしまさん

 今井君のことを教えてくれた人。

 曜子という人の友人。

 友貴と付き合っていたらしい。

 冷静な人のようだが、友貴に似ておせっかいな面もある。


伊藤恵いとうめぐみ 伊藤さん

 吹奏楽部。フルートが上手らしい。

 わかりやすい感情表現をする。

 気さくな人でクラスの中心的存在。

 随分と、僕を気遣ってくれていた。

 僕の字を褒めてくれた。

 何事も一生懸命に取り組むことができる。


江口えぐち先生

 高校一年生のときの担任。担当科目は国語。

 役者めいた話し方をする人。

 表面を繕って核を守る振舞いが、僕に少し似ている。

 気を許せる先生。


中川なかがわ先生

 高校二年生のときの担任。担当科目は国語。

 やさしい笑顔が特徴。

 いろいろと見抜かれている気がする。

 あのやさしい笑顔は、葛藤の末に得たもののように見える。

 人にやさしくあれる強さをもっている。

 尊敬できる先生。


渥美あつみ先生

 高校三年生のときの担任。担当科目は数学。

 弱さを隠さない人。

 だからこそ、信用できる。

 人間味あふれる先生。


山瀬貴久やませたかひさ 貴久たかひさ

 大学からの友人。柔道部所属。

 一人暮らしをしている。語学のクラスが同じ。

 同じ部活の人と付き合っている。


出口和也でぐちかずや 和也かずや

 大学からの友人。空手部所属。

 実家通い。語学のクラスが同じ。

 アルバイトに明け暮れており、講義はほとんど寝ている。


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