七節 その後
自主登校の期間が終わり、久しぶりに学校に来た。明日はもう、卒業式だ。
簡単な連絡の後、すぐに解散になった。この教室の匂いも、明日で最後だ。
そんなことを考えながら席を立つと、小林君が話しかけてきた。
「たまちゃん、久しぶり。えっと、受験どうだった?」
小林君は気を遣ってか、恐る恐るといった様子だった。
「私立は挑戦レベルだったところ以外は受かったよ。国立は一次がひどすぎたからもうやめた」
「そうなんだ」
小林君は気まずそうに視線を下げる。
「私立だけど一応受かったから、全然大丈夫だよ。とりあえず帰ろう」
「……うん」
僕たちは昇降口まで来た。
「でもなるべくしてなったって感じではあるかな。実は、夏とかあまり勉強してなかったんだよね。小林くんは国公立受けるんだっけ?」
「受けないよ。本命の私立受かったからね。一応願書は出してたけど」
「そうなんだ、おめでとう。じゃあ小林くんも、もう終わりか」
「ありがとう。そう、やっと終わった」
小林君は、やっと少し笑った。
「でも、終わってから暇じゃなかった? 二月半ばには終わったよね?」
笑顔になってくれた小林君に、僕は尋ねた。
「うん、正直けっこう暇だった」
「いざ解放されるとやることないよね」
「遊びに誘おうにも、受験終わってない人もいるしね。久しぶりにゲーム起動してみたけどすぐに飽きちゃった」
「僕もなにやっても、すぐ寝ちゃってた」
僕は受験が終わってから、ずっとぼんやりと過ごしていた。
「というか、明日で卒業なんだよね」
小林君は話題を変えた。
「うん、実感わかない」
「あっという間だったなあ」
「そうだね……あ、そういや先生のやつもう考えた?」
「まだ考え中。進路相談とかでけっこうお世話になったから、家でゆっくり考えようかなって」
「じゃあ僕もそうしようかな」
僕がそう言ったところで、校門まで来た。
「じゃあね、小林くん。また明日。合格おめでとう」
「ありがとう。たまちゃんもおめでとう、でいいのかな」
「うん、ありがとう。じゃあね」
僕たちは軽く挨拶をして別れた。
僕は、大学生になれるのであればそれでよかった。
国公立に行きたい気持ちはあったけれど、僕の学力が足りていないのだから仕方がない。
今は、大学に行けることを喜ぼう。
――――登場人物――――
玉木悠太 僕
中学時代はバレーボール部。
父親と兄との三人暮らし。
永野司 かさ
小学校からの付き合い。
僕をまこと呼ぶ。
京都に住むために勉強をしているらしい。
人との接し方が似ている。
小学生のときに転校してきた。
僕にとっては貴重な、家のことを話せる関係。
前川倖成 倖成くん
中学時代は、僕と同じくバレーボール部。
二年間クラスも同じでよく話をした。
僕をまこと呼ぶ。
高校でもバレーボール部に入った。
最初だけは僕を玉木くんと呼んでいた。
中里佳世 佳世ちゃん
小学三年生のときに知り合った。
いつもくだらないことで笑わせてくる愉快な人。
一緒にコスモスを見に行った。
中学二年生の終わり頃から話さなくなった。
浅羽慎二 慎ちゃん
中学一年生のときに同じクラスだった。
やさしい言葉をかけてくれた。
僕はそんな慎ちゃんのやさしさの在り方に、憧れを抱いている。
今井俊 今井くん
僕と似た空気を感じる。
親戚の家で暮らしており、少しだけ僕と境遇が似ている。
曜子という人ともめたらしい。
一年生の文化祭のときに、曜子という人ともめた話を聞いた。
それからは、距離が開いてしまった。
小林正樹 小林くん
昔やっていたゲームの話をした。気が合わないわけではない。
勉強に打ち込んでおり、部活もしている。
高校一年生のときは室長もしていた。
修学旅行のときから、僕をたまちゃんと呼ぶようになった。
田原友貴 友貴
中学は同じだが、話したのは高校受験の日が初めて。
部活をやっている。坊主頭。
修学旅行のとき、急に僕のことをたまちゃんと呼んできた。
森島さん
今井君のことを教えてくれた人。
冷静な人のようだが、意図はよくわからない。
曜子という人の友人。
伊藤恵 伊藤さん
吹奏楽部。フルートが上手らしい。
わかりやすい感情表現をする。
気さくな人でクラスの中心的存在。
随分と、僕を気遣ってくれていた。
僕の字を褒めてくれた。
何事も一生懸命に取り組むことができる。
江口先生
高校一年生のときの担任。担当科目は国語。
役者めいた話し方をする人。
表面を繕って核を守る振舞いが、僕に少し似ている。
中川先生
高校二年生のときの担任。担当科目は国語。
やさしい笑顔が特徴。
いろいろと見抜かれている気がする。
あのやさしい笑顔は、葛藤の末に得たもののように見える。
人にやさしくあれる強さをもっている。
渥美先生
高校三年生のときの担任。担当科目は数学。
弱さを隠さない人。
だからこそ、信用できる。




