六節 中学校編 二年生
二年生になるとやっかいな兄の同級生もいなくなり、僕はさらに部活を楽しむようになった。
一方兄は通信制の高校に入学した。中学はほとんど行かなかったけれど、高校は毎日通っているらしい。
でも僕は、依然として兄と会話をしなかったし、父に対して演じることもやめなかった。
家庭内の雰囲気は、離婚があってから一番悪くない状態だと思う。
だけど、それでも僕は居心地がいいとまでは感じなかった。
何があっても、何が変わっても、一度開いた溝は簡単には埋まらない。
それを僕は、よく知っている。
新しいクラスにもなじみ、僕は楽しく学校生活を送っていた。倖成君とは教室でも部活でもずっと一緒だった。
バレーもだんだんと上達してきて、いっそう楽しくなってきていた。体育館の隣が男子バスケになる度に、僕は慎ちゃんのところに話をしに行った。
そして夏が過ぎて、先輩たちが引退をした。僕たちは部活での最上級生になった。長く一緒に練習した先輩たちがいなくなるのは、少し寂しかった。
僕は副キャプテンに選ばれ、さらに部活に励んだ。
後輩たちの面倒も見たりしながら、忙しくも充実した生活を送った。
そうして僕の毎日が楽しかったとき、女子バレー部の同じ学年の何人かが部活を辞めた。
女子バレーの人たちは、はたから見ていてもあまり仲がいいようには見えなかった。上位下位がはっきりとしていて、下位の人たちはかなりこき使われていたようにも思う。
知らない人たちのことだったらどうでもよかったけれど、女子バレー部には佳世ちゃんがいる。しかも佳世ちゃんは上位グループにいた。さすがにあの人がそんなことをするようには思えなかった。
事実僕が見ていた限りでは、そんなことはしていなかった。
だけど、上位グループの他の人たちがしていることを、止めることもなかった。
そこに僕は違和感を覚えた。僕の知っている佳世ちゃんなら、そんなことを見過ごして平気だとは思えない。何かしら葛藤があったり、工夫を凝らしてどうにかしようとするようにも思えた。
だけど、そんな素振りはないように見えた。
僕は佳世ちゃんのことが心配だった。
佳世ちゃんは、どうしてしまったのだろう。
佳世ちゃんは、変わってしまったように思えた。
そうして一度浮かんだ疑問符がなくなることはなかった。
この件を境に、僕は佳世ちゃんとほとんど話さなくなった。
女子バレー部は、上下関係がほんの少しなくなったように思えた。下位グループの人間が何人か減ったのだから、当然といえば当然だ。
部員は佳世ちゃんを含め、どこか浮かない顔をしているようにも見えた。僕たちが楽しく部活をやっているから、なおのことそう見えたのかもしれない。
だけどそれを抜きにしても、女子バレー部の人たちは決して楽しそうには見えなかった。
――――登場人物――――
玉木悠太 僕
中学時代はバレーボール部。
父親と兄との三人暮らし。
永野司 かさ
小学校からの付き合い。
僕をまこと呼ぶ。
京都に住むために勉強をしているらしい。
人との接し方が似ている。
小学生のときに転校してきた。
僕にとっては貴重な、家のことを話せる関係。
前川倖成 倖成くん
中学時代は、僕と同じくバレーボール部。
二年間クラスも同じでよく話をした。
僕をまこと呼ぶ。
高校でもバレーボール部に入った。
最初だけは僕を玉木くんと呼んでいた。
中里佳世 佳世ちゃん
小学三年生のときに知り合った。
いつもくだらないことで笑わせてくる愉快な人。
一緒にコスモスを見に行った。
中学二年生の終わり頃から話さなくなった。
浅羽慎二 慎ちゃん
中学一年生のときに同じクラスだった。
やさしい言葉をかけてくれた。
僕はそんな慎ちゃんのやさしさの在り方に、憧れを抱いている。
今井俊 今井くん
僕と似た空気を感じる。
親戚の家で暮らしており、少しだけ僕と境遇が似ている。
曜子という人ともめたらしい。
一年生の文化祭のときに、曜子という人ともめた話を聞いた。
それからは、距離が開いてしまった。
小林正樹 小林くん
昔やっていたゲームの話をした。気が合わないわけではない。
勉強に打ち込んでおり、部活もしている。
高校一年生のときは室長もしていた。
修学旅行のときから、僕をたまちゃんと呼ぶようになった。
田原友貴 友貴
中学は同じだが、話したのは高校受験の日が初めて。
部活をやっている。坊主頭。
修学旅行のとき、急に僕のことをたまちゃんと呼んできた。
森島さん
今井君のことを教えてくれた人。
冷静な人のようだが、意図はよくわからない。
曜子という人の友人。
伊藤恵 伊藤さん
吹奏楽部。フルートが上手らしい。
わかりやすい感情表現をする。
気さくな人でクラスの中心的存在。
随分と、僕を気遣ってくれていた。
僕の字を褒めてくれた。
何事も一生懸命に取り組むことができる。
江口先生
高校一年生のときの担任。担当科目は国語。
役者めいた話し方をする人。
表面を繕って核を守る振舞いが、僕に少し似ている。
中川先生
高校二年生のときの担任。担当科目は国語。
やさしい笑顔が特徴。
いろいろと見抜かれている気がする。
あのやさしい笑顔は、葛藤の末に得たもののように見える。
人にやさしくあれる強さをもっている。
渥美先生
高校三年生のときの担任。担当科目は数学。
弱さを隠さない人。
だからこそ、信用できる。




