3. 高速飛行(2)
大きくため息を吐く。
ジュリは悪い奴ではない。
周りに気を配り、紳士に取り組む真面目な奴だ。
が、たまにタイミングが悪い。
鼻下の髭を撫で下ろし、眼前に見えて来た赤い塔を捉える。
東京タワー。
その下に陣取る機銃隊。
銃口は当然だが俺に向いている。
拡声器から何か聞こえるが、俺には分からない。
甲高い音を立てて拡声器が止むと、代わりにけたたましい銃声が耳をつく。
最後通告か投降勧告だったのか、と納得した。
目の前から飛んで来る銃弾は、大丈夫だと分かっていても、多少なりとも怖いものだ。
まともに当たれば死ぬ。
決して当たらないが。
作戦エリアには予め避難勧告は行っている。
居るのは戦闘員だけだ。
だから、容赦はしない。
激しく弾けるような音を左手に発生させる。
続けて紫の光を何本も走らせる。
一瞬だ。
溜めた音を解き放った瞬間、道路幅一杯に並んでいた機銃隊は倒れた。
落雷を直撃させれば、こんなものだろう。
動けて倒れた隊員を運ぶ奴らの上空を抜けて、少し旋回、目標の前で止まる。
今度は稲妻を両手にまとわせ、深く息を吐く。
両手を合わせ、稲妻を巨大な剣に変える。
そのまま刀身を伸ばしつつ払い抜ける。
「雷光一閃」
厨二病らしいツカサが喜んで名付けた俺の魔法は、赤い鉄塔を綺麗に切断した。
左耳に左手を当て、
「エドワード・スチュアート、クリアだ」
と、報告した。