2. 高速飛行(1)
吹き付ける風が冷たくて痛い。
耳の奥まで轟音で痛い。
目を開けているのも辛い。
だけど、飛ぶスピードは緩められない。
真正面に現れたガラスの壁面を蹴って、直角に曲がる。
蹴り去ったあとは、銃弾の嵐で粉々に砕け散っている。
こんなビル街の中で容赦なく撃ってくるし。
私には当たらないけど、景観くらいは守って欲しいよね。
絶えない射線の元へ、右手に生み出した火球を投げる。
着弾後そこに大きな爆発が起きる。
それでもまた、射線は再び伸びて来る。
何言ってるのか分からないけど、多分、
「私を撃ち落とせ!」みたいなことを叫んでる。
流線形姿勢でさらに加速する。
正面のビルへ火球を放ち、貫通させ、そのまま抜ける。
ちょっと熱い。
私を包む風のヴェールは、まとわりつく火の粉を弾く。
通り抜けて来た30階位の高層ビルへ振り向いて、両手で大きな火球を投げつけた。
ぶつかった瞬間に爆ぜて、数階分を吹き飛ばし、私の前に建っていたビルは轟音を響かせて崩れ落ちた。
立ち込めた砂埃の中にそっと降りて、私は右耳に右手を当てた。
「こちら、ジュリ。取り敢えず、こっちは予定通り遂行中。そっちはどう?」
テレパシーなのにスマホの仕草をしてしまう。
私だけじゃないけど。
「こちら、エド。飛んでんだから、話しかけんな」
「連絡は密にって言ったよね!」
「…目標まであと5分。終わりゃ連絡すっから!以上」
切った!
ムカッとしたから、薄っすら見えたビルにまた火球を投げて爆発させた。
離脱するためだよ!