表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/19

ソース

 日本からやってくる勇者様は、この世界にないものを与えてくれる。


 それは技術だったり、知恵だったり、芸術や娯楽などなど。


 その中でもすぐにこの世界の人々を惹きつけるのは、やはり料理だ。


 おいしいものはどんな世界だろうが関係ない。


 心が満たされる、至福の時だ。


 だけどたまに勘違いしている勇者様がいるのも事実。


「日本では普通の料理なんだけど、こういった料理があるよ」とか言いながら、自慢げにハンバーグを作られても、どう反応したらいいかわからなくなる。


 ハンバーグなんて勇者様の転移が始まる前からある料理だ。


 もっとよく考えてもらいたい。


 肉をミンチにして固めて焼いただけだ。その食べ方は容易に思いつく。ゆえに前々からある。


 こっちの人間だって、おいしく食べられるように努力はしている。


 だから日本ほどではないにしても、それなりに料理は発達している。


 その上でおいしく食べられる方法を提示してほしい。




 例えばホワイトソース。これは発明だった。


 バターと小麦粉をミルクでのばすだけで高級感あふれる料理へと変貌する。


 素材は簡単に手に入るものだけど、少し行程に手間がかかる。


 この簡単だけど手間がかかる、というのがポイントだ。


 自分で作れなくもないけれど、料理の上手な人に作ってもらったほうが断然おいしい、というところが話題を呼んだ。


 作る人によって若干味が違う。それが面白かった。


 そしてホワイトソースの用途は多岐にわたる。


 ハンバーグにかけてもおいしいし、パスタにもいける。グラタンやリゾットはホワイトソースが要だ。ああそれにオムライスにかけても美味しくなる。


 瞬く間にこの国ではメジャーなレシピになった。


 これには舌の肥えた王宮料理人も舌鼓を打って、舌を巻いただろうと想像できる。


 このホワイトソースを広めた勇者様は日本で料理人をやっていたらしい。


 ホワイトソースのレシピによる収入はなかったけれど、その勇者様はレストランを開店し、一財を成した。


 勇者様亡き後もそのレストランは繁盛している。


 ちなみにその勇者様には、筋肉量を自在に操れ、超人的な力が出る能力を持っていたけれど、能力は使わずに料理だけをしてこの世界を往生したらしい。


 王様も彼が料理人ではなく勇者として活動するのは望まなかったのだろう。


 とにかくホワイトソースは料理に革命を起こした。


 ホワイトソース前、ホワイトソース後、という分け方をしてもいいかもしれない。




 そしてもう一つ、忘れてはいけないのは、デミグラスソース。


 白のホワイトソースに対して、こちらは茶色。


 これはなかなか簡単には作れない。小麦とバターは変わらないけれど、それに野菜やお肉を煮込ませて、ワインで風味をつける。


 しかしこれもホワイトソース同様に、すごく美味しい。


 これも店舗によって違いがあるから面白い。


 ワインの風味が強いところ、色が薄いところ、丁寧に越していて舌触りのなめらかなとろこなど。


 


 最近は新しい勇者様が、エビのビスクなるものを提案したらしく、話題になっている。


 基本はスープだけど、すこしとろみを加えたりすればソースとしても利用できるらしく、パスタやグラタンと合うと聞いている。


 今まで誰もが捨てていた、エビの殻を細かく砕いて使っているとのことで、果たして本当においしいのだろうかと、私は疑心暗鬼だ。




 あ、ちなみにここまで語っておいてなんだけど、私は料理は苦手。


 レシピを知っているだけ。ホワイトソースも上手く作れない。




 しかし今まさにヨウさんは、ホワイトソースを作っている。


 今日の夕食はホワイトソースの何かだ。


 楽しみで仕方がない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ