日本むかし話
ヨウさんの家で暇な時間を過ごすのに、最近は読書を始めた。
本を読むことは嫌いではないので、別に悪くない時間の使い方だとは思うけれど、有意義ではないと思っている。
やはり便利屋のヨウさんの仕事ぶりや知識を得たいと思っているので、別にヨウさんの家じゃなくてもできることをして過ごすのはなんか違う。
「あーあ。なんか面白い話無いですか?」
私はロッキングチェアでのんびり過ごしているヨウさんに声をかける。
「ない」
即答するヨウさん。
「少しくらいは考えてくださいよ」
「いつもこんな感じで暇なんだ。面白い話なんて何もない」
それは確かにその通りかもしれない。
私に面白い話がない理由と同じだ。
「でも、何か日本での面白い話とかないんですか?」
「日本の面白い話か……」
ヨウさんは少し考えていった。
「サリー、桃太郎って知っているか?」
紙に字を書きながら説明してくれる。
「桃の太郎さん? もしかして人格を持った桃ですか?」
まさか日本にはお話しできるフルーツが存在するのだろうか
「違う違う。桃太郎はあくまで人だ。まあ日本人なら誰でも知っている話なんだけど、まあこの世界じゃ魔物退治は普通のことだし流行らなかったのかな?」
「どんな話なのですか?」
「まあいいだろう。話してやろう」
ヨウさんはそう言うと、「昔々あるところに……」と話し始めた。
□◇■◆
衝撃的だった。
序盤から引き込まれてしまった。
まさか日本では男の子が桃から生まれてくるという事例があるなんて驚きだ。
しかも昔からだというからこれまた驚きだ。
こっちの世界じゃどのフルーツからも人間は生まれない。
もし生まれたら、もはや魔物に近い存在なのかもしれない。
でも確かに桃から生まれたら、その男の子には桃太郎と名付けたくなる。
ただ、桃から生まれてきた人全員に桃太郎と付けるわけにはいかないだろう。
もしかして、桃次郎とか桃之助とか桃人とか付けているのだろうか。
それに動物を手懐けて仲間にする中盤なんか、かわいらしい展開で童話的で面白かった。
亜人をパーティに積極的に入れている日本人の特性が詰め込まれていると感じた。
でも猫族の女の子が好きな日本人なのに、メス猫を仲間にしなかったのが意外だった。
猿族は人間と近い部分があるので、他の種族でもいいのかなって思った。
例えばドワーフとか。力が強いし鬼とも互角に戦えそう。
あと、エルフの種族も連れて行けばいいのにって思った。ヒーラーとして大いに役に立つはず。
私が桃太郎だったら、犬、エルフ、ドワーフにきびだんごをあげるかな?
そして鬼退治という魔物討伐の末、鬼の財宝を根こそぎ持って帰るがめつさも、なかなかに風刺が効いていた。
私だったらそのまま鬼ヶ島に新居を構えちゃうかな。そうすれば運ぶ必要もないし。
もし運ぶんだったら、犬にはポーターの役割を与えるかな。
日本人はこの話を小さい頃から聞かされているらしい。
だから転移してもこの世界に順応できるのだろうか。
私が日本に転移したら順応できるだろうか。
ヨウさんにこうやって日本のことを聞かせてもらっているから、他の人よりも日本に馴染める自信はある。
「どうだ? 面白かったか?」
話終え、コーヒーを淹れていたヨウさんが言う。
「めちゃくちゃ面白かったです」
「そうか。それはよかった。久しぶりに桃太郎の話をしたけれど、覚えているもんだな」
「他にはないのですか?」
「他に? ああ、かぐや姫って話がある。聞きたいか?」
「ええ、もちろん!」
「そうか。それじゃあ聞かせてやる」
ヨウさんはコーヒーを一口すすると、「昔々あるところに……」と話し始めた。
何なんだろう?
毎回言っているけれど「昔々あるところに……」って、いつなのか、どこなのか、全くわからない。
まあいいや。ヨウさんの話を聞こう。
□◇■◆
衝撃的だった。
序盤から引き込まれてしまった。
まさか日本では女の子が竹から生まれてくるという事例があるなんて驚きだ。
しかも昔からだというからこれまた驚きだ。
こっちの世界じゃどの植物からも人間は生まれない。
もし生まれたら、もはや魔物に近い存在なのかもしれない。あるいはフェアリー。
もしかして、かぐや姫という名前以外に、竹子とか竹美とか竹人とか付けているのだろうか。
結局、最終的に月に帰るという展開がすごい。
日本のある世界では月に人が到達したと聞いたことがある。
おそらく月にも国なのか街なのかがあって、かぐや姫はそっちに移住したのだろう。
思い切った決断だと思うけれど、月に行けるということは日本にも帰れるって事だし、お盆とお正月に帰れればまああまり気にすることでもない。
それに電話とかいう科学を使えばいつでも話ができるらしいので安心だ。
「どうだ? 面白かったか?」
話終え、二杯目のコーヒーを淹れていたヨウさんが言う。
「かぐや姫もめちゃくちゃ面白かったです! 他にはないのですか?」
「すごい聞きたがるな」
「面白すぎますもん」
「そうか。それじゃあ浦島太郎って話を聞かせてやる」
ヨウさんはコーヒーを一口すすると、またもや「昔々あるところに……」と話し始めた。
□◇■◆
衝撃的だった。
序盤から引き込まれてしまった。
まさか日本には海の中に城があるなんて……




