自作のボードゲームという名のなにか
僕 : 歩、愛称 : あーくん
私 : 天音、愛称 : まーちゃん
※こちら、小畠愛子さん主催の『カドゲボドゲ企画』参加作品です。
※小畠愛子さんの活動報告『ネタ置き場』より、ネタの提供を受けました。
「あーくーん、遊びましょー」
「いらっしゃい、まーちゃん」
学校が休みの日、僕、歩の家に訪ねてきたのは、おとなりに住む天音ちゃん。愛称は、まーちゃん。
肩まで伸ばしたふわふわの髪に、いつもニコニコなタレ目のかわいらしい女の子。
僕とまーちゃんは、同い年の10さい。
かわいいって評判の幼馴染みがおとなりに住んでるのは、ちょっとしたじまんだ。
今日はなんと、まーちゃんが自分でボードゲームを作ってきたというので、さっそく二人で遊んでみることに。
必要なものは、大きな紙にマス目が手書きで書き込まれたボードゲーム本体と、サイコロ一個、プレイヤーを示す駒 (今回は、将棋の駒)。
広げられたマス目を見て、僕はちょっととまどった。というのも、半分くらいは空白だけど、他のマス目には『ル1』や『ル2』としか書いてなかったから。
「まーちゃん、これ、なに?」
僕が『ル1』のマスを指差すと、まーちゃんはニコニコしながら答えてくれた。
「『ル』は、ルーレットのルだよ。このマスはねー、サイコロをふるの。出た数字で、何をするか変わるんだよー♪」
……聞きまちがいかなとも思ったけど、サイコロの出た目で何かをしなきゃならなくて、その何かはまだ教えてくれないみたい。
「そっか、じゃあ、さっそくやってみよう」
「うん、やろう。最初か次かを決めるのに、じゃんけんしよう?」
じゃーんけーんぽん。
僕が勝ったので、僕からサイコロをふることに。
さっそくサイコロをふって、出た目は四。一から六の真ん中らへん。なんとも、ふつうな数字に思えた。
『歩』の駒を進めて四マス目。マスに書かれているのは、
『ル1』
だった。
「はい、あーくん。もっかいサイコロふって?」
「う、うん」
まーちゃんがサイコロを僕の手にのせて、ぎゅっ、ぎゅっとにぎってくる。
どうしたんだろうとまーちゃんを見ても、にこーっと笑顔を見せるだけ。
とまどいながらもサイコロをふれば、
「サイコロは、1だね。『ル1』の1番は、『相手のひざに頭を乗せて、一回休み』だよ」
「…………え、なにそれ…………? (それ、ひざ枕って言うんじゃ……?)」
「ほーら、早く。『一回休み』なんだよ?」
「……う、うん……」
よく分からないまま、横になってまーちゃんのひざに頭を乗せる。
……なんとなく恥ずかしくなって、まーちゃんに背中を向けてしまったけれど……。
なぜか、頭をなでられる。なんで?
「えへへー」
そしてなぜか、なでてる本人はうれしそうで、鼻唄うたいながら頭をなでてくれた。
「次は私の番だねー。はいっ」
僕の頭をひざに乗せたまま、かわいい声で気合いを入れてサイコロふると、出た目は五。『桂馬』の駒を五マス進めると、今度は空白のマス。
「あーあ、空白のマスは何もないの。つまんないなぁ」
まーちゃんの、しょんぼりした声が聞こえてくる。
あんまりしょんぼりした声だったから、なにかしてあげた方がいいのかな? と思えば、
「あーくんは一回休みだから、私がまたふるね。えいっ」
あまり気にした様子もなく、またサイコロをふっていた。
今度の目は六。六マス進めると、また空白だった。
「もー。また空白だよぉ……」
不満そうなまーちゃんの顔を見てみると、案の定ほっぺをぷくーっとふくらませていた。
そんな不満顔もかわいいんだよね。
さてと。まーちゃんが二回サイコロをふったことで、僕の順番。
勢いよくからだを起こして、まーちゃんと向き合う。ひざ枕してくれたお礼をしなくちゃ。
「まーちゃん、ひざ枕ありがとねー。よしよし」
そういって、まーちゃんの頭をなでなで。
ふわふわの髪をなでていると、僕も気持ち良くなるんだよね。
「えへへー」
まーちゃんもうれしそう。
さあ、僕もサイコロをふらなきゃ。
さてさて、出た目は……三。三マス進めると、今度は『ル2』。
もっかいサイコロをふれば、今度は五。
『ル2』の五はなんだろう……?
「まーちゃん、『ル2』の五はなーに?」
「『ル2』の五は、『相手の良いところをほめる。一マス進む』だよ。ほめてほめてーっ」
まーちゃんがニコニコしながら両手を差し出してくるので、手のひらを合わせてきゅっと指をからませてにぎにぎ。
「えっとねー。まずは、かわいいところ。あとはね、いつもニコニコしてるところ。髪はふわふわだし、いつもいっしょに遊んでくれるし、楽しいし」
「ふあーっ。も、もういいよぅ……」
ほめてというのでほめてあげたら、まーちゃんは顔を真っ赤にしてさらににこにこしてる。
まーちゃんのことかわいいなぁって思うと、僕も顔が熱くなってくるんだよね。
今の僕の顔も、まーちゃんみたいに真っ赤なのかな?
「わ、私もサイコロを……ふる前に、あーくんの駒を一マス進めなきゃね」
あ、そうだね。なんて言ううちに、まーちゃんが駒を進めてサイコロもふっちゃった。
「今度は六だね。マスは『ル3』で、サイコロは、三。『ル3』の三はねー、『誰かの秘密を一つばらす』だよ」
秘密? まーちゃんは、一体だれの秘密をばらすんだろう……。
「同じクラスのさっちゃんいるでしょう? さっちゃんって、好きな子がいるんだよー」
ドキドキしながらまーちゃんの言葉を聞けば、おどろいてしまった。
クラスの好きな子をばらすのって、ダメって言われてたような気がするよっ!?
「これでおしまい。だれかは教えてあげられないの」
同じクラスのさっちゃんは、クラスの人気者で一番かわいいって言われてるけど、気が強くておこりんぼだから、僕はまーちゃんの方がかわいいって思うけどな。
でも、そんなさっちゃんにも、好きな子がいるんだ……。
高校生の、従兄のお兄さんかなぁ?
「あーくん、そんなにさっちゃんの好きな人が気になる?」
ぷくーっとほっぺをふくらませるまーちゃん。
ふくれたほっぺを指で押せば、口からふすーっと息がもれておもしろい。
「あんまり気になんないなぁ。さっちゃん、おこりんぼだから。僕、しょっちゅうおこられてて、さっちゃんのこときらいってわけじゃないけど、あんまりかわいいと思わないし」
ふすー……す。
まーちゃんが、息をはき出すのが止まった。
まーちゃんのぷくーとふくれた不満顔が、今度は、どうしよう……って言いそうな顔に変わっていく。
どうしたんだろうね?
「つ、次は私の番だね。えーい」
ごまかすようにサイコロをふるまーちゃん。
次は僕の番の気がするけど……まあいっか。
出た目は、六。
六マス進んじゃうと……。ゴール!
まーちゃんが先にゴールしちゃった。
「ゴールだねー。おめでとー、まーちゃん♪」
「あ、ありがとー、あーくん」
まーちゃんの顔が、なんか、どんどんふきげん……? じゃなくて? 考え事しているみたいなむずかしい顔になってるよ?
「うーん? どうしたの? まーちゃん?」
「あ、あのね、あーくん。このゲームは、ゴールしたらひとこと言わなきゃならないの」
「ふむふむ?」
あれ? 今度は、まーちゃんの顔がまた赤くなっていくよ?
「それでね、その、ね」
あれあれ? なんだか僕も、ドキドキしてきちゃったよ?
「あーくんのこと、好きなんだよ?」
「…………す、好きって…………? 誰が?」
「……………………さっちゃんが」
「えっ!? えーっ!? ないない! それはないよ! さっちゃんが僕のこと好きなら、あんなにガミガミおこったりしないもん」
そっか、良かった。ゴールしたらじょうだん言っておどろかすんだね。
ビックリしちゃった。
「……………………私も」
「うん? まーちゃんも?」
「私も、好きだもん。あーくんのこと」
「…………まーちゃん? が、僕のこと、好き?」
「だから、さっちゃんやのんちゃんにとられたくないんだもん」
「うん。僕も、まーちゃんのこと好き。いつもイジワルしてくるのんちゃんやガミガミおこるさっちゃんより、まーちゃんがずっと好き」
「だから、……えっ?」
「僕、まーちゃんのことが一番好きだよ。ちっちゃいころ約束したみたいに、結婚できるといいね」
「わ、私も、あーくんのこと大好きーっ!」
「わっ。あぶないよまーちゃん」
「だってだって、あーくんのこと大好きなんだもん!」
「そっかー。『りょうおもい』だね、僕たち」
「そうだねっ。『りょうおもい』だね、私たち!」
二人して、ぎゅーっと抱っこして、ニコニコ笑いあったのでした。まる。
・ル1
・・1: 相手のひざに頭を乗せて、一回休み。
・・2: 相手の頭をなでなで。
・・3: 好きなものを一ついう。
・・4: 相手の好きなところにチューをする。一マス進む。
・・5: 相手の悪いところをしかる。一マス戻る。
・・6: 家族の話をする。一回休み。
・ル2
・・1: 相手と向かい合って両手を握る。一回休み。
・・2: 相手のほっぺをなでなで。
・・3: 嫌いなものを一ついう。
・・4: 相手の好きなところにチューをする。一マス戻る。
・・5: 相手の良いところをほめる。一マス進む。
・・6: 友達の話をする。一回休み。
・ル3
・・1: 相手にぎゅーっと抱きついて、一回休み。
・・2: 相手の肩をもみもみ。
・・3: 誰かの秘密を一つばらす。
・・4: 相手の目をじっと見つめる。一回休み。
・・5: 誰かの良いところをほめる。一マス進む
・・6: 誰かの悪いところをしかる。一マス戻る。
※ゴール : 気持ちを伝えます。




