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第一話 陰キャ共は喜劇で人生の幕を下ろす、慈悲はない

ネタバレ、全員しにます。



 「まさかあそこでお前が裏切るとは思わなかったよ、遥。びっくりしすぎて俺のキャラロストしたじゃんかよ」


 「いや、びっくりしすぎてファンブルするってダイスの女神様に愛され過ぎだろ、達季。確かに、満を持して正体現しての不意討ちでびっくりさせて大成功だったけどさ、それでファンブルっておま・・・」


 「あー、確かに新しいパターンだったやー。で、何でお前がドヤってるの?イナリ」


 「いやいやGMとして自分が考えたシナリオでPCがアタフタするの見るのって・・・最高じゃん?」


 「ファッ、マジ怖いんだけど」




 この陰キャ共5人に死の悲劇が起こるまであと10分。




 「いや、俺としてもよー、ファンブルしたくなかったばーよ。でもさ、びっくりしたらでるじゃん?ファンブル」


 このファンブル男が《大嶺達季》、人生がお祭りみたいな男。生きざまがサプライズな男。正直見ていて飽きない。



 「だろうな!?ファンブルしたくてファンブルする方がヤバいだろ、面白いな達季。愛され過ぎだろ、ダイスの女神に。・・・で?いつまでドヤ顔を続けるんだよイナリ」



 このリアクションの大きな男が《玉城信長》。考えるより先に口が出てしまっているのが、長所でもあり玉に傷でもある。



 「えっ、ドヤ顔してたか?いやー、自分では気づかなかったなー、うん。まぁ、でもGMやってて楽しかったよ、うん」


 このポンコツ男が《安里唯成》あだ名のイナリは名前のタダナリがユイナリとも読めることからイナリとのことらしい。



 「確かに面白かったのは面白かったぜ。2人で打合せしてたのかー?」


 このでっかいのが《高原雅春》俺達のまとめ役であり、彼がいなければこうして俺達が出会うこともなかったであろう。



 「あぁ、昨日いきなり呼び出されてさ。せっかく頑張ってキャラ考えたのにさ、ラスボスやってくれって、いつもいつも酷いよなイナリ」



 そして、俺こと《當銘遥》は・・・1番マトモ、以上。



 俺達5人はイナリが企画したTRPGのアフタートークを車内でしながら、帰路についていた。




 この陰キャ共5人に死の悲劇が起こるまであと5分。




 「いや、そのさ、仕方なかった。昨日言ったのが俺的にベストタイミングだと思った」



 イナリは悪びれもなくそう言った。この男はいつも周りを振り回すだけ振り回して、あとはぶん投げてくる。まるで、あとは・・・分かるよな?とも言いたげに。



 「このクソヤロウ!何がベストタイミングだ!打合せらしい打合せもせずに、じゃあ何か良いタイミングで正体現してーって・・・無茶ブリが過ぎるだろ!?シナリオについてほぼ略歴だけ伝えて、途中のギミックとか何も伝えられてなかったんだぞ?ラスボスなのに罠にかからないかハラハラしながらロールプレイして、ネタバラシまで他のPCにバレないように立ち回るって、絶対GMより仕事してたぞ」



 「いや、遥にも楽しんでほしくてそういうのは伝えなかった。遥ならやってくれると俺は信じていた。今日のお前のロールプレイ、すごく輝いていたぜ?」



 サムズアップしながら、イナリはドヤ顔でそう言った。ヤバいキレそう。今運転中でなければ、顔面にシャイニングウィザードを食らわしている。



 「天才過ぎだろイナリ(誉めていない)、何で大事な事伝えてないんだよ。それで何で遥の方は良いタイミングに合わせてきているんだよ、凄いなオイ」



 信長は腹を抱えて笑いながら、シートをバシバシと叩いている。



 「えっ、ドン引きなんだけど?」



 雅春は事を顛末を今知って、苦笑いを浮かべている。俺も我が身で無ければきっと同じリアクションをしていたと思う。


 「どっちも」


「俺も!?」


 

雅春は俺に対しても引いていた。心外だ。



 「えっ、マジで心外なんだけど」

 


 決して心外だなんて言ってはいけない男がそうほざいている。イナリ・・・お前そういうところだぞ?




 この陰キャ共5人に死の悲劇が起こるまであと1分。


 


 「よくわからないけど、イナリが悪くて、遥が凄いのはわかった。やるな、遥。俺はお前の事凄いと思うぜ?」



 達季は俺の肩をバシっと叩いて激励の言葉をくれる。



 「あぁ、お前もな達季。ナイスファンブル」



 ナイスファンブルというもおかしな話だが、他の表現も思い付かないのでそういった。多分合ってる。



 「ふぅ、まったく・・・。俺が何をしたというんだ」



 「何もしなかったのが問題なんだよ!!」



 俺はもうキレてもいいと思う。もう、キレてもいいよね?いや、もうキレちまったよ。



 「落ち着けって遥。ほら、水でも飲んでクールに・・・な?」



 そう言って後ろの席から達季がペットボトルを差し出してくる。



 俺はそれを受けとるとキャップを開け、一気に口に流し込む。頭に血が上っていたのか、思いの外喉乾いていてガブッと飲んだ。



だが、喉が熱くなり反射的にむせる。俺が飲んだものは水では無い・・・、これは。



 「大丈夫か、遥。一気に飲もうとするから・・・落ち着いて飲もうぜ」



 「いや違う、これ・・・」



 「あ、ごめん遥。間違えて俺のペットボトルに容れていたスピリタスの方を渡しちゃったよ」


 「達季、おま・・・」


 「ごめん、間接キスになるよな・・・ごめん」



 そういうことではない。そしてバックミラーから見えるのだが、顔を赤らめるな。



 「遥、まえ、まえ、まえ、まえ、まえっ!」



 信長が俺に前を見るように大声で促す。



 何が起こったのか分からないが、俺は前方に目を向ける事なく意識をなくした。



 それが俺達の最期となった。


 

 

悲劇ではなく喜劇から始まる異世界転生物語をお楽しみください。

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