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【三分で読める】ほのぼの・癒されシリーズ

番狂わせの君

作者: 架け橋 なな

 駅まで十分の小さなアパートで、僕は毎朝、香り高いコーヒーを飲む。


 厚めの食パンを軽くトーストしてバターを塗り、余裕があれば適当なサラダも作る。


 卵をふわとろのスクランブルエッグに変身させ、塩コショウをひとふり。出来立てをぱくり。


 食べたら顔を洗ってひげを剃り、寝癖を直してパリッとしたシャツに着替え、会社へ。



 僕の朝は、予定通りに進む。それが一番心地よい。



 ある日、僕の目の前に君が現れた。気まぐれで自由奔放。猫みたいな容姿と性格。僕はすぐさま恋に落ち、君と暮らすようになった。



 一人暮らしの長かった僕にとって、誰かと過ごす毎日は新鮮だった。おはよう、ただいま、おかえり、おやすみ。声をかけ合えるのが嬉しかった。



 だけど僕の朝は、予定通りに進まなくなった。



 まず、目覚まし時計を無意識に叩き止める君を起こさないとだめだ。これが大変。


 朝食はご飯に焼き魚、それと味噌汁。


 僕とは全然ちがう食生活。最初は揉めてばかりだったね。



 そのうち交代で朝食を作るようになった。


 君の作るスクランブルエッグは、しっかり火が通っていて。


 僕の作る味噌汁は、味が濃いめだった。



 唯一、コーヒーだけは二人とも毎朝飲んだ。



 僕はブラックコーヒー。


 君はミルクと砂糖たっぷりのカフェオレ。


 毎朝、どちらかが二人分のコーヒーを淹れる。



 君の差し出すコーヒーは、日によって味がまちまちだ。


 ケンカしてる時なんかは、カフェインの暴力かと思うくらいの、どす黒いコーヒーが出てきたりする。



 だけど、なぜだろう。


 自分で淹れたものより、ずっと美味しく感じるんだ。



『今日は怒ってるから相当濃いわよ?』


『熱いから火傷しないようにね!』



 手渡す時にいつも言葉を添えてくれる。



 ゆっくりと味わい、うまいと言う。唐突に込み上げる愛しさを口づけに変えれば、君は「苦いわね」とはにかんで笑った。




 またも僕の朝は、予定通りに進まない。甘く可愛い君のせいで。

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― 新着の感想 ―
[一言] 朝ごはんがパンかご飯か、とか味付けの好みの違いとか、あるあるだよなぁと思いながら読みました。 甘酸っぱい、ほのぼのした話をありがとうございます。
[良い点] あれっ? いつの間に投稿されてた?! 気づかず不覚でした……(割烹見て気づいた) 和風洋風の朝ご飯。違った人生を歩んできたふたりですから、一緒に暮らすと色々ありますよね。 コーヒーがつな…
[良い点] きゅん死にしましたー!!! こう、凸凹してる仲良しカップルは神です! 素敵な作品をありがとうございます!! [一言] 怒ると苦くなるコーヒーw 無意識かと思ってたらわざとですかww かわい…
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