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Stand alone  作者: メリバ厨
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こんな異世界転移ってアリ!?

基本、思い付きで進むお話です。たまに更新があるかもしれないしないかもしれません。もしご縁があれば読んでいただけると幸いです。感想など貰えると泣いて喜ぶ

神宮寺ニエ(19)は預言者である。

そのものが大きな分岐点を迎える時、逃れられない困難を迎える時。どんな選択をすれば窮地を越えられるかなんとなくわかるのだ。

ニエはこの力が好きだった。何か……大きな、人知を超えた存在に見守られているようなそんな気持ちになるからだ。

実際にこの力に助けられたことは何度もあった。

ニエは予言の力を愛している。この力だけが本当の意味でニエの味方であったから。


「来なさい、ニエ」

「はい、お父さん」


神宮寺忠正。

年若いエリートを絵にかいたようなこの男は実の父親ではない。姉から赤ん坊のニエを引き取り、たった一人でここまで育ててくれた恩人だ。

尊敬すべき養父であり……忌むべき存在。

忠正はニエの予言の力を決して認めようとしなかった。人前で決して力を使わないよう命令し、予言を口にしようものなら酷く折檻した。

名は体を表すと言うが、忠正は自分が何より正しいと信じ切っている様子で、決して嘘を認めない男だった。

だから忠正の言う「お前の為を思ってやっているんだ!」という悲鳴のような罵声は真実なのだろうとニエは思っていた。

……この関係さえなければ、歪んだ愛を信じ切っていたのだろうが。


「さぁ、今日も私を癒してくれ。ニエ」


生まれたままの姿で忠正の待つベットへ向かう。そしてされるがままに身を任せた。

忠正の腕の中で、ニエは生きた操り人形だった。

己を正しいと信じ切っている養父は少しも反応しないニエ自身を見て何を思っているのだろうか。

心が凍る。陶器を落としたように心が一瞬にして砕け散る。

だが毎夜過ごしていれば慣れるものだ。

この苦痛を乗り切るために、ニエは祈っていた。

さぁ目を閉じて。まぶだの裏に世界がある。

世界の果てまで続くような草原。草先を駆け抜ける爽やかな風。地平線まで走り抜けて大声で叫びたくなるような広大な空間。

そこにぽつんと立つ東屋が紅茶と共にニエを待っている。

回数を重ねるごとに妄想とは広がっていくものなのか、最近はそこで待つ誰かの姿が見えるようになった。

顔までは見えない。……こっちを見て何か言っている気がする。

早く来いよ!もうこっちは準備万端なんだぞ!早くこんな窮屈なとこから一緒に逃げ出そうぜ!

そうだね、そうしたい。そんな夢物語が叶うなら。キミと一緒に行けたなら。……自由になれたら。

祈りに向かい思わず伸ばした手を忠正が掴む。そう思ったが、ぐいっと力強く引かれてニエは瞼の裏がひっくり返る光景を見た。


「わっ、え、えぇ……?」


初めに出たのは困惑。

どこかガラスを隔てたような光景だった草原が急速に色づいて目の前にあった。

頬を撫でる風の感触。鼻をくすぐる若草のかおり。手を握るあたたかい温度。

目の前にいる人物は目を丸くして、それからキラキラと宝石のような眼差しでニエを見つめた。


「やっっっっっった! やったぞコントラート! お前の言ったとおりだった! これが俺のバディなんだな! やった! やったやったぞ! これで晴れて自由の身だ!」

「ようございましたね。長年の苦労が報われて私も嬉しい限りです。しかしオファー様。喜ぶより先にまずやるべきことがあるのではないかと」

「おっと、そうだったな」


ニエと同い年くらいだろうか。様付けなのだから権力者なのだろう。オファーと呼ばれた男は来ていた上着をニエに差し出した。


「あたたかい季節だけど、そんな格好じゃ流石に寒いだろう。着るといい。すぐにお前に相応しい服を用意させるから少し待ってくれ。……コントラート!」

「はい、ただちに」


コントラートと呼ばれた侍従らしい男は去っていった。

差し出された上着を受け取り、ニエは呆然としていた。

今日は随分リアルな夢だな。目の前の光景を受け止めきれないニエにオファーは軽快に笑って言った。


「異世界なんてさ、初めは驚くことばっかだろうけどすぐ慣れるよ。さ、冒険に行こうぜ! ずっと待ってたんだからな。もう待たないぞ!」


ひと狩いこうぜ!みたいなノリで。





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