『革命』という名の内乱の兆し
書き終えたので投稿します。
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薄暗い森の中に巨木の一本から光が漏れ出している。
「して、状況はどうなっておるニ?」
木の中にいる人物が声を出す。
口の中に食べ物を頬張っている。
肥えた腹に緑のウェーブ掛かった肩までの髪、チョビヒゲを携えたその人物、ポーアとその兄の実の叔父。
―――ナザラ・ツェリア・ペルメスである。
そのナザラとテーブルを囲むように数人の人物が座っている。
テーブルに座る人物の一人が口を開く。
「見張りの奴らからの情報だ。森の西部、アレを仕掛けた。ソコで爆発を確認、‥‥‥‥成功だ。」
「「「「おおおお~!!!!」」」」
周りの人物がどよめく。
「うむ、ようやく奴らも観念が付いてあっちのゲートから出てきたようだニ。グルフフフフ。これでやっとあの忌まわしいアイツらも儂に権利を寄越すかニ。ニヒヒヒヒ!」
ナザラの変な笑いと集まっている者の笑いがホールで合唱する。
「お前ら、三日後だニ!
儂らの栄光なるあの場所、今は忌々しいアイツらに占拠されておるだニが、アイツらにこれ以上占拠されたままは儂ももう耐えられないだニ。動くだニから準備するだニ!!」
「おおおお!!!!」
喝采と気合いを入れるその声が響く。
「ナザラ様、一つお耳に入れておきたい事がございます。」
影からいつの間にかナザラの後ろにその人物が膝を付いていた。周りはその事に気付くよしも無い。気合いを掛け合う事で頭が一杯なのだ。
「キサマか。で、どうしただニか?」
気分の良い所を邪魔させたため不機嫌になる。
「はっ。お気分の良い所、申し訳御座いません。あれが発動した所で妙な魔力を確認いたしました。」
ローブで全身を覆うその人物が報告する。
「妙な魔力かニ?」
「その魔力、今は消えておりますが、爆発を起こす数刻より前、その辺りのあれの失敗作を狩っていたようなのです。これは『クロ』からの情報です。」
それを聞いた瞬間、ナザラに驚きの表情を浮かべる。
「!!!
分かっただニ。だが、もう消えておるだニな?」
「‥‥‥‥はい。」
膝を付いたまま、そのローブの人物は一言だけ言う。
「なら、気にかける必要ないだニ。
アレの爆発を喰らって生きているヤツなどいる筈が無いだニ。仮に生きていたとしても無傷じゃないだニ。三日後の革命までには間に合わないだニよ。
グルフフフフ!
それまで楽しみだニな。今は気分が良いだニよ。グルフフフフ!」
「何もなければよろしいのですが。」
ローブのその人物の囁きなどナザラには聞こえていない。酒を持ってこさせてまるでパーティーのように騒ぎ出す。
影に消えるかのようにスッと消える。
***
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大きくそびえる木の太い枝で先程のローブの人物がヌルッと現れる。
「‥‥‥‥ふう、伝えはしたがまるっきり聞く耳を持っていないアレは。」
枝から下を見下ろすと内乱者が外で祭の
ようにどんちゃん騒ぎを繰り広げている。
「俺は確かに伝えたからな。
この後のことはテメェらが決めな。」
後ろから声が掛けられる。
「『クロ』か。情報提供感謝する。」
その人物は振り返ること無く『クロ』と呼ばれるその人物へと声を掛ける。
「別に感謝されるいわれは無い。
俺は俺の目的の為にテメエらを利用しているだけだからな。」
その言葉は刃物のように鋭く尖り、氷のように冷たい。
ローブの人物は内心で冷や汗をかく。
その感じる魔力も有象無象のようにあるようで無いような物で何時、自分の寝首を狙われるか堪った物では無いのだから。
「その目的とは何だ、クロ?」
「ハッ、答える訳無いだろう、
テメエも影に生きる者なら無闇に首を突っ込む物じゃないぞ。これは俺からの優しさだ。
下手に突っ込むとテメエも、」
ローブの人物はゴクリと唾を飲む。先程から悪寒が走り納まらない。
『闇に消されるぞ。』
その言葉を残して気配が闇に消えていった。
ドッと疲れが立ち込める。
同業者で有りながらアレ程まで自身と違い過ぎる。あれは闇の中から獲物を狩る猛獣だ。
(闇に消される、か。その忠告、確かに。)
疲労を感じながらその人物も闇に消えて溶ける。後には内乱者達のどんちゃん騒ぎする声がその場に残る。
*******
再び西部の森に戻る。
爆発から数刻過ぎ、
既に日が落ちて星が煌めく。
クレーターが出来て以前の姿など跡形も無くなったその中心。
その場所で空間が開き、光の繭が現れる。
繭の糸が徐々に解けて行く。
その繭の中から少女が一人顔を出す。
「ぷはっ!!危なかったのじゃ。」
全身、魔物の血で染まり、砂煙にまみれたミレドが繭の中から出てくる。
魔物が爆発する直前、
ミレドは咄嗟に【纏・雷】を解除して自身の服を作るときに使う魔力の糸を繭のように巻いて【異次元箱】に自身を送ったのだ。
自身を【異次元箱】に入れると、
最悪、出てこれなくなってしまうが、自身に巻いた魔力の糸は未完成な状態の糸の為、
時間が経つと直ぐに消失してしまう。
消失してしまう物は自動的に【異次元箱】から排出されるように魔法を編んでいるため、自然に自身も排出される。
「にしてもあの魔物‥‥‥」
周りを見渡す。
全てが吹っ飛び見る影も無いその場所。
「これはやり過ぎでは無かろうか。」
あの攻撃を受けて無傷なミレドがあの魔物の最後の攻撃に文句を言う。
樹木の消えたその場所でキランと流れ星が流れる。
まるであの魔物が"そんなのありかよ~!!"と叫んでいるかのように星が瞬くのだった。
ミレド、無傷!!
さすがと言っていい程、化け物染みています。
そして、内乱側も再び動き始めます。