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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
95/347

治療

 

「こんな短時間にですか、一体どうやって?」

  ヘイズさんが驚いている。


「詳しくは事情により言えませんが、

俺はいろんな事を魔法で調べる事が出来るのです。

 それで彼等の生命維持をしつつ調べたのです。


それよりも早く解毒剤をお願いします。

じゃないと俺が持ちません。」


  禁書庫を隠しながらなるべく手短に伝えて解毒剤の調合を催促する。残りの魔力量的に持って、後二時間程だろう。


「わ、分かりました。これから調合を開始します。このレシピ、正確なんですよね?」


  ずり落ちていた眼鏡を手で直しながらそう伝えてくる。

  こくりと頷くとヘイズさんは部下の人達に指示を出して回る。ポーアは自身が持っている籠を渡すために一度離れる。持っていた籠をヘイズさんに手渡しして戻ってくる。ヘイズさんはそれを受け取ると作業を開始する。


「凄い汗ですけど、本当に大丈夫なのですか?無理していませんか?」


  籠を渡したポーアが心配する。


「大丈夫、というか今無理しないと死人が出そうだからな。それよりも」


  【探知】してマーキングした魔力の添付をポーアに送る。


「ここまで頼む。」


「‥‥‥‥‥‥分かりました。」

  ポーアは心配してか渋々了承すると歩幅を合わせて歩いてくれる。

そのままその患者の元まで向かう。


 ****


  患者の枕元まで来る。

「ここでいい、ポーア。」


「宜しいのですか?」


「ああ。ここからでも分かる。」

 歩調を止める。

 そのまま怪我の状態を確認する。


(脇腹に大きい切り傷、右腕喪失、さらに細かい擦り傷が多数か。そして傷口が化膿。これなら何とかなるかな。)

「ポーア、すまんが手伝ってくれ。」

  肩を貸したままで申し訳ないがポーアの力は必要不可欠である。


「分かりました。それで、わたくしは何をすればよろしいのですか?」


  よろよろと自分の足で立つ。

 懐のアイテムポーチから此処に来る前に摘んでいた。グレープを皮を向いて口に放り込む。


  全身にぽかぽかする物が立ち込め、力が湧いてくる。―――これで多少は魔力を使える。


「ポーアは感覚を麻痺させる魔法を頼む。」


「感覚を麻痺させると言いますと?」

 

「そうだな‥‥‥。刃物で切っても痛みを感じないことかな。」

  俺のイメージは『麻酔』である。

今現在、麻酔に使える物を知らない。その上、使えたとして量がわからないから下手をすると死んでしまうという最悪な展開になってしまう。


「それでしたら何とかなりそうです。」


「なら、頼めるか。」


「分かりました。」

  ポーアは目の前の人に近付いて腰を下ろす。

「では、参ります。」

 

  ポーアは手を翳し、詠唱をする。


「野に咲く花よ、彼の者を鈍らせよ

神経麻痺(ナーブ・パラライズ)】」


  ポーアの翳した手の内からキラキラと輝く粉のような物が発生。患者に降り注ぐ。


「ネスク様、それでこの後はどうしますか?」

  振り返ってポーアが尋ねてくる。

「適量まで出し続けてくれ。」


  数分後、痛みで苦しんでいたその患者がぐっすりと眠り始めた。


 さて俺も始めるか。

「今から化膿している部分を切除する。ポーア、今から見るのが辛くなるが大丈夫か?

無理なら向こうの手伝いしてていいぞ。」

 彼女の心配をするもポーアは首を横に振る。


「いいえ、見ています。上に立つ者として苦しんでいる者から目を逸らすという事はしたくありません。」

  その瞳には覚悟という物が見てとれる。


「分かった。じゃあ、始めるぞ。」


  まずは化膿している箇所を確認する。

 複数の箇所が化膿して色が黄色く変色している。


(皮膚と黄色く変色している所を取って直ぐに細胞を回復させる)

  両手を翳す。右手に風が渦巻き、左手に緑の光が集まる。

「【切除(メス)】、【再生】」

  シュッと小さな風の刃が化膿している箇所全てを一瞬で切り飛ばす。抉り取った箇所から血が零れ出そうになるも直ぐに皮膚が再生して、新しい皮膚が出来上がる。


「これでよし。後は目を覚ましてくれるだけだ。」


「凄い、です。皮膚がもう再生しています。それに脇の深い傷も治ってる。

 凄い、凄いです、ネスク様!!」


  ポーアが絶賛してくれる。

  そこまで褒められる事は別にしていない。


「それじゃ、次に行こう。」

「はい!」


  目をキラキラと輝かせて張り切って次に行く。


(こういう時、ミレドがいたらどれ程楽やら‥‥)


  今この場に居ないミレドに思う。

 考えていた事を吹っ切り、次の患者に向かう。


 ****

 一方その頃、


  ミレドはというと、


「【雷電(ライトニング)】」


  暗闇の森の中に雷が光って落ちる。

 その威力でミレドの周りを中心に地面が抉れている。その近くには黒焦げの炭と化した魔物が煙を上げて焼けている。


「ふむ、こいつら自体はそこまで強くないようじゃが、それにしても……」

  暗闇から赤く光る目がギョロリとミレドを取り囲んで様子を窺いながら隙を探して見ている。


「――数が多いのう。」

次回投稿、お休みにします。

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