自動モード、発動!!!
1日空きましたが更新します。
投稿している話の誤字、脱字を自分で発見できる部分を修正しました。後、ポーアのセリフの自分の呼称を
私→わたくし
と平仮名にしました。クーシェと漢字が同じだとわたしと読んでしまう方もいらっしゃるのでは、と思い変えました。
「うっ!」
入るとすぐ、
異臭で鼻が詰まり、吐きそうになる。
目の前では凄惨な光景が広がっている。
部屋中の至るところからうめき声。
皆、魘されて苦しみの声をあげている。
包帯でぐるぐる巻きになり横たわる人。
四肢のどれかが欠けてその痛みで苦しむ人。
中には子供から老人まで。
老若男女の人達が額に濡らした布を当てている。
そして、
その人達の周りを白い服を着て自分達と同じように口と鼻を布で覆い忙しなく横たわっている人々を介護している。
その人数は広い空間一杯に白い敷布をして寝かされている。
横目でクーシェを見る。
手を小さな胸に当ててその光景を見ている。その目には驚愕、のような物が窺える。
「この人達は一体?」
「"毒"です。」
クーシェの問いに先に中に入っていたヘイズが答えてくれる。
「一部は前回の襲撃の際に負傷した兵士。
そして残りの子供、女性、老人の方々は
奴らが襲撃の際に用いた毒に感染してしまってね。免疫の弱い人達から感染して今の現状なんです...。」
「そんな――」
クーシェが口を押さえる。
「治療法があるのか?」
ヘイズさんは首を横に振る。
「奴等が使った毒の成分が分かってないため、今は解毒剤の調合をありとあらゆる物で解析している所です。」
「時間はどれくらい掛かるんだ?」
ネスクの問いに再び首を振る。
「分かりません。何もかもが手探り状態の為、現在は彼等をこの空間に隔離して容態をこれ以上悪化させないためにしてます。」
「‥‥‥‥‥‥。」
前の人達へと目を向ける。
「う、‥‥‥ううう、足が‥‥‥痛い、‥‥‥誰か、助けてくれ!」
「苦しい、母ちゃん、父ちゃん‥‥‥助けて」
「あなた‥‥‥苦しいの、い"だ、いよ‥‥‥水、水が欲しい‥‥‥。」
様々な人が阿鼻叫喚の声をあげる。
あまり人族の自分がドルイド族の方々に手を貸して後から恨まれることは避けたいが、
今はそうも言っていられない。
「くっ!クー、彼等を助けるぞ。
クーはあの人達と一緒に彼等の介護を頼む。」
「はい!」
クーシェは指示を出すと白い服の人達に出来ることを聞きに行き、そのまま手伝う。
「私はどうしましょうか?」
ポーアが指示を待っている。
患者の一人に近付く。
――女性の患者だ。
肌は死体のように青くなり、大粒の汗を全身から溢れ出ている。
肌の弾力、そして潤いからしてまだ若い。
ネスクは目を閉じてイメージする。
「【ソフリア・クレ】」
右手の内が光り、透明の鍵が現れる。
「‥‥‥あれは?」
ヘイズさんの声がする。
「分かりません。私も初めて見ます。」
驚愕するポーアの声がする。そういえば、
これを人前で使うのは初めてだな。
今までは使うと自分に隙が出来てしまうため避けて来たが今はその必要が無い。
今の現状だと、【鑑定】をしても毒の詳細な情報は恐らく得られない。
そのためにアレを使う。
鍵を突き出す。何もない筈の空間だが、ガチャリという音が確かに聞こえた。
「【自動モード】発動!!」
右に一回転する。鍵が空間に溶けて消えて目の前に大きなプレートが現れる。
『【自動モード】の起動を確認。
これより、書庫内の知識が使用可能となります。調べる対象をお教え下さい。』
脳内にいつもの無機質な声が聞こえる。
(対象・目の前の女性の容態、毒の成分、そして、必要な解毒剤の成分と割合、そしてその作成方法、そして処置方法)
今、必要な情報を指定する。
『了解致しました。これより分析を行います。しばらくお待ち下さい。』
目の前の画面に大きく
『しばらくお待ち下さい』という文字が現れる。
ネットへの接続のようにその横で光が円を描きピコピコと回っている。
「うぐっ!うがっ!!あああ!」
検索結果を待っていると目の前の女性が突然、苦しい声を上げて暴れ始める。
急いでヘイズさんとポーアがこっちに近寄ってくる。ポーアが暴れる女性を押さえる。
ヘイズさんが容態で診察を行う。
「まずいです!毒が進んで、同時に何かの合併症を起こし始めております!」
「何かってなんだ!」
暴れまわる彼女をポーアと一緒に押さえる。
「分かりませんが、彼女の魔力量が徐々に減って空気中に放出していっています。
……このままでは体が持ちません。」
(くそっ!、早く!!早く!!)
くるくると光が回る画面を見る。
ピコン!
軽快な音と共に画面が変わる。
『ヒュドラ毒[擬]
魔物・ヒュドラの毒を模して作られた毒。
接種した者は高熱で意識を奪い、徐々にその体力を削られる。空気感染はしない。
処置方法
ヒュプラス草とクーランの実、さらにシビラス草を混ぜ合わせる。
割合
ヒュプラス草 一束
クーランの実 一個分の果汁
シビラス草 一摘まみ
合併症
汚血
毒で血液中に流れる魔力を蝕み魔力欠乏症を引き起こさせて徐々に血液を汚染させていく症状。
症状が軽い内に処置をしないと細胞が壊死し、死へと繋がる。』
「ポーア!!彼女は俺が押さえるから、この材料をヘイズさんに頼む!!」
ポーアとヘイズさんに検索結果の画面を二つに複製させて二人の目の前にスライドさせる。
「これは?」
ポーアが確認してくる。
「彼女の、症状の詳細と、その解毒剤の作り方だ!!」
その女性を押さえながら答える。
女性だというのみ思いの外、力が強い。
「分かりました!!急ぎ用意します!!
その間、しばらくお願いします!!!」
「ああ、こればっかしは頼む!!
俺じゃ何がどれなのか、分からん、からな!!けど、早めに頼む!!!
彼女自信の体力が恐らく持たない、から!!」
「行って参ります!」
ポーアが走って急ぎ外に出ていった。
「では、私は調合の準備をします。
いやはや、
我々があれ程苦戦を強いられていた物を
こんな短時間で探し当てるとは、
昨日の事といい、
――あなたは本当に人間ですか?」
「人間だよ、少なくとも。」
立ち上がったヘイズさんは振り返らずに、「そうですか。」と言い残して去っていった。
さてと、このままでは彼女も体力が減る一方だ。何とかしないとな。
「【睡眠】」
押さえて触れている片方の手から発動させる。女性の動きが収まる。
「さて、と‥‥‥」
(まずは合併症の方をどうにかしないとな。)
あまり寝ている女性に触れるのは良くないがそうも言ってられない。
腹部を触れ、自身の魔力を流していく。
ゆっくり、ゆっくりと。
汚血は、患者自身の魔力を喰らい、空気中へと魔力を放出する。
逆に、点滴のように放出する魔力と同じ量の魔力を彼女に入れることでその症状は食い止められる。
後は解毒剤が出来るまでそれを繰り返すだけ。
しかし、その間。
ネスクは他の患者へと診察を行えない。
「さてこの間にどうするか......。」
一人では彼女しか見ていられない。
(こういう時、ミレドの【抜け殻】みたいのがあればな)
【脱け殻】とは、以前、ミレドが見えない男と戦った時に見せた技だ。自身の身代わりを作る魔法。外見は自身と同一。魔力の量は変わるが、質は本物と大差ない。
ネスクはミレドの【脱け殻】を使い、一人に付き、一体を生み出し、点滴代わりにしようとするも、アレの原理が理解できないため断念する。
(なら、一層‥‥‥全員を繋げてみるか)
出来ない代わりに妙案を思い付く。
自身の身も危ういが、 大勢を救うにはこれしかない。