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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
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神木

「ここはわたくし達ドルイド族にとって。

とても大切な場所です。」


  辺りを見渡す。

天井には緑色の何かが生えている。


「あれは‥‥‥苔?」


 緑色の光る苔が天井で輝いている。


「あれは、『ヒカリゴケ』です。空気中の魔素を使い光を生み出す苔です。」


  ポーアが説明してくれる。

 前の世界にも『ヒカリゴケ』というものは存在してたな。あれと同じ物なのだろうか。


「……ここは魔素濃度が高いのか?」

  天井に生えるヒカリゴケが強い光を放っている。


「はい、ここは"神木(しんぼく)様"のお陰でとても魔素濃度が高いのです。神木が魔力を生み出していますので。」


「神木様?」


  聞き慣れない言葉が飛び出した。


「神木様は、かつて女神セレナ様から頂いた苗と伝承されております。その木があれば、

無限の魔力を生み出し、その力で我らを護るとされております。この木はその苗床が何千年も掛けて巨大な樹木になった物です。」


(無限の魔力‥‥‥護る)

  少し考えるとピンと来る。


「入口の結界のことか。」


「はい、仰る通りです。ネスク様は勘が良いのですね。」


  結界は基本、魔力と魔方陣が無いと発動しない。

 聖域の結界もミレドが魔方陣を書き、この上に大量の魔力を込めた魔結晶を供給源として使っている。

  以前、ミレドからレクチャーされた知識だ。

  これはどの結界を作るにしても必要最低限と言っていた。ましてや、この街の結界となると、大量の魔力、恐らくミレドの作った聖域の結界並みの量が必要となる。この木自体が魔力の供給源、かつ魔方陣の役割を果たしているのであろう。

 そう考えると納得がいく。


「神木はドルイド族を護る(かなめ)、とても重要な物で女神様から頂いた数少ない物です。他種族の方々にも女神様からの贈り物があるとされております。」

「へえ~、ということはクーの所にもあったのか?」


「ふぇ?」

  神木を眺めてボーッとしていたクーシェに話し掛けると、可愛らしいような間抜けな解答が帰って来た。

「えーと、だから、クーの所にも女神様から貰った物があったのか?」


「そうですね。確か‥‥あったような気がします。すみません、余り記憶に残っていません。」


「そうか‥‥。まあ、気にするな。無いものはしょうがない。」


(しかし、気になるな。後でこっそり調べてみるか。)

  クーシェの一族の女神様からの贈り物。

 今どこにあり、どうなっているのか。

悪用されて無いと良いけど。


「ネスク様、クーシェ様、用がありますのはこの先の洞窟です。付いてきて下さい。」


  再びポーアの後ろに付いて歩き出す。

 中央に聳える神木を左へと回ると、壁に小さな穴が空いている。ポーアはその穴に近付く。


「私です。開けて下さい。」


  壁がゴトンと外れる。そして、入口が開く。


「‥‥‥お待ちしておりました、ポーア様。さ、中へ。」


  入口から長髪の頬が痩せこけた眼鏡を掛けた男の人がぬぼっと出てくる。


「ポーア様、ネスク様。

こちらは、ヘイズ・ハルバー様です。」


  ポーアがその男性を紹介してくれる。


「ご紹介に預りました、ヘイズ・ハルバーです。ドルイド族のしがない医者をしております。宜しくお願いします。」


  手を出してくる。アメリカのように握手をする習慣もこの世界でもあるようだ。


「ああ、よろしく。」

「宜しくお願いします。」


  ネスクの後にクーシェが代わる代わるに握手をかわす。


「ところでポーア様、失礼ですがこのお二人が噂の聖龍様のお連れ様ですか?」

 ヘイズ・ハルバーと呼ばれるその男の人がポーアに聞いている。


「噂ですか?」


  クーシェを見てヘイズが微笑む。


「聖龍ミレドグラル様が二人のお連れ様と参られたという話です。

 一人は真っ赤な耳と尻尾を持つ獣人族の少女、もう一人は少女と打って変わり黒い目と髪を持つ人族の少年という噂です。」


「はい、その通りです、ヘイズ様。

 このお二人がその噂の方々です。」

  自分達の代わりにポーアが答えてくれる。


「なんと!では兵士の者達を戦闘で劣る人族が打ち負かしたというのは!」

  恐らく昨日の広場のことだろう。


「ああ、それは俺だ。昨日、広場で一悶着あってそれで兵士の人達をちょっと小突いた。」


  目を見開いて驚いているヘイズがポーアに本当のことなのかと目線を送る。


「ええ、それは事実です。ネスク様はミレド様からご指導を受けております。

あの邪龍とも渡り合ったお方です。そんな人が負ける筈ありません。」


 ポーアの言葉に更に驚愕してこちらを向く。

「では、そちらの‥‥えーと、」


「クーシェです。種族は、『灼熱の狼(カプシモ・ウルフ)族』です。」


「ああ、‥‥‥では‥‥‥あの村の」


「はい、生き残りです。"あの村"ということはヘイズ様は私の村をご存知なのですか?」


「ええ、野暮用で少しね。」


「ヘイズ様はこの街の医療責任者ですので、あちこちに色んな伝手を持っております。ヘイズ様、中の人達はどうなっておりますか?」


 急にヘイズの顔が固くなる。

 ヘイズの様子にクーシェと顔を見合わせる。


「‥‥‥まあ、中で見てください。見た方が早いですから。」

  中へと手招きをする。


「クーシェ様、ネスク様。ここから先は危険ですのでこちらをお使いください。」

  ポーアが何かを渡してくる。白い布である。


「こちらをこう、

鼻と口を覆うようにして下さい。」


  言われた通り口と鼻を布で覆い、頭の後ろで結ぶ。クーシェも口と鼻を覆い自分と同じように後ろで結ぼうとするが、うまく結べない。


  後ろに回りクーシェの後ろで結んであげる。


「ありがとうございます、ネスク様。」

「御安いご用だ。クー、行こう!」


「はい!」

 ポーアとヘイズは既に部屋の中に踏み入っている。

 二人に追い付くためにクーシェと一緒に部屋へと入る。

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