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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
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懐かしき日の夢

<ネスク>


「‥‥ですよ~。‥‥きて下さ~い!」


  誰かが喋る声がする。眠気があり、

気だるい気持ちを抑えて意識を覚醒させる。

  ぼやける視界で上体を起こす。


「はあ~あ、‥‥‥うんーん。」

 大きな欠伸をして身体を伸ばす。

 うつらうつらと船を漕ぐ。


「‥‥‥‥‥‥‥。」


  眠たい。非常に眠たい。このままもう一度、横になって眠ろう。


  起こした上体を再び横にして眠ろうとする。

――すると、

「【(アイシクル)】」


 突如、頬に冷たい物が当たる。


「‥‥‥。冷たっ!!」


  脳がその感触に驚き、

まどろみの中にあった意識が一気に覚醒した。

寝床から飛び起きる。


 何事かと思いキョロキョロ。


「おはようございます、ネスク様!」


  見渡した先にクーシェがいた。

そしてその手には、()()を放つ手が翳されていた。


 どうやら、氷魔法で起こされたようだ。


……魔力の無駄遣いのような気がする。


「おはよう、クー。朝から刺激的な起こし方をしてくれて―――どうもありがとう。」


 本当にある意味刺激的な起こし方であった。


 さすがにこの起こし方だと、心臓が持たないからその内、目覚まし時計でも作ろうかな。


「いえ、大したことありません。それよりも、

―――意外です。ネスク様が朝に弱いなんて。

いつもは早起きだったと記憶しておりましたが‥‥‥。」

  きょとんとして不思議そうにするクーシェ。

  瞼を擦り、再び大きく伸びる。


「んん、ん?ああ、久しぶりに懐かしい夢を見てたからな。」


「懐かしい夢?」


「子供の頃の思い出‥‥‥かな。」


  遠い頃の思い出を思い返す。

 小夜と俺と残りの連れ、

夕暮れの日に巨木で一緒に見た夕陽が

―――今もどこか心に引っ掛かっている。


 もう自分の中では切り離してしまった物。


戻ることの出来ない過去が夢になって現れた。


(俺はまだ……

 どこかであの日のように

戻りたいと思っているのだろうか。

もう、会うことも出来ないアイツらと――。)


「ネスク様?ネスク様!!」


  耳元でクーシェの呼ぶ声。

クーシェの声で我に返る。声の方に首を振ると、

上目遣いでクーシェが自分を見つめていた。



  唇が触れそうな程顔が近い。


(!!!)


 ドキリと自分の胸がときめくのが分かる。


「早く行きましょう!朝御飯の準備が出来てます。」


  クーシェの顔が離れて行き、部屋の入口前。

こちらに再び振り返る。


「‥‥‥あ、ああ、直ぐ行く。」


  尻尾を揺らして扉を閉めてクーシェが出ていった。


(はあ……、本当に今日は心臓に悪い日だ。

雨でも降らないと良いけど。)


  立ち尽くしていた体を動かしてさっさとアイテムポーチの中にある着替えに替える。


 そして、部屋を出て一階へと下りる。


 *****


「おはようございます、ネスク様、クーシェ様」


 朝食を食べ終わる頃に、

玄関からポーアがやって来た。


「ポーアか、おはよう」

「おはようございます。ポーア様」


  二人で食器を片付けながら挨拶をする。


「ミレド様は‥‥‥もう出掛けられたのですか?」


  ポーアが家の中を見渡して聞く。


「はい、私が起きてきた頃に出掛けられました。」


  ミレドの姿を見ていなかったため驚きである。

 まだ部屋で寝ている物だとばかり思っていた。


「早いな。もう出ていたのか。」


「はい、

今日中にする事が山程あるそうなので、

詳しい事情までは伺っていませんが。


風のように素早い動きで出ていかれました。」


「そうですね。

ミレド様の負担はとても大きいと思います。

何せ、今現在。私達、ドルイドはかなり危機的状態ですので。」


  真剣な表情で言うポーア。

その剣幕に本当の事なのだと判断が付く。


「‥‥よし、これで最後ですので、出掛ける準備を致しましょう。ネスク様!」

  クーシェは最後の皿をキッチンの干し場に置いて、そそくさと二階へと上がって行く。


  俺もそれに習って部屋に刀を取りに部屋へ。


 部屋には脱いだ服が散らかっていた。

次いでにアイテムポーチを服にしまう。


  再び一階へと下りると入口に先にクーシェが到着し、ポーアと話している。


「忘れ物は無いのか?」


「はい!必要な物は取りましたので。」


 腰に猪牛の皮で作ったポーチが下げられている。――これは俺がクーシェに作ったものだ。

  俺の物より質が少し下がるが、

それでも上級クラスのアイテムポーチだ。


「さて、行きましょうか?お二人とも。」


「ああ」「はい!!」


  二人で返事を返すと家の扉を開き、外へと出る。


  相変わらず外は巨木で太陽が隠され朝なのか夜なのかの判別が付かない。


 そして、光の玉のような何かが飛んでいる。


 不規則なその動きは全然予測が出来ない。


「それではお二人とも、付いてきて下さい。」


  ポーアが先導して歩き出す。



  昨日の広場まで来てから広場を抜けて東へと進む。―――南に行くと入ってきた入口があるそうだ。


「どちらまで行かれるのですか?」


  クーシェが少し先に歩いているポーアに聞いている。ポーアは振り返らずに、


「もうすぐそこです。

 ‥‥‥ほら、見えてきました。」


  先に視線を送ると、立ち並んでいた木を抜けて、洞窟がある。

  篝火が所々に炊かれて洞窟の中に続いている。


  そのままポーアは中へと入っていく。

 クーシェと顔を見合わせてポーアの後に続く。


 長い一本道が下へ続く。


  数分、いや数十分は歩いたか。一本道が広げる。


「ここは‥‥‥。」


………巨大な植物の根だろうか。

地中から天井に伸びている。

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