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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
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兄からの手紙


 足の痺れからやっと、解放された。


  自分の部屋へと続く階段を上り、ドアを開けて中に入る。


 ベッドの上には今日、持っていっていたポーチが無造作に置かれている。

 窓から差す光に照らされて真っ暗な部屋の中でも直ぐに見つけられる。



  ポーチを取り、中を探る。

そして、白い謎の箱を取り出す。


 表面は無地の白い箱。重さは軽い。振るとカタカタと軽い音がする。


「‥‥‥‥‥‥‥。」


  ジーと見つめても何も起きない。

 マジックのようにパッーン!と破裂して中から鳩が出てきたりもしない。


「兄さんは何でこんな物、残したんだろう。」


  あの場所は人通りも少なく、訪れる人も滅多にいない。更に大抵の人は巨木の大きさに驚愕して裏にある穴自体、知る人も少ない。それが幸いしてこの箱は見つかることがなかったのであろう。


 恐らくは‥‥‥‥。


  中から何か飛び出して来そうで怖いため、恐る恐る箱を開ける。


「‥‥‥えっ。」


  中の物をを取り出し驚愕。中から綺麗に包装された箱が出てきたからだ。


ご丁寧に赤いリボンが掛けられている。

 箱の中から箱、マトリョーシカのようである。終いには米粒程の箱が出てきたりして‥‥‥。

  話を戻して蝶々結びのリボンを解いて包装紙を取っ払うと、再び白い箱。

 やはりマトリョーシカさんなのか?


 そして、出てきた白い箱を開ける。

  中からアゲハ蝶の形を型どり、シルバーのチェーンが繋がれた小さなネックレスが出てきた。蝶の部分が淡い紫色に光る。

 それと一緒に折り畳まれた紙が出てくる。


  折り畳まれた紙を広げる。兄さんの字だ。


『小夜へ


  小夜、この手紙を読んでいるということは本を見て、あの場所にいったということですね。転校しても、あの場所にもう一度行って欲しいので、一緒にプレゼントを入れて隠しておきました。こういうのは柄では無いので気に入って貰えると嬉しいです。

 俺の主観で決めたのでセンスが悪かったら、ごめん。安物なので欲しくなければ捨てて下さい。


 高校生活は楽しいですか?


  俺は色々と大変ですが元気に頑張っています。小夜もこれから大変になると思いますが頑張って下さい。

  まさかとは思いますが、もう彼氏は出来てたりしないですか?

 していたら、そいつの根性を確認したいのでぜひ、一度会わせて下さい。(笑)

  また一緒に思い出のあの場所で会えることを楽しみにしてます。

             親愛なる兄より』


「‥‥‥全く、バカ兄さんが」


  子供じみた仕掛け、昔と何も変わっていない。

 彼氏なんて、転校したてで出来る筈が無いじゃない。ナナミンと同じで昔から引っ込み思案なこと兄さんが一番分かっているじゃない!


 頑張って出来たのは女の子の友達ぐらいだよ。

 それにこんなの、捨てられるわけ、ない。

 兄さんがくれた最後のプレゼントなんだから。



「捨てられるわけ、‥‥‥ないじゃない。」


  目頭が熱くなる。ポトリと頬を伝い手紙に水滴が落ち、字が少し滲む。


「う、‥‥うう、‥‥‥う、兄さん、」


  葬式の時も、兄の素性を知った時も涙が出なかった。でも、その手紙を読んで涙が止まらなくなる。梅雨の豪雨のように涙が次々と流れて全然止まらない。


「うわぁぁぁぁぁ!!!」


  ベッドの上で月に照らされて小夜が泣く。

 たった一人の兄を亡くした悲しみと兄が残してくれた暖かな思い出を胸に。


 ***              ***


  月が照らすベッドの上で、

体を猫のように丸くして頬に涙の跡を残してすやすやと眠る。


  手の中にある紫の蝶が月に照らされて淡く暖かく光る。


 手の平の蝶が導いているかのようにキラキラと輝く。

そして、幸せそうな表情で小夜は眠る。


  私は夢を見る。

 昔のあの街を一望出来るあの場所で兄と私、夕焼けに染まる街を二人で一緒に手を繋いで眺める。

  呼ばれて振り返ると幼いナナミンと木に登るTKコンビ。

  三人が私達の所に来て、五人で一緒に夕日を見る。

 誰も欠けていない頃の幸せだった夢を見る。

次からネスク(大朏)視点に戻ります。

他より短くなりましたが、小夜視点ここで終わりです。

小夜ちゃん、涙が流せて良かったです。悲しい時はしっかりと泣いた方がスッキリする事もあります。我慢することも良いですが耐えきれない時はしっかり泣きましょう。

なんか、小夜ちゃんといい、クーシェやミレドといい、泣いているキャラが多くなった気がします。(笑)

次のネスク達の動きですが、前日の通り、ポーアとクーシェとネスクがとある場所に向かって色々とする話です。(ミレドは別行動)

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