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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
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思い出の場所と謎の箱

長くなったので一度切ります。

 

「はあ、‥‥はあ、‥‥はあ」


  長い階段を上りながら息を切らす。

 後ろからカバンを手で抱えてナナミンが上ってくる。

 こっち息を切らしている。

  上を見上げると、まだ続く階段の上に大きな木がそびえ立っている。


「もうちょっと‥‥‥。」


  乳酸菌が溜まり、気だるくなってきた足を持ち上げて一段、また一段と上っていく。


  天気も回復し、雲の合間から再び真夏の太陽が顔を出している。


――校舎を出る前に雨が上がって良かった。


 雨が降ったことで気温も少し下がり、丁度良い環境になっている。


  ゴールが見えた階段を上り切り一息つく。

 ワンピースのスカートから雨で湿った風が通り抜ける。階段を上り汗をかいた体には涼しい。でも、帰ったらお風呂に入りたい。


  あとからナナミンが上ってくる。


「ここに何があるの?兄さん‥‥‥。」

 答える筈の無い問いが風に乗って飛んでゆく。

  上った先に巨木にしめ縄が締められた木がある。


  ビュービューと夏風が吹く。


肩まで伸びた髪が風に乗って舞う。


「サヨちゃん、‥‥懐かしいね。」


「‥‥‥うん」


  ここは昔。

私達が子供の頃、この木でよく遊んだ所。


 この木に登ったり、木をぐるぐる回って鬼ごっこをして遊んだ。

 帰り道には階段を使ってグリコをよくした。

 ナナミンと初めて会ったのもこの木である。


 私と兄さんが遊んでいると、この木の傍でナナミンが泣いている所を兄さんが発見し、

そこから仲良くなったのである。


「確か、‥‥この辺りに」


  木の裏へと回る。

 そこにはぽっかりと木に空洞が空いている。昔からその穴はあり、その中に手を入れてよく遊んだりもした。


 何気なく、その穴に久しぶりに手を突っ込んで見る。昔に比べると腕も大きくなって、少し入れにくいが入る。


「‥‥‥ん?何か、手に‥‥‥。」


  探っていると手が底に付き、木とは別の材質の何かが触れた。


 それを引っ張り上げて取り出そうとする。


 中々、穴にフィットしているため掴みにくいがどうにかして取り出す。


  手に納まるくらいの包みにくるまれた小さな紙の箱だった。


  箱を前後に振って中の物を確認する。

重さも空気のように軽い。


 カタカタカタと軽い音が鳴る。


「何か見つけた?」


  ナナミンに声を掛けられ巡らしていた思考を切りナナミンの元に戻る。


「裏の穴に、これがあった」

 ナナミンは不思議そうに思いながら箱を観察している。

「‥‥‥‥サヨちゃん、開けてみないの?」


「‥‥‥‥‥何か、開けるの怖い。中から虫とかが出てくるかもしれないし。」


  私がそう言うとナナミンが青ざめる。私も虫は好きではないがナナミン程ではない。

 ‥‥‥‥たぶん


  箱の感じからして最近入れられた物だろうからなんとも言えない。


「帰ってから開けることにするよ。」


「うん、そうしよう。そろそろ、日も暮れてきたし、ね。」


  街の方角に目を向ける。

 ここはこの街を一望できる所。

その向こうに沈みかけの太陽がある。


 太陽に照らされて、街がオレンジ色に変わっていく。蝉が忙しなく鳴き続ける。


「本当にこの景色を眺めるのは久しぶり。昔はよく、見ていたのに。」


「そうだね。‥‥‥でも、また一緒に見れて良かったね。」


「うん‥‥‥。」


  母さんが離婚をして一年、この街を離れてこの景色ももう見ることなんてないと思ってたけど、また見れて良かった。


本当に、良かっ、た。


  恵が左にいる。


しかし、反対の右横を見ても大朏はいない。

この世界のもうどこにもいない。


 胸がキュッと締め付けられる。

 ズキンと鼓動が大きく一跳ねする。

ざわざわとして心が落ち着かない。


「サヨちゃんは、好きな人とか出来たの?」


「な、何?急にどうしたの、ナナミン?」


 思わずナナミンを凝視してしまう。

 何だか体も熱い。太陽のせいかな。


「何かこういうの聞いてみたかったから。」


  日に照らされる太陽を見ながらナナミンが答える。


風が凪いで腰まであるナナミンの髪が揺れる。

「い、いない、よ。ここ、一年、転校とか、色々あったから。」


「そっか。確かに転校して直ぐに彼氏が出来るとかは流石に、……ないか。

サヨちゃん、奥手だしね。」


  悪戯じみた視線を混ぜて此方に目を送ってくる。

「ちょ、ちょっと!ナナミン!

それは言わないでよ~!

私、これでも新しい学校でも頑張っているんだから~!」


  軽くナナミンの腕辺りをぽかぽかと殴る。


「ははっ!!ゴメンゴメン。サヨちゃん可愛いからつい、弄りたくなっちゃうんだぁ」


  笑って素直に謝る。じゃれ会う二人。

 端からみたらまるで姉妹のように見える。

 しばらくそうして二人でじゃれ会っているとナナミンの唐突な言葉に働いていた脳に異常をきたす。


「実はさ‥‥‥夏休み前に孝希君に告られちゃったんだ。」


 ‥‥‥‥‥‥‥。

  衝撃が走りすぎて脳が活動を停止してしまう。





「え~~~~~~~~~!!」

  太陽が傾き、オレンジ色に染まっていく空に小夜の声が響く。


他の幼馴染みの二人も登場させるか迷いましたが、告白した後の話なので気まずい話になりそうだったので止めました。因みに大朏の隠していた箱の中身は次回以降に持ち越します。

開けた瞬間に蜘蛛とかが出てくるのは嫌ですね(笑)。

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