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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
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嵐山 小夜

『番組の途中ですが、臨時ニュースをお伝えします。○△□県、◯X△市○△町の住宅街にて火災が発生しました。消防隊が駆けつけましたが、時既に遅く、鎮火した際には、家は全焼となっておりました。家の跡地からは全身黒焦げの遺体が見つかったとのことです。まだ詳しい事はわかっておりませんので情報が入り次第お伝えします。以上臨時ニュースでした。』

  さりげなく、嵌まってもいないドラマを見ていると突然、ニュースに切り替わった。隣の県の筈なのだが余程、大規模だったためかこっちの県にもそのニュースが回って来ていた。


「小夜!ご飯出来たわよ!!降りてらっしゃい!」

 一階から母さんの声が響いて来る。

「今、行く!!」

  テレビを消し、自分の部屋の電気を消して一階に降りる。

 リビングに入ると、

晩ご飯の良い匂いが鼻に付く。


  テーブルの上にはサラダと鶏の唐揚げと白いご飯が置かれて、湯気を上げていた。


「お箸は自分で持って行きなさい。」

 母さんが自分の食べる御飯をついでいる。


「えー、めんどい。母さん持ってきて。」

 冷蔵庫からお茶、そして注ぐコップを持ってテーブルへと向かう。


「あなたももう高校生なのだから。

自分のことは自分で準備なさい。

あなたより大朏の方がよっぽど苦労をしている筈なのだから。」

「兄さんは自分でする方を選んだのだから、当然よ。私は楽が出来る方を選んだからそれは活用しないわけにはいかないよ。」

「全く、小夜は誰に似たのかしらね。」

「それは、母さんと父さんでしょ。」


  何気ない親子の会話がキッチンで交わされる。


しかし、私の家には私と母さんしかいない。


  私の名前は、嵐山 (あらしやま )小夜(さよ)

 母さんが離婚する前までは《十六夜 小夜》であった。

――十六夜(いざよい) 大朏(おおづき)とは私の兄。

  小さい頃から兄さんの後を付いていき、よく兄さんの友達と遊んでいた。

  しかし、兄さんの友達とは引っ越してからは連絡を取っていない。


 当然といえば当然である。


 でも兄さんの友達の一人。七草 恵さん。私は"ナナミン"と呼んでいるが、

 彼女とは今もよく連絡を取っていた。七草のナナと恵のミ、そこにンを可愛く付け足して"ナナミン"である。

  兄さんはお人好しといっても過言ないくらいお人好し。―――困っている子供がいれば助けてあげたり、重い荷物を持っている老人がいれば持ってあげたりと例を挙げれば切りがない。


でも、そんな兄さんを私は尊敬していた。


  母さんが離婚を切り出した時も、

兄さんだけ残ると言った。

母さんはそう、と一言だけ。

 そう言うだけであったが、兄さんが部屋に戻った後に理由を聞いてみた。すると、いつかまた皆で家族として一緒に暮らしたいと言った。

  バカみたいと思ったが私の心の隅では兄さんらしいとも思った。


 プルルル、プルルルル


 けたたましい電話の音が鳴る。


「はい、嵐山です。」

 母さんがお箸を持ってきてから電話を取り出る。


「頂きます。」

 私は母さんが持ってきたお箸を使いそのままモグモグと食べ始める。


「はい、‥‥‥‥そうですけど、えっ、‥‥‥‥‥ですか?‥‥‥‥が何か?


(ご飯美味し♪母さん、どうしたんだろう?

いつもより電話が長いけど、

――あっ、長いのはいつも通りか。まあ、いいか。けど早くしないとご飯冷めちゃうよ。)


 ご飯をモグモグと食べながらお箸でおかずを突つきながら食べ進めていく。

  揚げたての唐揚げを一噛みすると中に閉じ込められた肉汁がじゅわっと口の中に広がる。

 アチッアチと口遊みながら、美味しく食べていく。母さんの唐揚げは最高♪


「ごちそうさま。」


  全部残さず食べ終わり、手を合わした後、お箸を置く。

  食べた皿を重ねて流し台に持っていく。


(あっ、どうせなら母さんにも私がちゃんと出来るところを見せておこうっと。)


 普段はあまりしないが自分の使った皿を石鹸で洗い流して干していく。


「これで良し。」

 全部片付け捲っていた服の袖を下ろす。


 ガチャリ


 横を見ると廊下に設置してある電話を電話台に戻している母さんの姿が目に入る。


「母さん!片付けまで全部したよ!フフ~ン、私、ちゃんとやれば出来るんだよ。こう見たって!」

 胸を張って自信満々に母さんへ報告する。

 しかし、母さんはボーッとしたままである。


(いつもならここは、"これぐらい出来なくちゃいつまでも経っても子どものままよ"という所だけどどうしたんだろう?)


  突然、母さんは膝から崩れ落ちる。

「か、母さん!?急に倒れてどうしたの!?」

 急に倒れ込んだ母さんを支えるべく屈んで手を母さんの膝の上に置く。すると、ポトリと手の上に何かが落ちる。顔を上げると母さんが泣いていた。いつも気丈な母さんがである。


 唇を震わせながら、しゃくり上がりそうな声を必死で戻して喋る。

「‥‥‥小夜、落ち着いて聞いて欲しいの。さっき、警察から連絡があったの。‥‥‥‥大朏、あなたの兄さんが‥‥‥‥‥」


「警察?」

 聞き慣れない言葉に思わず聞き返してしまったが母さんはその答えに答えてくれないのでごくりと唾を呑む。


 落ちてくる涙が大きくなっていく。歯がカタカタと音を鳴らす。

 そして、母さんの目を見つめながら次に出た言葉に意識がふらつきそうになった。

「‥‥‥‥‥‥亡くなったの。」


「‥‥‥‥‥‥えっ。」

  一瞬、何を言われたのか理解が追い付かなくなった。

(母さんは今、何て言った。亡くなった?いったい誰が?)


『大朏、あなたの兄さんが亡くなったの。』


 前後の言葉を繋げて脳内で壊れたレコードの様に繰り返される。


――嘘、だっ。何で、兄さんが?

あんなに、元気だった兄さんがどうして?


「‥‥‥‥警察が、いうには、放火で、逃げ遅れた、そうよ。」


 そこで宙ぶらりんだった意識が飛ぶ。

 おぼろ気な意識下で母さんが必死に呼び続ける声が聞こえる。





 そして、そこから先は覚えていない。

 次に気付けば自分のベッドの上に横になっていた。

もう、前回の書き方で分かっていた人もいるかもしれませんが妹ちゃん登場です。

ここで一番最初の方のフラグ回収をさせて頂きました。次回も小夜視点でお送り致します。

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