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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
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処遇の行きどころ


「‥‥‥ポーア達か。」


  駆けつけて来たポーア達へと振り返る。

ネスクに気付いたポーア達が駆け寄って来る。


「ネスク様!!これは一体、どうなっているのですか!!」


「俺も詳しくは分からん。そこの木で休んでいたら突然襲われた。けど、こいつらの口ぶりからして"人間である"俺に復讐するため、らしい。」

 ポーアは黙り込む。

 二人の間に沈黙が訪れる。

 何とも言い表せない気持ちに苛まれる。


「あ、あの、ネスク様、おケガはしてませんか?」

  後ろで成り行きを見守っていたクーシェが心配そうに聞いてくる。


「あ、ああ。何ともないよ。それよりあっちをどうにかしてやった方が良いと思うよ。」

 倒れている甲冑姿の男達へと視線を送る。


「特にそこで伸びている男、かなり威力は押さえたが結構、痛い魔法を食らったから。」

  白目を剥いている男を指差す。


「そ、そうですね。」

  クーシェが先に伸びている男に近づき、屈んで回復魔法を施す。


「あの、ネスク様。一体どの様にしてこのように相手を不能させたのでしょうか?」

  男の容態を見ながらクーシェが飽きれ混じりに聞いてくる。


「ちょいと額を、魔法で小突いたら~、かな?」


「"ちょっと"じゃないですよ!!どう見ても常識の『ちょっと』よりやり過ぎですよ!!こ・れ・は!!」


  クーシェにおこられツッコミされた。

――なので、舌を出して可愛く、てへっ☆とする。


 クーシェの尻尾がピーンと逆立ち喉の奥でグググと音を鳴らせる。これ、後で怒られるな、と心の中で思う。


  そんな二人を余所にポーアは、後ろに控えていた甲冑姿の人達に手で合図を出してクーシェが治した人から順番に縄で縛り上げられていく。

  その様子を見ながら先程から疑問になっていることを確認がてらポーアに聞く。

「結局、会議はどうしたんだ?」


「―――外の騒ぎで一時中断となりました。

わたくしも抜ける口実が出来ましたので、その波に乗った次第です。」


「そうか、それはすまないことをしたな。」


「いえ、それはわたくし共達、ドルイド族の失態が招いた事ですから。

謝らなければ行けないのは私共の方です。危険に晒してしまい申し訳ありません。」

 頭を下げてポーアは言う。


「その事はもういいよ。

元々その覚悟で来たんだしな。

‥‥‥けど、立て続けは少々キツイから今日は休みたい。」

  ネスクの言った意味がわからない様子でポーアは頭を上げる。


「でしたら宿にご案内致します。

付いてきてください。」

  ポーアが歩き出したためネスクもそれに追随する。治療を終えたクーシェも戻って来てその後ろに付く。

 ポーアは事後処理を甲冑の人に頼むと広場に集まっていた人混みを抜けて奥へと進んでいく。

どこぞのゲームのように縦に連なって進んでいく。


 パララッ、パッラッラ~♪


―――クーシェが仲間に加わった。


 人混みを抜け村の奥へと進んでいくネスク達の後ろ姿をドルイドの人々は見つめていた。



「前に男の人と触れ合った事がないと仰っていましたがお兄さんとは仲良く無いのですか?」


 街道を歩きながらポーアへとクーシェが聞く。そんなやり取りを横で聞きながら歩く。



「お兄様は幼い頃からお父様の仕事に付き添っておりましたからあまり私とは接点がありませんでした。


――時々、様子を見に来ることがあっても。


一、二時間だけ私とふれあうと、

後のことを召し使いの方に任せて直ぐに戻ってしまっておりました。」


「ポーア様のお母様はどうしたのでしょうか?お姿を見かけませでしたが。」


「わたくしを生んで直ぐに亡くなりました。元々あまりお体が強い方ではなかったと伺っております。」


「‥‥‥そうだった、のですか。」

 クーシェはバツが悪そうに下を俯く。

 そうこうしていると辺りの家が無くなり一つだけポツンとある巨木の家が現れる。


「この家をお使いください。」


 家の前に着くと二人を扉を開き、中へと誘導する。中は手入れがされておりそれなりの広さもある。

 螺旋状に伸びた階段が直ぐ横に連なり正面にはテーブルと椅子、そしてその奥に台所のような所となっている。


「では、わたくしは一度戻りますので、これにて。」

 ポーアはクーシェとネスクを中へと扉を閉めようとする。

「あ、ちょっと待って!!ポーア!!」

 扉を閉めて出ていこうとするポーアを呼び止める。

「どうしたのでしょうか?ネスク様」

 呼び止められたことにポーアは首を傾げながら閉めようとする扉を止める。


「あの男達だが、あまり彼らを強く罰しないでやってくれ。」

  ネスク自身彼らを罰するつもりで殺さなかった訳ではない。

――同族の仲間を殺されたのであれば、

彼らの怒りも当然なのだから。

 例え、襲ってきた相手であろうとそれ以上関係を拗らせたくも無い。

  あの場で彼らを殺していれば、それはドルイド全体を本格的に敵に回すことと道義である。ポーアの為にもそれだけは避けたい。


「―――宜しいのですか?

彼らはネスク様のお命を狙ったのですよ?そんな輩に罰も与えないのであれば又、

彼らはネスク様のお命を狙いますよ?それでも宜しいのですか?」


「未遂で終わったんだからそれで良い。それにあれぐらいでやられるようでは所詮、

俺の命はその程度だったということだ。

だから、頼む。」

 頭を下げて頼み込む。


「‥‥‥‥分かりました。それは本来、こちらから頼まなければならないことなのですが、ネスク様のお心を汲み取り、彼らの処遇についてをお兄様に伝えておきます。」


  ポーアは一礼すると扉を閉じて外へと出て行った。

 家の中には、何故か不機嫌なクーシェと二人で取り残される。

明けましておめでとうございます。今年も『守護者の織り成す幻叡郷』を宜しく御願い致します。

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