ソフィア
ところどころ文字化けをしているが、今の自分と前世の名前は分かった。
操作を終わらせプレートを閉じる。
「‥‥‥‥名前は分かったよ。それで、調べるのが前世、『十六夜 大朏』について書かれた本と、【聖域】と呼ばれている場所。あと、ついでにこの身体の『ネスク』について書かれた本をお願い!!」
「畏まりました。探している間はそちらの椅子に腰掛けてお待ちください。」
彼女が手を指した方に机と椅子が一セット設置してある。彼女に施されるまま椅子に座る。
そして、しばらくすると、その少女が分厚い本を三冊。両手で抱えて持ってくる。
「お待たせ致しました主様」
「ありがとう、ソフィア」
「‥‥‥‥『ソフィア』とは?」
「ん?あぁ、キミの名前だよ。この書庫の鍵の名前から取ったんだ。確か、前の世界での言葉の意味が【叡智】だったかな。キミにピッタリだと思うんだけど、どう、かな?ダメかな?」
「‥‥いえ、気に入りました。これからは、
"ソフィア"と名乗らせていただきます。」
「‥‥良かった。ずっと、名無しだと困るからね。それに、前の名前の【ダンタリアン】ってのは‥‥なんていうか。女の子に付けるには似合わなかったから。」
「‥‥‥‥女の子…。」
ソフィアの表情はあまり表に出ないので、分かりづらい。でも、頭に生えたような一本だけの跳ね毛が跳ねている。ピコピコと動いているので恐らく上機嫌なのだろう。
―――何というか、小動物のようで可愛い。
背が今の自分より頭一つ分だけ小さいため撫で回したくなる。
彼女の様子を観察していると、
「それで‥‥主様。この本はどうしましょうか?」
「え?ああ!!机の上に置いて!それと、その主様なんだけど、
―――『ネスク』か『オオヅキ』にしてくれない?
『マスター』というのは‥‥こそばゆい。」
先ほど考えていた事を伝えるとソフィアが考え込む。どちらを使うのか悩んでくれているのだろうな。
「‥‥‥‥では、オオスク様で。」
「いやいや、何で混ぜた???」
ソフィアは首を傾げながら、
「 ???
マスターがいた世界では、二人が一人の人間になった時、名前を混ぜると本に書かれていましたから。」
「いや、別におかしなポーズをして、はぁ!!ってしてないし、そもそも元からこの身体一つだけだったから!!!」
「記憶が二つあるのですから、30分したら分離するということもあり得るのでは?」
「記憶が二つあってももう一つの方はもう既にに死んでいるからね。仮に分離しても死体だから!!」
「天使の輪を付けて登場するということもあり得ますよ。」
「‥‥はあ、天使の輪を付けて登場もしないし、恐らく分離もしないから。ってか、キミはどうしてそのネタを知っているんだよ!?」
「初起動した際、マスターの情報を更新しましたから。その際にマスターの中の情報を全て上書きしています。」
「なんだよ、それ‥‥‥‥。」
どちらかというとあまり喋らない方かと思ったけど、彼女はユーモラスだった。
「‥‥冗談はさておき、『オオヅキ様』と呼ばせていただきます。」
‥‥‥‥冗談だったんだ。
結構、真剣に言っている顔だったんだが、また話が逸れそうだから黙っておこう。
彼女の冗談に苦笑しながら、
「ああ、‥‥あと「様」も付けなくて良いから。」
「いえ、あなたは主様なので『様』は付けます。これは私の中で絶対です。」
その後は、「様」の付ける、付けないで再び話が逸れる。終いには二人の言い争いになり、硬直状態となり、最終的にはじゃんけんの一発勝負となり、結果は「様」を付けるで決着がついた。
この言い争いでまた、時間が刻々と進んでいった。
※
「様」の付ける付けないで時間を随分と費やしてしまった為、
急ピッチで調べものを進めて行く。
初めに『オオヅキ』。
―――自分の前世のことである。
自分の事情、家族、幼馴じみ、クラスメイト、そしてその顛末。当時のことを覚えていないため、自分のことを客観的にしか見ることができない。だけど、その顛末はあまりに報われない顛末だった事だけは分かった。
今の体の記憶についても調べてみる。
どうやら「ココロナ」と言う小さな村に両親二人と住んでいたようだ。何故、村を出たのかを調べてみることにした。
しかし、ドクンと一回心臓が大きく跳ねる。
急に胸が締め付けられ、呼吸をするのが荒くなり気分が悪くなる。
まるで体が調べることを拒絶しているかのようだ………。
体調が戻るのを待つ。その間、ソフィアは背中を優しく擦ってくれていた。
<しばらくして>
体調が戻り、次に"聖域"について情報を得るため黙々と調べていく。