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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
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憎悪-Hatred Gaze-

 

「やっと着いたかのう。―――ふう、歩き疲れたのう。直ぐにでも休みたいものじゃ。」

  ポーアの言葉を聞いたミレドが体を解しながら言う。よほど歩き疲れていたのかミレドが解すたびに体がゴキゴキと音を鳴らす。その仕草はまるでどこぞの強面の男が戦闘前にするように鳴る。


(いや、もうちょっと女の子らしい仕草をしろよ…。)


  ネスクは心中でミレドへとツッコミを入れる。そんな事を露知らずに体を解し終わったミレドは軽く体操をしている。


「さて、それではまず、お兄様の所に向かいましょう。皆様!!」


  ポーアの号令で再び一同は歩き始める。

 そびえつ巨木の家の間を抜けて村の中央へと歩いて行く。


「‥‥‥‥‥‥」


  周りを見渡すも、先程から一人っ子一人すれ違わない。気配の感じでは、家の中からこちらを窺っている事が気配や向けられている視線で分かる。―――驚愕、敵意、興味等々。

 様々な物が混じっているような視線があちこちからする。


「どうやらあまり歓迎はされていないようだな。」


「そう、みたいですね。」

  クーシェもその事には気付いているようだ。先程、ゲートをくぐり抜けてから頭の耳が休むことなくピクピクと周りを窺うように動いている。

  クーシェは感情がよく尻尾に現れる。

  嬉しい時はパタパタと振る。怒っている時や警戒している時は尻尾の毛がモップのように逆立つ。悲しい時は垂れ下がる。

――今は尻尾が心配と警戒のせいかいつもより毛が少し逆立っている。


「住民の方々は内乱以降。

あまり外を出歩かないようにしております。

何時襲われる事になるか、分かっておりませんから。家に篭っておいた方が安全ですから。」


「内乱者はどこにおるのじゃ?

一緒にこの村にいる訳ではなかろう。」


「私も詳しくは存じておりませんので、

詳細までは分かりませんが結界の()にいらっしゃるのではと思います。」


「へぇ~、そうなのか。」

 ネスクは何気ない言葉を返す。


  そうこう話ながら進んでいくと進む先に一際大きな巨木が現れる。その木に取り付けられた扉の前へとポーアは案内して振り返る。


「‥‥‥ここです。では、皆様、入ります。」


 コンッ!コンッ!


  ポーアが扉を二回、ノックする。


 そして扉を開き戸を潜り中に入る。中は広い空間に中央に何人も座れるでかいテーブルと机が並んでいる。


「おお、よくぞ戻ってきた、ポーア。‥‥‥して、そちらの方々は?」


  扉に入って直ぐ目に入りテーブルの奥。

その人物が声を掛けてくる。


  若木色の装いにいかにも貴族っぽい装飾品を身に付けている。

 細身ではあるが鍛えられた魔力をその人物から感じる。ポーアと同じ髪と目の色をしており、優しげのある垂れ目の部分も彼女と同じ。


  ポーアは入って近くの椅子やテーブルの前へと進み膝を付き頭を垂れる。


 ポーアと同じようにネスク、クーシェも頭を垂れるが、ミレドは堂々と立ったままである。


「はい、こちらの方がお兄様から仰せ付かり、私が探しておられた方、"聖龍ミレドグラル"様とその御一行で在らせられます。」


  それを聞いた瞬間、テーブルに座っていた人々が席を立ち、ポーアと同様膝を付き頭を垂れる。


「おお!!古よりおわせられるお方。

わざわざご足労頂き大変誠に有り難うございます。」


「良い、表を上げよ。

ドルイドの"新"(おさ)

このままでは話づらいであろう。

――席に付いて話そう。妾も歩き疲れて椅子に座りたいからのう。」


「はっ!!至極の極みで有ります!!」


  ミレドが許しを与えるとポーアのお兄さんとドルイドのお偉方は席へと付く。


ミレドは席へと案内される。

自分とクーシェも立ち上がる。


―――そこで気付く。

 彼らの視線が此方に向けられた時、その視線には"憎悪"のような物が感じ取れた。


「‥‥‥‥‥申し訳ありませんが、俺。

いや私は気分があまり優れませんので、

これにて退席させて頂くことをお許しください。」


「ネスク様?」

(悪い、俺は離れる。クー、後は任した。)

  クーシェに小声でそう伝えると長の言葉を待たずに踵を返して扉から出る。


  扉を閉じると少し歩く。

 広めに空いた場所。――広場に若木ともいえないがそれなりの年月が経っているであろう

木が一本だけ生えている。


  ネスクはそこに腰を下ろす。


(分かっていた筈、何だがな。

ああいう視線を直で受けるのは、

……やっぱりキツイ。)


  木の葉の間からよく分からない色とりどりの光が漏れてネスクを照らす。


  ネスクは目を閉じて休憩する。


 今まで嫌な視線に当てられたネスク、もといオオヅキは他人の視線に敏感。

これはいわば後遺症ともいえるものだ。






 カシャッ!カシャッ!カシャッ!


  金属が擦れる音がする。


その音がこちらに近づいてくる。

―――そして、殺意のような物を感じて、

ネスクの体が勝手に動く。


  首を横にずらすと耳の直ぐ横で何かが木にめり込む音がする。地面に付いていた足の片方を軸に前へと蹴りを入れる。


「な、に!?」


  誰かが驚嘆する声と共に地面に何かが落ちる音がする。ネスクは横っ飛びして距離をとる。

 そして、目を開ける。

――光が目に入ってきて段々と慣れてくる。


  尻餅を付いた男が一人、そしてその後ろに三人の男がいた。全員共通して甲冑のような物を着ている。――緑の髪、目、ドルイド特有の蔓のような植物が腰から垂れ下がっている。


 こっちを見て全員が驚愕の表情を顕にしている。


「完全に油断していた筈、何で只の人間が動ける。」

 尻餅を付いた男が立ち上がりながらそう口にする。

「あー、こっちの奴は、

寝ている相手を襲う習慣でもあるのか?」


 ネスクは、驚きたいのはこっちだと心中でぼやきながら男達へと投げ掛ける。


「ウルサイ!!人間!!俺は家族をお前ら人間に殺された。この恨み晴らさずにいられるか!!」


  尻餅を付いていた男の後ろに控えていた男が腰の剣を抜き、襲いかかって来る。


「俺は殺した奴じゃない。

――――復讐する相手が違うぞ。」


  斬りかかる剣筋を避けて男の背後に回り後ろから小突く。男はそのまま地面に倒れ伏す。


「人間が!我々だけじゃない!!この村の皆がお前ら人間を許さない!!

同胞を手に掛けられて黙っている者なんて誰もいない!!」

  倒れた男の言葉を矢継ぐように二人目の男が襲い掛かってくる。

人間を憎悪する人々。ネスクは彼らと向き合う。その中で自身の過去からのトラウマは克服出来るのでしょうか。

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