表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
75/347

祈りと決意

<ソフィア>


「‥‥‥‥はあ、全く、貴方様という人は」

  来たと思ったら、嵐の様に直ぐに外の世界へと戻ってしまったことに、

ソフィアは呆れ混じりのため息を漏らす。


(それにしても、オオヅキ様の心の奥底にまで植え付けられたトラウマ。‥‥‥‥これで直るとはどうも思えません。)


  ネスクの心から伝わる恐怖にも似たトラウマ。それをとても心配に思う。


(それ程のトラウマとは一体何なのでしょうか。)


  とある本棚に行き並べられた本へと手を伸ばし、広げてパラパラと捲っていく。


――― 十六夜 大朏として、

生きたネスクの経歴、生涯が綴られた本。


「‥‥‥‥‥ふむ、ふむ」

  パラパラと本の中身を捲り、ソフィアは頭の中にインプットさせていく。

 尋常ではない早さで読み進めるソフィアの目が右から左へと動いていく。


 しかし、その顔は読んでいくうちに陰りを出し始める。


(身内の死、家族の崩壊、生活費のための労働、クラスメートからの凄絶ないじめ、親友達からの離別の言葉、父の本音そしてその最期。)


  それらを読んでいくと、怒りのあまりに手が震え出す。特にクラスメートからの虐めの内容と実の父親の本音の部分を読んだ時は思わず、


―――その本を破ってしまいたくなりそうになる。


  その内容は、

―――あまりにも報われない内容。

 ネスク自身は覚えていないが、そうなった発端は簡易的にいうとこうだ。


  始まりは一人のクラスメートを助けた事に始まったのだ。

 助けたことでターゲットがそのクラスメートから移り変わってしまった。始めは上履きを隠されたり、机に落書きされたりと些細なことであった。それが次第にエスカレートしていき、クラス全体の人による虐めへと、

変わることにそれほど時間は掛からなかった。

  助けたクラスメートもネスクを助けることはなかった。


「なんて醜いのでしょうか....。そしてオオヅキ様が報われなさ過ぎます。」


  彼の者達への怒りがふつふつと沸き上がる。

普段は表情の起伏が乏しい彼女が、ここまで感情を揺らすのは珍しい。


(オオヅキ様の記憶は初起動の際に抜け落ちていたとはいえ、ある程度は把握しておりましたがこれほどとは思いませんでした。)


  一度頭を冷やすため本を閉じて、

光が差すステンドグラスを見上げる。女神セレネをあしらわれたステンドグラスが彼女に優しく光を差す。


(オオヅキ様が怖がるのも無理ありません。こんな過去があるのでしたら。()()()()し、創造主にして女神セレネ様、どうか彼の者に祝福があらんことをお祈り申し上げます。)


――ソフィアは切実に願う。

ネスクの人生が今回こそは、

幸せに満たされていることを。


 *****


「さて、始めるか。」


  書庫から戻ってきたネスクは、部屋の片隅に設置された机に腰掛ける。

 外はまだほの暗く、太陽も顔を出していない中で作業を始める。

 丸く加工し、机に取り付けてあるラクリマに魔力を流しスタンドの様に使う。

  机にアイテムポーチを置きそれに向かって魔法を掛ける。


「【鑑定(アクセス)開始(スタート)】」


  アイテムポーチに掛けると薄いドーム状の幕が現れる。脳内にネスクとは違う別の声が響く。


解析(アナーシス)開始(スタート)

 少々お待ち下さい。


 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥解析完了。

 表示します。】


  プレートが前回同様、目の前に表示される。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 名称 アイテムポーチ

 別名魔法の袋


 品質 普通

 材質 古くなりつつあるが丈夫な布


 改良可能

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  プレートの内容を確認して、

そこに魔力とイメージを送る。


(改良開始、袋内の空間魔法を剥離、廃棄、そして新たに空間魔法を付与、水魔法と風魔法を追加で付与)


  鮮明なイメージを送ったため直ぐに

プレートの内容が変化し始める。


 そして再び声が響く。


『改良完了』

 新たなプレートが目の前に表示される。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 名称 アイテムポーチ・改良型

 別名 異次元の袋


 改良者 ネスク

 品質 最上級(品質保存・完備)

 材質 丈夫な布(魔法でコーティングされ破れる心配がない)


 準聖遺物

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「‥‥‥‥‥」


  出来上がったその袋のプレートを見て

思わず絶句。


―――まさかの聖遺物級の代物が出来上がってしまった。何がどうなったらこうなるんだ。こんな物、他人に見せられない。

 見せれば、

恐らく奪おうと襲ってくる輩がいるだろう。


 まあ、見た目が薄汚い物のためある程度は大丈夫であろう。でも【鑑定】を使える人が居れば一瞬で見抜かれるだろう。


  そしてネスクは新たに魔法を掛ける。


「【付与(エンチャント)・隠匿」


  表示されるプレートが更に変化する。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 名称 アイテムポーチ

 別名 魔法の袋(隠 異次元の袋)


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  仰々しい物からシンプルなプレートへと変化した。それを確認するとネスクは、アイテムポーチの中身を確認して、懐へと戻す。


  その後も色々と作る。


これから必要になるであろう物を作っていく。


 ちなみに材料は机の横に設置してある木の箱の中に入れてあった。これは以前ネスクが作り、ミレドに空間魔法を付与して

貰った優れものである。


  窓から外を見れば気付けば日が上り始めていた。ラクリマの光も既に魔力が尽きたのか輝きを失っている。


 コンッコンッ


  扉からノックがした後に扉が開く。


「ネスク様?‥‥‥起きてらしたのですね。」


 扉の影からそろっとポーアが顔を出す。


「ポーアか。どうしたんだ?」


「ミレド様からネスク様を起こして来るように言われました。それで‥‥‥‥‥その、」


「決めたよ。ポーアの国に行こう。」



 *****


「それじゃ、行こうか。」


「「「はい(なのじゃ)!!」」」

  家の前で全員が揃うと、ネスクが掛け声をする。全員が掛け声を返す。


  ポーアに呼ばれた後、決意を伝えるとポーアから感謝の言葉を聞きポーアと一緒に一階へと降りた。そして、一階で朝飯の準備をしていたクーシェとミレドにも伝えた。


「では準備をして来ます。」


「やっと決まったのじゃな。遅いのじゃ、おぬしは!一体、何を悩んでおったのじゃ。」

  二人はポーアの国に向かうことを聞くと待ってましたと言わんばかりに受け入れてくれた。


  その後は準備をして昨日の残りで軽く朝飯を済ませて今に至る。


「所でどうやって向かうのか決めておるのか?」


「歩いて行くんじゃないのか?」


「ここからですと半日もあれば国境には到着できますがドルイド族の村への行き方は私も存じておりません。」

「そのことでしたらわたくしに任せて頂けませんか?」

  そういうとポーアが何か地面に何かを書き始める。大きな丸い円を書き、そして読めない文字を書き連ねていく。数分するとポーアが此方へと振り返る。


「出来ましたのでこの円の中心に皆さん立って頂けませか。」


「これは?」


「魔方陣じゃな。それもこれは恐らく‥‥‥」

「さすがミレド様、ご存知なのですね。ミレド様の考えておられる通り、この魔法はドルイドの秘術に分類されるものです。」


今回はここまでにします。次回からドルイドの村に突入します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ