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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
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苦悩するネスク

「礼には及ばないよ。あれは偶然だったから。」


「そうじゃぞ。

 あの時のこやつはちょっとの魔法ですら、

 大量の魔力をだだ流ししておったからのう。

 それをあの獣が察知してしもうただけじゃからな。うむ。

 ―――そう考えるとあの戦いはこやつが引き起こした自業自得の戦いということになるのかのう。」

  ミレドがジト目をしながらそう言う。


「‥‥‥なんか、ミレドがさっきから言葉がきつくないか?」


「そんなことないぞ。全然のう。」

 ミレドはジト目をしながら目を逸らす。


「俺の目を見て言え!!全然そんな気ないだろ!!」

「フフフッ、バレてしもうたか。さすがお主じゃな!!

 妾の事、分かっておるじゃないか!!」


  ネスクとミレドが戯れている様子をクーシェとポーアが眺めて笑う。


  一通りミレドと戯れ終わり

 再びポーアへと向き直る。

 そして、おほんっとミレドが一咳。


「まあ、何はともあれ、ポーア。おぬしの言っていた『恩返し』は理解したのじゃ。」


「はい。偶然とはいえ、わたくしはネスク様に助けられました。その事は事実です。」


「なら、その礼は受け取っておくよ。」


「はい、では話を戻します。


―――その後、傷を癒すのに二ヶ月掛かりました。


 そして、あの炎の時に繋がるのです。

その間に状況は更に悪化。今は既にお兄様側とそれを拒む側で内乱が起こってしまっております。そしてお兄様は劣勢に立たされております。

 お願いします!!

どうかお兄様をお助け下さい!!

私に出来ることであれば何でも致します!!

……だから、どうか、どうか!」

  ポーアはそう言い頭を深々と下げる。


「‥‥‥‥‥」

  即答出来ない。出来れば、

ポーアを助けて上げたいとは思う。

――しかし、

人族の自分が他種族の事に首を突っ込んで良いものかと考える。


「ミレドはどう思う?」


  判断が付かずにミレドへと投げる。

「おぬしに任せる。

おぬしがしたいようにすると良い。」


  おもいっきり投げ返された。


「クーシェは?」


 次にクーシェへと聞いてみる。


「ネスク様の赴くままに。」


 ミレドと同じ回答。別に冗談。というわけではないらしい。二人の目を見れば分かる。


 一体俺に何を求めているのであろうか。


「‥‥一晩くれ、ポーア。明日の朝に伝える。まあ、善処はしてみる。」


  ネスクは考える為にポーアに伝える。


「‥‥‥‥‥‥分かりました。

良い回答をお待ちしております。」


  顔は髪に隠れて見えない。


 しかし、暗い表情をしている。

もし、あのまま断っていれば、恐らくポーアは自暴自棄になってしまっていただろう。


ネスクは慎重に考えることにする。


「さて、終わったのであれば、もう寝るとするかのう。明日も早い事じゃしのう。」


「ああ、そうだな。でも、‥‥‥‥その前に湯浴みをしたらどうだ?三人とも」

  三人が疑問符を浮かべる。


「なぜじゃ?」


「解体作業したからな。


血の生臭い(にお)いと汗の臭いで変な臭いになったらいかない。


―――女の子ならその辺は、

気にしておいた方がいいぞ。」


  ミレドはポカーンと、

口を開けたままなぜか放心状態。


 クーシェは少し赤らめ下を向く。


 ポーアは、

先程の件もあり、前髪で表情は読めない。


「準備したら裏の小屋に来い、三人とも。準備をしておくから。」


  その後、ネスクは小屋へと向かう。

三人を置いて扉を開けて出ていく。


 ****



「来たか。使い方を教えておくからきちんと覚えておけよ。」

 扉が開き三人揃って入ってくる。


 それぞれ着替えを持っている。


 しかしミレドは持っていない。

 ミレドの場合は―――不必要か。

そもそも粒子から服を作り出しているのだから。




  そしてネスクは使い方を説明し終える。


「入り終わったらそのままでいいぞ。

勝手に水が抜けるから何もしなくて良いから。じゃ、後はご自由に。

あ、あと。掛け湯はきちんとしろよ。」


「「掛け湯?」」


「入る前にそこの桶で体に湯を掛ける事だ。

それと風呂場では走らない、泳がないこと!!いいな!!」

  ネスクは入口近くにある桶を指差し、

注意を言い残して出ていく。


一緒に入るわけにはいかないからだ。

考え事もある。

そして自分の部屋へと戻る。


 ****

<女性陣>


「ネスク様はどのような答えを出すのでしょうか‥‥ミレド様。」


  クーシェは桶を使い掛け湯をしながらミレドにそう聞く。


  健康そうでそれなりに肉付きの良い足。

 尾てい骨から尻尾が伸びているが、掛け湯で濡れ、通常より細くなりしなだれている。

 そして、

控え目だが。まだ花咲く前のような小さな胸、

体は小さいが、

―――腹はくびれスタイルは良い。


「さあ、のう。あやつのことじゃ。

そう悪いようにはせんと思うが。

じゃからそんな暗い顔をするでないポーア!!そんな顔されるとこっちも気が滅入るではないか!!」

  クーシェから桶を受け取ったミレドは自身に掛け湯をする。

  艶やかな足、尾てい骨から爬虫類のような鱗がある尻尾、更に両腕にも鱗がある。

――背中には以前、ヘヴラにやられた傷が古傷となりつつあるが未だに残っている。


 そしてこの姿に合わせるかのように小さな胸。しかし、色白い綺麗な肌ですべすべ。

クーシェとミレドは身長もほぼほぼ同じである。


「‥‥‥やはり、心配です。


ネスク様の解答次第でわたくし達、ドルイド族の運命が決定してしまいますから。

もし、断ってしまわれれば、お兄様方に申し開きができません。」


  ミレドから桶を貰い二人と同じように掛け湯する。

  女性特有のふっくらと丸みを帯びた体付き。はち切れんばかりの大きな胸、空中に漂う蔦植物が羽衣のように彼女の回りを取り囲んでいる。

出ている所は出て凹んでいる所は

きちんと凹んでいる彼女の体付きは、

この世界では女性の黄金律と呼ばれそう。


  三人共とも掛け湯をして一緒に湯船へと入る。

「おお、これは良いものじゃな!!

極楽、極楽♪」

「そうですね‥‥。温度も、丁度良いです。」

「‥‥‥‥‥心がポカポカと温もって気持ちいいですね。私の村でもこのような物はありませんでした。」


「「「‥‥‥‥‥ふう、気持ち良い(のじゃ)((です))」」」

 三人揃ってその言葉に尽きるといった感じである。


「それにしてもおぬし、」


  ポーアの胸へとミレドは視線を向ける。


――湯船に浮かび上がり船のようになっている。


「一体何を食べればそんなに巨大になるんじゃ?」


「栄養価の有るものでしょうか?余りそういったことには気を配っておりませんが。」


「‥‥‥‥そうなんですか?私ももっと食べた方がよろしいのでしょうか?」

  クーシェは自分の胸を見ながらそう言う。


「まあ、おぬしはまだ成長仕切っておらぬからのう。これからじゃ、これから。」


「そのように言うミレド様もお姿を変えれば可能なのでは?」


「戦闘中は邪魔じゃからな。

妾はこの姿の方が気に入っておるんじゃ。」


「そう言う物なんですか?」

「そう言う物じゃ。‥‥‥‥‥さて、一度触って見たかったからのう、おぬしの胸は‥‥!」

  ミレドの目がキラキラと光り、手をニギニギしながら、ポーアへとジリジリと近寄っていく。反対にポーアはその怪しさにジリジリと後退りしていく。


「触らすのじゃ!!!」

「嫌っっっっ~~!!!!」

  飛び掛かるミレドがポーアの胸をまさぐる。

  ポーアの声が今宵も小屋の空間を反響する。

 そんな二人を他所にクーシェはネスクへと思いを馳せる。


(ネスク様、どうか、ポーア様にとって良い返事をお願いします。あんな落ち込んだポーア様は見たくありません!!)


 ****

<ネスク>

  部屋に戻ったネスクはベッドに寝っ転がり天井を見上げる。手を頭の下に組んで考える。


(‥‥‥さて、どうしたものかな)


  人間の自分が他種族に手を貸す。

――それは良いとする。しかし、他種族がその事を許すとは限らない。


 ましてや今ある知識からすれば、

人間を恐らく他種族は憎んでいるであろうことは予想がつく。

  家族を傷つけられたという者は必ずいるのだから。

 皆が皆。クーシェのように心優しい者ばかりというわけでは決して無い筈だ。


  それにあまり人との関わりは作りたくない。


 力を示せば、

それを欲する者は必ず出てくる。

 そんなことは出来れば避けたい。


  だからといって、ポーアを見捨てる訳にもいかない。今見捨てるようなことになれば、

ポーアの肉親であるお兄さんを見捨てるということになるのだから。


(へっ。お前はどうしたいんだよ!!俺!!)


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」


  幻聴だろうか。自分の声が聞こえたような。


(幻聴じゃないぜ俺。俺は常にお前の中にいて俺自身を見ているのだから。)

  ポンッと煙が出ると小さなコウモリのような翼を持つ自分が現れる。

いわゆる『悪魔のネスク』である。


(そんなの断っちまえ!!そんなの俺には関係ないだろ!!人と関わるとロクなことにならんのは承知している筈だ。何せそれがお前の楔となって未だにお前を穿っているのだからな。)


「‥‥‥‥‥‥‥」


(それは一人の女の子を見捨てるということですよ、私。)


  再び別の幻聴が聞こえる。悪魔のネスクの隣にポンと煙が発生して天使の羽を付けた白い髪の自分が現れる。

いわゆる『天使のネスク』である。


(もし、今断ってしまわれたらその先は破滅しかありませんよ、私。少女は今の時点で既に精神が不安定な状態。そんな状態で更に衝撃を与えてみてください。彼女の精神が崩壊しますよ)


 ‥‥‥‥なぜ、私?

 僕や俺なら使ったことがあるが私はない。

 一体どこからコイツは私という呼称にしたんだよ。


  白い自分に思わず突っ込みを入れる。


(聞いているのですか?私。いい加減決めなさい、私)

「‥‥‥‥」


((さあ、さあ、どうするんだ(です)?(私)、(俺))


  自分の手に意識を集中する。


 外野?が煩いのであそこに行くことにする。相談相手はあそこに限る。

恐らく今の状況も把握しているであろうから。

 手に透明な鍵、『ソフリア・クレ』が出現する。持ち手を摘まみ寝転がったままで天井に鍵を向ける。

 そして、


「【開け】!」

  鍵を回す。


(あっ!逃げるな(です)!!)


  二人の小さな自分の言葉が届くことなくネスクは意識が沈む。

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