ポーア・ツェリア・ペルメス
「皆様にお話したいことがあります!」
米茸の焚き御飯、野草と肉のスープそして猪牛の焼き肉である。
スープはあまり味がなかったが肉と野草の出汁が出ていて、それなりに食べれる物へとなっていた。ご飯はいつも通りで旨かった、猪牛の焼き肉は脂が乗っていて御飯と良く合いいつもより御飯の食べるペースが格段に上がっていた。
しかし、米の量が殆ど無くなってしまったため、また作らなければいけない。
食器の片付けを終え、
一息付いているとポーアが―――
「皆様にお話したいことがあります!」
そう切り出したのだ。
「話したい、こと?」
「はい、以前ミレド様にお約束したことを話したいと思います。」
「そうだったのか?」
ミレドへと聞いてみる。
「‥‥‥‥そういえば、そうじゃったのう。」
ミレドは何か思い出したのかそう呟く。
「長くなりますが、宜しいでしょうか?」
「時間はたっぷりあるから大丈夫。
ゆっくり話そう!」
「‥‥‥はい、そうですね。ではまず、わたくしの本当の名前からにします。」
「本当の名前?」
"ポーア"が本当の名前でないのであろうか?
「はい。わたくしの本当の名前は、
―――――『ポーア・ツェリア・ペルメス』
と申します。」
「『ペルメス』?何処かで聞いたような……」
首をひねり記憶を探る。
確かにどこかでその名前を聞いた。
一体どこかと言われれば分からないが、聞き覚えがあるのは確か。
「『ペルメス連合国』別名亜人連合国と人族から
言われております、ネスク様。
そして‥‥‥‥‥私のいた村があったところです。」
ハッとして、クーシェを見る。
クーシェはうつむき顔は見えないが、手が少し小刻みに震えている。
横に座っているミレドがそっと。
その手の上に手を添える。
そして、「大丈夫じゃ。」と言うと、
手の力が抜け、震える手が止まる。
「ありがとうございます。では続きに行きましょう。」
気を取り直したクーシェが先を施す。
「やはり、そうでしたか。その髪の色、クーシェ様は『灼熱の狼』の方でしたか。その件の事は聞き及んでおります。‥‥‥姫でありながら、
私は国民の一族すら守れないとは何とも無力なことなのですかね。」
自嘲気味にポーアが言った。
その言葉は、自身の無力さというものが感じ取れた。
「姫?」
「はい。ドルイド族、族長序列、第一王女候補それがわたくしです。」
驚愕の余り口が開いたまま、閉じることが出来ない。クーシェも呆気にとられている。
ミレドは余り驚いていない。さすが。
「そのお姫様が何故このような所におる?」
「その事はこれからお話し致します。
……皆様は我が祖国、ペルメス連合国についてはご存知でしょうか?」
「まあ、知っていて当然じゃのう。」「はい、自分の国の事でしたから。」
クーシェとミレドの二人は即答するが、
「‥‥‥いえ、知りません。すいません。」
深々と頭を下げて答える。
「お・ぬ・し・は!!勉強不足ではないのか?」
「仕方ないと思います。ネスク様は人族ですし、」
ミレドはその事を諌め、クーシェは同情してくれる。
やめて!!その同情は俺の心を深く傷つけるから。
自分の恥態に思わずうつむき顔で赤くする。
「では、我が国のシステムについてお話し致します。」
「‥‥‥‥お願いします。」
「フフフッ、はい!!分かりました!!」
姫様は楽しそうにそう答える。
ネスクはもっと他の国について知っておこうと考えるのであった。
****
「我が国『ペルメス連合国』は"亜人連合国家"と呼ばれていますが、実際は各種族が国の内側で更に細かく分かれ、それぞれが規則を作り、国の運営を行っております。」
(前世でいうアメリカのようなものなのかな。恐らく)
前世の記憶のお陰もあり、国について何となくの概要は理解出来る。
「その国の代表、つまり最高責任者がドルイド族です。地位の高い種族で言うとエルフ、ドワーフなど様々ですが、その、仲が余り宜しくないため、主なまとめ役をドルイド族がしております。」
(その辺りは何というか、テンプレだな。エルフとドワーフの仲が悪いのは、)
"繊細なエルフ"と"がさつなドワーフ"、意見が食い違うのはどこでもあるのだなぁと思う。
そして、ポーアの話が進んでいく。
「約四ヶ月程前、私の父、前最高責任者の『テル・ツェリア・ペルメス』が『灼熱の狼』の件で責任を問われ、その命を持って自害しました.....」
「「「‥‥‥‥‥‥‥」」」
彼女の心境を思い、三人は噤んでしまう。
ネスク、クーシェ、ミレド、それぞれ大切な者達を奪われた身であるためポーアの心境を察してしまう。
「父の自害のその後、わたくしの兄、『ディル・ツェリア・ペルメス』がその後を継ぎましたが、戦闘部門であった『灼熱の狼』の抜けた穴も大きく尚かつ、種族内での揉め事もあり今、我が国は不安定な状況であります。」
「揉め事?」
「はい。兄の就任に不満を持っていたドルイド族の一部がその最高責任者としての権利を巡って内乱を起こしたのです。」
「他の種族は何も言わないのか?」
「その事に関しましては内輪揉めのため、お互い関せずという感じです。」
「‥‥‥‥」
この国は何とも歪であると思う。
国としての大事でありながら、お互いがお互いを信頼しておらず、
―――まるで他人事のようである。
そして、ネスクは思う。
こんな状態で人族に攻められれば、恐らく連携を取れず一瞬で国その物を落とされる。
「そしてこれはわたくしがここにいることに繋がるのですが、このような状況を打開すべく、お兄様の『ディル・ツェリア・ペルメス』が、ミレド様のお力をお借りすべく私を此方に派遣したのです。」
「そうだったのか....。」
「はい、植物のお陰で発見することは直ぐに叶いました。当初は交渉できるタイミングを計っておりましたが、時間が経つにつれて内乱が大きくなっているという報告があり、焦っておりました。そんな矢先に黒い獣に襲われたのです。」
ネスクはその言葉で思い出す。
―――森の中で出会ったヘヴラが作り出した黒い獣。
「その際に大怪我を負い、もうだめかと思ったその時にその獣が踵を返していったのです。」
「それは恐らく俺が木の実を取るために魔法を使用したからだろうな。奴は魔法を使った後、直ぐに俺目掛けて突っ込んできたから。」
「はい、その事は植物を通じて知っておりました。その際はありがとうございました。」
話が長いので切ります。続きは次回です。