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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
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夜の作業

 

「二人ともお帰り、こっちも話し終わったよ。なっ、ポーア?」

「はい、終わりました。」

 ポーアへと振り二人で報告する。


  二人は「それは良かったのじゃ。」「良かったです。」と言い笑顔になる。


「それじゃ、飯にするか。ところで、何を狩ってきたんだ?結構、早い時間だったが?」

「今から出すのじゃ。驚くで無いぞ?【異次元箱ディメンションボックス】」

  ミレドが手を何も無い空間に手を翳すと空間が裂けてポッカリと穴が開く。

そして、そこから大きな牛が出てくる。


「これは?」

「『猪牛(ブルモー)』じゃ。」


 猪牛<ブルモー>

 外見が牛のような魔物である。牛と違う所は頭にある角が左右に二本、その中央にドリルのような線を持つ鋭い角が一本、合計三本の角がある。

 その巨体の割に動きも素早く猪のように突進を繰り返す攻撃を得意とする。突進しながら頭にある角で物を貫きそのまま角から抜け落ちない限りその物が壊れるまで暴れ回る程凶暴である。


「よくこんな魔物が取れたな。確か森の中には居なかったと思うが。」

  一ヶ月前の記憶をネスクは探るも該当しない。この一ヶ月の間、ネスクは森に立ち寄っていない。怪我の影響もあるが、魔法のコントロール、魔道具の製作の為に時間を割いたため。

 森へと行く時間が無くなってしまった。


  それまでの食料は――

ポーアやミレド、クーシェが取っていた。

 それだけで食料は充分にあり、

ネスク自身が行かなくても良かった。


「ヘヴラのせいで、生態系が変わってしもうてのう、以前はおらぬかった魔物がいるからのう。強力な魔物も以前より居るようになった。」


「‥‥‥‥‥結界は大丈夫なのか?」

「その心配はいらぬ。

既に強力な結界を更にしておるからのう。」

「それなら良かった。」

「‥‥あの、早くこの魔物の解体を始めたほうが良いかと思います。時間も掛かりますし、」


 クーシェのその言葉に疑問符が浮かぶ。

「コイツだけならそれ程掛からないと思うんだが?」


「確かにそうですね。このだけだと三◯分もあれば解体できますね。何か他にもあるのですか?」

  ポーアも同感しクーシェに聞く。


「それが、その、これだけじゃないんです…」


  クーシェが苦笑する。

その横でミレドがなぜかため息を吐いた。

そして、ミレドは再び手を翳す。


「【異次元箱ディメンションボックス】」


 異次元箱<ディメンションボックス>

 魔力を使ったアイテムポーチである。

 しかし、その容量に制限が無く魔力を注ぐ量でその大きさに応じて変化する。そして中に物を入れおくと入れた物に応じて魔力を消費し続けるため一般の人には使える物があまりいない。


「「えっ?え~~~~~~!?」」

【異次元箱】の中から出てきた猪牛の量に驚く。

その数およそ五◯頭。


 その量が家の中に積み上がる。


  この量に驚愕。これは異常としかいえない。


「一体何がどうなったらこんな数の魔物を狩ってくるんだよ?!」

「そうです!!私もこの数はこの方見たことありません!!」

 ポーアと一緒に驚きの声を上げてミレドとクーシェへと話を振る。


「実はなぜか私に向かって集団で突進してきまして、それをミレド様が全部狩ってしまってこのようなことになったのです。」


「コイツらは"赤い"物に反応して突進するという習性を持っておってのう、それが目に映る間はずっと追いかけ回すのじゃ。」

 皆が一斉にクーシェを見る。


 赤い髪に尻尾、更に耳、

「‥‥‥‥赤だな。」

「‥‥‥‥赤ですね。」

「‥‥‥‥今回はクーシェを連れて行ってしもうた事が裏目に出た。すまぬ。」

「ミレド様が守って下さったので怪我はしておりません。さ、それより早く解体をしましょう!!夜が更けてしまいます!」

  それから解体作業を開始した。さすがに数が数のため家でするのはまずいため、一度【異次元箱】に戻してから外で開始する。




 ***

  猪牛は殆どの部分を食料として使える。

そして、その皮は加工すれば鞄として利用出来る。

  まずは切り口から魔法で血を抜く。

魔物の血は魔力濃度が非常に高いため食料としては使えない。

 もし、口にいれた場合は、


 その魔力の濃さに体が耐えきれず

自身に通る魔力の流れ道『魔力回路』を粉々に壊してしまい、二度と魔力が使えなくなる。


  各部位を取っていく。








「ふう、やっと終わった。」


  一◯頭目を解体し終えて額の汗を拭く。

もう既に日も落ち、頭上には光の球が浮いている。

 ミレド、クーシェ、ポーアも猪牛をそれぞれ解体している。

【星の光<スターライト>】

 光の球を頭上に放ち照らす魔法である。

 約二刻、つまり二時間である。魔力消耗はそれほど多くないため手軽な魔法であるが、光魔法であるため人間には殆ど知られていない魔法だ。


  頭上の光の球が徐々に小さくなって消えた。


「さて戻って調理するかのう。おぬしらもそろそろ切り上げるぞ!!」

  アイテムポーチを取り出す。


「【鑑定(アクセス)】」


 【鑑定】を使い、中を確認する。以前使った時と違い一瞬で結果が表示される。

  以前作った米茸(マイタケ)が量こそ少なくなっているが入っている。それと先ほど解体し終えた猪牛の各部位がそれぞれ更に以前、取った蜜蜜柑も入っている。


(あっ、蜜蜜柑取り出すの忘れた。中身大丈夫かな?)


  当然このアイテムポーチには保冷機能はついていない。その為、中に入れていた蜜蜜柑を取り出して見る。

  取り出して分かる。蜜蜜柑の皮が手で握っただけで指の跡がめり込む程に柔らかくなっている。

 恐らく傷んでいるのであろう。


「これは駄目だな。食べたら腹を下すだろうな。でも、‥‥‥‥これはこれで使えるな。」

  ネスクは傷んだ蜜蜜柑を見つめて別の使い方を思い付く。


「ネスク!!早うこぬか!!飯の準備するぞ!!」

 その声で蜜蜜柑を再びアイテムポーチに戻してから動く。


「あっ、そうだ。【空間密集・血ラットン・コレクト・スペース】」


  地面飛び散っていた血が空中で球体になり集まる。

「【深紅の業火(クリムゾンフレア)】」


  ネスクの手から真っ赤な炎が飛び出て巨大な血の球へと変わったソレに飛んでそして命中する。


  通常、魔物の血は乾き切ってから、

魔素へと変換されるまでに。

――およそ、半刻ほど

 だが、ネスクのように血を燃やして蒸気にするとほんの数分で魔素に変換され自然に還る。



―――更に言えば、血の濃度が濃ければ濃いほど時間が掛かる。

  ネスクがしたその行為はまるで頂いた命を残さずに全て自然へと還すかのような行い。

 その上、

魔物の血はその匂いで魔物を引き寄せる。

さらなる戦いを起こさないようにした事でもある。

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