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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
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二人と二人

「はあ~、一体どうしたらいいのじゃ。」


 ミレドは思わずため息が漏れ出てしまう。


  修行を始めたは良いものの、

まるで修行にならない。


 ネスクはボーッとしているし、始めても二擊で終わってしまう。

 更にひどく、ネスクは木刀の持ち手を逆に持って修行を始め、ミレドが木刀を弾いて飛ばすと、何故か木刀サイズのただの棒切れを何処からともなく拾ってきて構える。


(おぬしはどこの犬じゃ!?というか何故、ワンコロになっとんじゃ、おぬしは!!)


  そんなネスクに心の中でツッコミを入れてしまう。ミレドは時間ももったいないため、そのまま修行を続ける。

―――何度も棒切れを弾き飛ばすも、その度に棒切れを拾ってくる。

 結局、ミレドが木刀を取りに行き、ネスクが持っている棒切れと入れ換えて持たせる。


 ミレドはそんなネスクに溜まらず、

ため息が出る。


「こうなったらやるしかないのう。」


 木刀に魔力を込める。木刀が魔力の膜に覆われる。

「大ケガしたくなれば、いい加減集中せい、ネスク!」

 そして踏み込み、距離を詰める。


「ふんっ!」

 そして木刀を振るう。


「!?」

 ネスクは、咄嗟に体がガードをする。

しかし、その木刀に載る重さに耐えきれずに後ろへ弾け飛ぶ。

 木刀を地面に刺して停止する。


 そしてネスクの更生が始まり、それが昼下がりまで続いた。


 ****

<クーシェ>


「えーと、とりあえず座りませんか?」

 クーシェはミレドとネスクが出ていった後、暴走中のポーアを椅子へと誘い座らせる。


「その・・・・・・失礼しました。」

 座らせたことで暴走中だったポーアのスイッチがいつもの方へと切り替わりドルイド語が普通の言葉で話せるようになる。


 クーシェも向かいの椅子に座る。

「一体、昨夜何があったのですか?」


 ボンッ!!


 ポーアの顔が真っ赤になり爆発を起こした。


 そんなポーアを見て、クーシェは慌ててしまう。

「だ、大丈夫ですか?」


「・・・・・・ご心配なく、少し昨日の事を思い出しまして火照ってしまっただけです。」


(全然、少しじゃ無かった気がします)

 クーシェは心の中でツッコミをいれる。


  しばらくして

 ポーアは火照りが冷めたのか、まだ少し顔が赤いが話してくれる。


「‥‥‥‥クーシェ様は、その、‥‥‥‥と、殿方、のか、か、か、体を、見たことがありますか?」


「・・・・・・はい、あります。」


「あるんですか!?」

 凄い勢いでポーアが食い付いた。


「私は兄がいましたので、よく体を拭き合う時に。」


 クーシェは懐かしい思い出を思い出す。

 あの時はまだ、村も無事で

皆が慎ましやかに暮らしていた。


 それと同時に心の底にポッカリ穴が空いたかのような空虚感も感じてしまう。

頭を振り今の事へと頭を切り替える。


「クーシェ様は大人ですね。そこまで平然としていらっしゃるなんて。」

「?、それがどうかされたのですか?」

「実は昨日・・・・・・」


 そしてクーシェはポーアから昨日のことを聞いた。

「・・・そうだったんですか。だから、二人とも様子がおかしかったのですね。」


 クーシェはその話を聞き納得した。

そして昨日聞いた悲鳴の理由も。


「それで、・・・その、どういたしたらよろしいのでしょうか、私は。」


「そうですね。取り敢えず、ネスク様とお話するべきだと私は思います。故意ではなかったとはいえ見てしまわれたのは事実なのですから。」


「・・・・・・そうですわね。一度、話をしてみることにいたします。」


 ポーアはまだ話せる自信が無いのか、少し元気が無いのように見える。


そんなポーアの頭をクーシェは撫でて上げる。


「大丈夫です。そんなことでネスク様は怒ったりするようなお方では無いですから。きちんと話せば良いと思います。」


 ポーアにクーシェは微笑む。微笑むとポーアの表情が少し緩む。


「ありがとうございます。

貴方に話せて、少し自信が持てた気がします。ところで、前々から聞きたかったのですが、クーシェ様にとって、ネスク様はどういう存在なのでしょうか。

 想い人というには違いますし、かといって他人とは程遠く思えます。」


 ポーアの質問にクーシェはキョトンとするも少し考え込み答える。


「・・・・・・そうですね。

 ・・・・・・・・・・・・もう一人の『兄』といった存在、ですね。」


  そして二人の会話は昼下がりまで続いた。

 クーシェとポーアの女子トークは外で二人がボカボカと音を立てる中で弾んでいった。


 ****

<ミレド>


「どうじゃ、少しは頭の切り替えが出来たかのう?」

 木刀を肩でトントンさせながら、ネスクへと問う。当のネスクはというと、


「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、・・・・・・・・・ああ、」


 地面に仰向けに転がり動けないでいる。

 ミレドの容赦の無い木刀の振りを何発も撃ち込まれたため全身に疲労が溜まり重石のように体が重くなり動けない。


「容赦、はあ、はあ、無さすぎ、はあ、はあ、だろ、ミレド」

「仕方がないじゃろ。こうでもせんと今日のおぬし見るに耐えんほどぐだぐだじゃったからのう。・・・・・・ほれ、そろそろ戻るぞ。」

 ネスクに手を貸し、体を起こさせる。


「ってて、これは後で風呂に入らないと明日は筋肉痛だな。」

「風呂とはなんじゃ?一体」

「湯浴みのことだ。こっちには無いのか?」

「あまり知られて無い。妾も知らん。

ところでポーアと何かあったのか、おぬし」


「・・・・・・ああ、昨日の夜、ちょっとな。」

 ネスクは頬を掻きながらそう答える。

「ふーーむ。後でポーアと話すんじゃぞ。頭の整理は付いたじゃろ?」

 この時、修行でネスクの脳内ではきちんと整理がついていた。


「ああ」

 そして家へと戻る。


 夕方へと変わり西の空を照らす太陽が二人の影を長く、連なるようにしていた。



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