変な動きの二人
翌日、
もう昼下がりになっている頃
いつもの修行をこなしていた。
「はあっっ!!」
ミレドが木刀を振るう。
木刀を盾にして防ぐ。
ミレドは振り下ろしを防がれて体勢が崩れる。
「今だ!!」
盾にしていた木刀を持ち替えてミレドに突きを入れる。
「甘いわ!!!」
体を横に逸らして回避しその後木刀を振るう。
「!?」
避けようとする。しかし、昨日の出来事がちらつき反応が遅れる。
そして、
ミレドの攻撃が木刀を持っている手にクリーンヒット。
そのまま突きの体勢で地面に転がる。
手を離れた木刀は回転しながら離れた所に突き刺さる。仰向けに返るもミレドに木刀を喉元に突き付けられる。
「勝負アリじゃな。」
突き付けた木刀を下ろし手を差し出す。
「全く、今日はおぬしらしくないぞ、ネスクよ。朝も集中できておらぬかったじゃろう。」
ミレドの手を掴んで体を起こす。
「いつものおぬしならアソコは突きではなく凪ぎ払いじゃろ?
―――突きは確実に討てる時にするものじゃ。
動作がデカいから横に避けられると途端に部が悪くなるからのう。それに避ける動作がいつもより鈍い。
一体、どうしたんじゃ?」
「昨日、ちょっと、ね……」
苦笑しながらそう答えるしかできない。
――あんなことを他人に言える筈がない。
そんなネスクをミレドは怪しむ。
(今朝より多少マシになったんじゃが、ポーアも変じゃったな、あっちはどうなったんじゃろうか・・・)
今朝のことをミレドは思い出す。
****
<ミレド>
「はあ‥‥あぁ!、よく寝たのじゃ。」
大きく背伸びしてベッドから起きる。
(昨晩、何か聞こえた気がするが、気のせいかのう)
起きると服へと意識を集中する。
光がミレドの体を包み込む。
そして納まると、いつもの白い服へと様変わりする。ベッドの横に立て掛けた木刀を取り扉を開ける。
部屋を出ると同じ様に隣の部屋が開く。
「おお、ネスクか。おはよう!!」
出てきたネスクにミレドは元気に挨拶をするも、
「あ、ああ、おはよう。・・・・・・ミレド」
ネスクはまるで覇気のない返事を返す。
「朝から元気が無いのう、おぬしは。まあ良い、行くぞ。」
「ああ」
ネスクと一緒に一階へと下りると、ポーアが朝食の準備をしていた。
「おはよう、ポーア!」
「おはようございます。ミレド様。」
ポーアがこちらに気付き一礼して挨拶を返す。
そして、後ろから下りてきたネスクに気付く。でも、
ポーアの動きそうが固まり動かなくなる。
首を傾げて後ろを振り返る。
後ろにいたネスクも固まり動かない。
「?どうしたんじゃ?おぬしら???」
ネスクの体からギギギギと音を立てて動く。
「ナンデモナイ。オハヨウ、ポ、ポ、ポ、ポーア」
片言で壊れたロボットのような声でネスクが挨拶をする。
一方のポーアはと言うと、
「γλξρφДИЗЖЙκ、жблшпчлЮё」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
―――言語がわからない。
恐らくドルイドの独特な言語なのであろうが、言語化が出来ない言葉にミレドは絶句する。
「おはようございます!!皆様!!!」
背後から声を掛けられた。
この状況を打破するかのように振り返るとクーシェが立っていた。
太陽のような満面な笑顔を向けられ、目には背中に天使の羽が生えているように映る。
(・・・・・・天使じゃ。天使が舞い降りたのじゃ。)
クーシェの可愛らしさも相まってミレドは心の中で歓喜の涙が流れそうになる。
「どうかされたんですか?ネスク様?ポーア様?」
「ナンニモナイヨ。ソレジャア、シュギョウニイッテクル。」
「γλξρφДИЗЖЙκ、ЮжчЙлκЮЖ」
ネスクは体をギギギギと動かしながら、
外へと出て行き、ポーアは果物を切るもめちゃくちゃな速さで包丁を切り出す。
切った果物は跡形もなく粉々になっている。
「あの二人、何かあったのでしょうか?昨日の悲鳴といい」
クーシェが階段から下りて近寄ってくる。
「悲鳴?」
「はい、結構な音でしたが気づかれなかったのですか?」
「ん~、聞いたような聞かなかったような。」
首を捻りながら昨晩の事を考えるも熟睡していたためまるで覚えていない。
「まあ、ネスクのことは妾が何とかする。クーシェはポーアを頼む。」
「分かりました。ネスク様をお願いします。」
「任されたのじゃ!」