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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
1章 転生、異界『ラシル』の地にて。
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ソフリア・クレ

  脳裏にあの記憶が蘇る。断片的ではあるが、脳に焼き付いたように頭から離れないあの記憶。


―――黒く羽ばたくトカゲのような生き物


  目の前の龍と合致する。


‥‥しかし、

その記憶の時のような禍々しいオーラは無い。というか、その()だ。


  美しい光を放ちどこか暖かい感じがする。

 その光景に言葉を失った。


「なっ‥‥あ‥‥あぁ‥‥あ」


  現実離れの存在が目の前にいる。

―――美しい。


 これが見惚れているという事なのだろうか。


 こちらの様子などお構い無しにその龍は、話し掛けてくる。


「‥‥‥‥小童(こわっぱ)、おぬしの名を何と申す?」


 その声に我に返る。


「‥‥‥‥()は、―――あ、れ?」


  言葉を発しようとするも言葉が出てこない。思い出そうとするも思い出せない。声が喉で突っかえたようになり咳き込む。


「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ僕は‥‥僕は、()()?」


  覚えている筈の名前が浮かんでこない。

 その様子に白い龍はそのでかい前手で顎を掻く。


「‥‥‥‥フム、どうやら記憶を失っているようじゃな」


  徐々に高度を下げながら返答する。石碑の裏手(うらて)、自分と向かい合うように着地する。ドスンと地面がめり込む。


  人間など米粒のように捻り潰してしまう程の圧倒的巨体。そして、その体に纏う威圧感。

  体の穴という穴が萎んでいく感覚がする。

 自分の額から冷たい汗が伝ってくるのがわかる。


「まぁ、良いか……。その力を用いればすぐに分かることか……。」

 

  そういうと右手に持っている透明な鍵を見てくる。

「この鍵は、何なのでしょうか・・。」


 あまりの威圧感に敬語になってしまった。


「―――『ソフリア・クレ』」


「ソフリア・クレ?」


「全ての理を記し、鍵に認められた者にその(叡智)を与え導くための鍵。

  その力が余りにも強力なため、この鍵を使って世界の理すらも壊そうとした者がその昔はいた程じゃ。


―――権力者どもが喉から手が出る程欲しがっている代物じゃ。」


「‥‥‥‥ところでどちら様なのでしょうか。どうして、僕にそこまで教えてくれるのでしょうか?」


「‥‥‥‥。それ、今聞くのかのう?」


  龍がジト目で少し困っているようにも見える。顔は全然変わっていないようだが。


「ウォッホン。‥‥‥‥まあ、よい。

 何、古き友たちとの(ちぎ)りじゃ。あと、年寄りのお節介だと思ってくれて構わん。それに‥‥、アヤツがどんな奴を選んだのか気になっただけじゃ」


  そう語る龍の姿は、空を見上げどこか懐かしむような感じと寂しいような感じも伝ってくる。


(わらわ)の事も含めて、‥‥まずはそれを使ってみよ。初起動も兼ねておぬし自身と今知りたいことを探して来るのじゃ。何でもかんでも人に聞いていただけじゃ何も学ばん。

‥‥‥‥使い方は分かるじゃろう。」


 そう言われましても‥‥‥‥。


 脳裏に何かが入って(インプット)くる。


「‥‥‥‥これは―――。」


「分かったようじゃのう。では、叫べ!!」


  龍に向かってコクリと頷く。

  右手に持っている透明な鍵(ソフリア・クレ)の握り手の部分を摘まみ、鍵穴に刺す方を前へ突き出す。


 そして‥‥、


「‥‥‥‥【開け】」


  鍵を90度だけ回す。カチリッと何かが開くような音と共に光が漏れ出る。

 その光に包まれると、意識が飛ぶ。



  ※




  <白い龍>

  少年が光に包まれ、その光が収まると突き出していた右手が下にだらりと脱力している状態で立っている。‥‥‥‥どうやら、初起動は成功したようだ。

  目には光が無く、"魂此処(たましいここ)に有らず"と、いったような出で立ちである。


この少年を見ていると、あの二人を思い出す。


 懐かしい気配に魔力、そしてアイツと同じ黒い目。それと同時にあの日のことも思い出す。

 二人を同時に亡くした日のことを…。


「うむ、この感じ‥‥‥‥‥‥

どうやら()()()も再び動き始めたようじゃな。

まだここまで近づくまで時間はあるが‥‥。

奴に勘づかれる前までには、急がねば‥‥。」




  ※

初めて主人公とは別の目線を入れて見ました。

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