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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
1章 転生、異界『ラシル』の地にて。
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龍たちの輪舞曲『死闘』

 

 コレデ終イダ、我ガ対ナル者、ミレドグラルヨ


「この程度で何を勝った気になっておるのじゃ、キサマ。妾は頑固じゃからな、キサマの言う通りにはさせんよ。ヘヴラ!!!」


 刺された箇所からの血が止まらず、服に血が染み出てくる。


ポタリ、ポタリと地面に落ちる。


 重傷を負いながらも、億さない姿勢を保つ。


 攻撃をヘヴラへと繰り出す。


 後ろで転がっているネスクのために。

 クーシェのために、こんなところで死んでなどいられない。


  ヘヴラの間合いに入り攻撃が飛んで来る。

 ギリギリで避わして懐へと入るそして拳に自身のオーラを集中させて放つ。


「【聖弾(セイント・クーゲル)】!!!」


 溝に入りヘヴラの体が後ろへと吹っ飛ぶ。


(少しでもネスクより遠くへ‥‥‥‥)


 後方に飛んだヘヴラを追い、追撃を加える。


「【聖龍鋭爪(シャイン・ライ・クク)】はあっ!!!」


 再び【聖龍鋭爪】を発動させて斬撃を飛ばす。


 愚カナ、ミレドグラルヨ


 ヘヴラの体から霧が溢れ出る。


 霧を斬撃が切り裂くも。




―――ヘヴラの姿はそこにはなかった。






「!?」


 闇ニ呑マレテ朽チ果テヨ


 背後から声がする。


 自身の体を見る。腹に赤黒い霧を纏った槍のような物が突き刺さっている。


 それを引き抜かれ、傷から血が溢れ出す。




「うぐっ!!【聖龍双牙シャイン・ライ・ファング】」


 痛みを噛み堪えて【聖龍鋭爪シャイン・ライ・ファング】を発動する。


光が両手に集中し、二本の猛獣のような牙ができる。


 へヴラへと斬り付ける。


 しかし、全ての攻撃を避けられ逆に攻撃を食らう。


 地面に倒れ伏す。

倒れた所から血溜まりが出来る。


 朧気な視界の中、ヘヴラの姿が映る。


(‥‥どうやら、妾はここまでのようじゃな。)


 走馬灯で流れる。悲しかったこと、楽しかったこと、そしてネスクやクーシェのことなど。


 そんなことを思い浮かべていると、

自然と涙がこぼれ落ちる。


「もっと‥‥‥‥みん、なと‥‥いた、かった、のじゃ」


  ヘヴラが引き抜いた槍が剣へと形を変わる。そして振り上げる。


 デハ、去ラバダミレドグラルヨ。


スグニソチラニ


アノ人間モ送ッテヤロウ。


モットモ取リ込ンダ後ニナル故、魂ハソチラニ


行クコトハナカロウガナ。


 剣が振り下ろされる。


 ミレドは静かに目を閉じる。














「【朧月】発動・【(かす)み】」


 ヘヴラの剣が振り下ろされる。


 しかし、倒れ伏していたミレドの姿が霧となり消える。辺り一面に霧が立ち込める。


  ミレドは閉じた瞼をゆっくり開ける。


 視界に最初に目に入ったのは倒れていた筈の白髪の少年であった。


 *****


  ミレドを【霞み】を使い抱き上げて、救い出しヘヴラと今離れているが、背中合わせてでいる状態である。


 床に下ろし、ミレドの頬を伝う涙を人差し指で拭う。


「どう・・・て・・・おぬ・・・が」


 絶え絶えの声を振り絞り出す。


 止血して今直ぐに治療しないとまずいレベルである。


「傷が深い。集中するから喋らないで。」


  落ち着いた声音でミレドに伝えると、素直に聞いてくれた。そのまま治療へと移行する。


 自分の服を破いて傷口に当てる。


「細胞【再生】、【ヒール】」


【再生】を使い、まずは内臓などの細胞の回復能力を活性化させて止血する。


 そして、簡易魔法ではあるが【ヒール】を使い徐々に細胞を回復させていく。


  ミレドが戦っている間、少し気絶していたため魔力が少し戻り、まだ簡易な魔法しか使えないが、今の状況を乗り越えるだけの魔力は戻ったためにネスクは魔力を使えるのである。


 ある程度傷が回復したためミレド自身のオーラの影響で徐々に回復していく。


「ふぅ、何とかなったか。それじゃ、後は任せろ。」


  立ち上がってミレドに背を向ける。


「だ、駄目じゃ!!おぬしでは勝てん。

今のアイツは強すぎるのじゃ。

じゃから、此処から逃げよ!!」


 ミレドが止めるために体を起こそうとするもまだ流した血の分が戻っていないために起き上がれない。


 そんなミレドへネスクが言う。


「ここで逃げたら()()()を繰り返すだけだから。前は力がなかった。


でも、今は違う。


    もう逃げないし億さない。」


 その言葉にミレドは言葉を詰まらせる。

例え止めても無駄なのはミレドが一番分かっているからだ。それにネスクの目を見て気付く。


 先程のネスクとは何かが異なることを。

更に目の中の奥底に静かに燃える炎のような物を感じ取る。


 そんなネスクへと掛ける言葉はただ一つ。


「ネスク、死ぬんじゃないぞ。」


「ああ」


 ネスクは短くそう返すと霧の中にいるヘヴラへと歩み寄っていく。

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